By SCP編集部 in オーストラリア基本情報
近年の少子化による人口減少に伴い、インバウンドに着目するようになった日本の観光業。2015年には「爆買い」と呼ばれる外国人観光客の大量消費が流行語大賞になったことからも、日本全国的にインバウンドの注目度が高いことが見て取れます。
日本政府観光局JNTOによると、2017年の訪日外国人消費総額のトップ3を占めるのは、中国、台湾、韓国のアジア勢。現在、日本インバウンド市場の中心はアジア地域となっています。しかし、その情勢の中、個人消費額がすべての国の中で第2位、そして過去5年間でインバウンド数が倍増している国があります。それが、アジアに最も近い西洋文化の息づく国「オーストラリア」です。そのGDPの実質成長率は26年連続成長、世界第1位の長さを誇ります(2017年9月7日、日経新聞)。
今回は、そんなオーストラリアの経済の強さと、新規インバウンドマーケットとして最適である理由を、5つの視点から紐解いていきます。
理由① G7とオーストラリアの経済成長率の推移
(出典:http://www.imf.org/external/pubs/ft/weo/2017/02/weodata/index.aspx)
上記のグラフは、2000年から2017年までのオーストラリア及びG7(先進7カ国:アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、日本、イタリア、カナダ)の国々の前年比の経済成長率の推移を表しています。この過去17年の間、G7すべての国が、一度は前年よりも実質GDP総額が減少したことを表す『マイナス後退』が見られますが、オーストラリアは一度も見られません。
先進国が相次いで経済的な大打撃を受けたリーマンショック(2007年以降)のときに一時的に数値が落ち込んだものの、成長率がマイナスになることはなく、プラスの成長を保ち続けました。1992年から実に26年間にも及ぶプラス成長の連続記録は、世界最長を誇ると同時に現在も更新し続けています。このようなことから安定した経済大国であることがうかがえます。
理由② G7とオーストラリアの日本における1人当たりの旅行消費額の比較
(出典:http://www.mlit.go.jp/common/001217542.pdf)
上記のグラフは2017年のG7(日本を除く)とオーストラリアの1人当たりの日本での旅行消費額を示したものです。オーストラリアが最も高い数値となっています(225,866円)。
IMF(国際通貨基金)の調査によるとGDPの名目総額が、G7の国々はTOP10内にランクイン、オーストラリアは13位とG7諸国に劣るオーストラリアですが、このグラフから海外旅行における個人消費額が高いことがわかります。GDPの総額は、国民全体の所得に等しいため、オーストラリア人はG7諸国と比較して、総所得に対する海外旅行消費額が高いことが分かります。
理由③ 訪日外国人の1人当たりの消費額ランキング
ここで、すべての国で比較したトップ5を見てみます。表は日本に訪れる外国人観光客の1人当たりの消費金額上位5カ国です。
2017年 訪日外国人 1人当たりの消費金額ランキング
順位 | 国名 | 1人当たりの消費総額(円) |
1位 | 中国 | 230,382 |
2位 | オーストラリア | 225,866 |
3位 | イギリス | 215,393 |
4位 | スペイン | 212,572 |
5位 | ロシア | 199,220 |
*訪日外国人1人当たりの平均消費金額:153,921円
(出典:http://www.mlit.go.jp/common/001217542.pdf)
第1位は中国、そして第2位にオーストラリアがランクイン。オーストラリアは約22万円となっているので日本国内で消費されている平均金額の約1.5倍です。オーストラリアは訪日外国人の中でも屈指の消費力を誇る国であることが分かります。さらに、オーストラリア人の消費項目にも特徴があります。
理由④ オーストラリア人の旅行にかける消費項目(円)
順位 | 国名 | 1人当たりの消費金額 | 宿泊料金 | 飲食費 | 交通費 | 娯楽・
サービス順費 |
買物代 | その他
|
1位 | 中国 | 230,382 | 47,690 | 38,285 | 18,295 | 5,550 | 119,319 | 1,243 |
2位 | オーストラリア | 225,866 | 89,065 | 50,070 | 35,380 | 14,094 | 37,199 | 59 |
3位 | イギリス | 215,393 | 97,303 | 51,289 | 32,390 | 6,811 | 27,600 | 0 |
4位 | スペイン | 212,572 | 77,940 | 49,079 | 45,484 | 7,166 | 32,729 | 112 |
5位 | ロシア | 199,220 | 63,118 | 41,494 | 24,903 | 9,073 | 60,513 | 121 |
(出典:http://www.mlit.go.jp/common/001217542.pdf)
これは、訪日外国人の1人当たりの消費総額上位5位の項目別消費額の表です。
オーストラリアは「娯楽・サービス費」にかけるお金が一番高いことが分かります。娯楽・サービス費の項目別消費額の2位がロシアで、その金額差は5,000円以上。さらに、宿泊料金、飲食費も全体で2位の消費額となっています。これらのオーストラリア人の消費に関する際立った特色は、ホテルや旅館などの宿泊施設や、レジャー施設など観光業界の収入に直結します。
電化製品や化粧品を中心とした「爆買い」では、宿泊業界などではなかなか利益に直結しないことがしばしばあります。オーストラリア人はそれらの業界に、とってうれしい客人です。
理由⑤ オーストラリアの人口推移と物価上昇率
オーストラリアの経済力の強さは、経済成長率以外にもみることができます。具体的には、人口推移、物価の上昇に表れています。
⑴ 人口
人口の増加については、こちらのページで詳しく取り扱っています。継続的な人口増加は、国内市場で需要を生み出すこと、さらに労働力人口の増加につながり、経済発展の礎の一つになります。
⑵ 物価上昇率
下の表は、オーストラリアと日本のここ10年間における前年比の物価上昇率をまとめたものです。この期間、オーストラリアは一度も物価上昇率がマイナスになったことがありません。数値の大小に程度の差はありますが、常にインフレ傾向にあることは確かです。持続的なインフレ傾向は、所得額の増加を導き、可処分所得の増加につながります。
年 | オーストラリア(%) | 日本(%) |
2017 | 2.01 | 0.37 |
2016 | 1.28 | -0.11 |
2015 | 1.49 | 0.79 |
2014 | 2.51 | 2.76 |
2013 | 2.45 | 0.34 |
2012 | 1.71 | -0.06 |
2011 | 3.33 | -0.27 |
2010 | 2.86 | -0.72 |
2009 | 1.28 | -1.35 |
2008 | 4.35 | 1.38 |
(出典:http://www.imf.org/external/pubs/ft/weo/2017/02/weodata/index.aspx)
インバウンド新規開拓に最適の国、オーストラリア
オーストラリアの経済の強さは一時的なものではなく、日本における消費活動はとても活発です。新たにインバウンドのプロモーション活動を行う相手国として、オーストラリアは最適と言えます。さらに消費傾向から、オーストラリア人は形に残る「モノ」よりも、体験など「コト」に関する注目が高いことがわかります。
レジャー施設など、商品の主体がサービスである企業のプロモーション相手に適しており、意識的に体験型のイベントを取り入れることにより、オーストラリア人の集客を見込むことができるかもしれません。
経済力が安定しているオーストラリアでのインバウンドビジネスは、一時的なムーブメントで終わらせることなく、長期的な関係を構築できるエンゲージメントマーケットとして定着させることで、更なる可能性が広がると考えられます。
文:渡邉悠治
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