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【最新】2024年訪日オーストラリア人観光客の動向と2025年度の展望

By SCP編集部 in オーストラリアでのプロモーション, オーストラリア基本情報, ツーリズムデータ

観光庁が発表した2024年インバウンド消費動向調査の速報によると、昨年の訪日外国人の旅行消費額が8.1兆円に達したことがわかりました。これは2023年と比べると53.4%増、コロナ前の2019年と比べると69.1%増と過去最高を更新しており、海外での日本人気や円安などを背景に、インバウンド市場は右肩上がりに成長を続けています。

中でもインバウンド集客のポイントのひとつとして注目されているのが、オーストラリアです。オーストラリア人観光客は日本旅行での消費額が1人当たり40万円超と最も多く、2024年の訪日者数は約92万人にのぼります。さらに彼らは平均泊数13泊と滞在日数が長く、飲食や体験などへの出費も多いことから、地方誘客・新たな観光資源の発掘の可能性も秘めています。オーストラリアをターゲットとした施策が、インバウンド全体のさらなる活性化につながるとも言えるでしょう。

JNTO(日本政府観光局)シドニー事務所・北澤直樹所長によると、オーストラリア内での日本ブームはますます高まっており、2025年は訪日オーストラリア人が100万人に達する見込みがあるとのこと。最新の訪日オーストラリア人のデータと北澤所長への取材をもとに、人々の動向と背景、今後の誘客推進と課題について、深掘りしていきたいと思います。

オーストラリア人観光客の最新データ

訪日観光客数は前年度比50.1%増!

出典:日本政府観光局(JNTO)

2023年と2024年のグラフを比較すると、季節問わず、オーストラリア人観光客が昨年よりもかなり増えていることがわかります。その増加率は50.1%にのぼり、2023年の約61万人に対し、2024年の訪日者数は約92万人となっています。

季節別に見ると、12月・1月の冬季のほか、3月・4月の桜の季節、9月・10月の過ごしやすい初秋シーズンが多くなっています。四季や植物など、観光資源に合わせた旅行が望まれていることが顕著に表れています。また、訪日者数が多い時期がスクールホリデーと重なっているのも、家族旅行が多いオーストラリアならではの特徴です。年末年始に約1ヶ月休みになるほか、年に3回は2週間程度のホリデーが設けられているため、その時期を選んで旅行をする人々が多くなっています。

国別の年間旅行消費額は6位

 

出典:観光庁

訪日外国人旅行者の消費額を国別で比較してみると、多い順から中国、台湾、韓国、アメリカ、香港、そしてオーストラリア。昨年同様、6番目に多くなっています。金額に着目すると、2023年には約2088億円だったのに対し、2024年は68%増の約3509億円。訪日者数の増加に伴い、実に約1421億円も増加していることがわかります。

1人当たりの旅行支出は40万円超

出典:観光庁

オーストラリアは観光客1人当たりの旅行支出が他国に比べて高く、観光・レジャー目的で訪日する人だと、平均40万1298円の支出が見られます。滞在日数が長いため宿泊費・飲食費が高くなるのはもちろんのことですが、他国と比較して「娯楽等サービス費」が突出しているのが特徴です。

「オーストラリア市場においては、高付加価値消費(コト消費)がキーワードになります。例えば日本の小学校が社会科見学で訪問するような施設など、地元の方が『外国人はこんな場所には来ない』と思いがちなところも、魅力のスポットとなり得ます。オーストラリア人は狭く深く旅行したい方が多いので、取り組みの工夫・プロモーション次第で地方誘客の可能性は広がると考えています」(北澤所長)

オーストラリアからの訪日観光客数が増加した背景

オーストラリア・日本間の直行便の増加

オーストラリアから日本に向かう直行便が、週に90本以上あるのをご存知でしょうか。2025年2月現在、オーストラリアはシドニー、メルボルン、ブリスベン、パース、ケアンズの5都市から、羽田、成田、関空へ向け、各航空会社から直行便が出ています。特に多いのがシドニー・羽田便です。シドニーからは毎日、全日空・カンタス航空で1日2便、日本航空で1日1便ずつ運航しています。時差が数時間しかないため、夜行便を選べば翌朝に東京に到着するのも魅力のひとつ。訪日するオーストラリア人観光客のほとんどが、直行便を利用して日本に来ています。

さらに2025年末には、カンタス航空がシドニー-札幌間の直行便を、冬季限定で就航することが決まりました。2025年12月15日から2026年3月28日まで週に3便、スキー客をターゲットとして運行することが予定されています。冬季の北海道旅行はオーストラリア人にも非常に人気があるためニーズが高いことが予想されているほか、東京や大阪などすでに人気の観光地に行ったことがある人々のリピート需要も期待されています。

オーストラリア国内での好感度の高さと、日本食・日本文化への興味の高まり

大手旅行雑誌『コンデナスト・トラベラー』による「世界で最も魅力的な国」ランキングにおいて、米国版英国版ともに日本が2年連続1位に選出されました。アジアは言わずもがな、アメリカ・ヨーロッパ圏でも日本旅行がトレンドとなっている中、オーストラリアでも日本人気が高まっています。

「2024年におけるオーストラリアの海外旅行者数は1000万人で、前年度からあまり変化がありませんが、日本への旅行者は約48%も増加しました。日本ブーム、日本食の人気もあり、日本の存在感がより高まっている状況です」(北澤所長)

2024年の第12回アウンコンサルティング親日度調査によると、オーストラリアは日本に対して「大好き」50.5%、「好き」43.9%と、高い好感度を示しています。好きな理由については、以下のように四季の風景・自然や、日本食、歴史・文化などが挙げられています。

 

参考:2024年【世界14カ国・地域の親日度調査】日本への好感度、訪日意欲について

現にオーストラリアでは数多くの日本食レストランが展開されていますし、街やショッピングセンターを歩くとSushi Rollと書かれた看板を目にします。日本のパウダースノー「Japow」やテーマパークへの興味も強く、「行きたい場所・食べたいものが多い」という声をよく耳にします。また日本観光に対する感想をSNSに上げる人も多く、それをきっかけに、さらなる関心を集める結果となっています。

オーストラリア市場に向けて取り組みたいポイント

東京・箱根・富士山・京都・大阪などを巡るゴールデンルートの人気は2025年も継続していくでしょう。ただ、すでにゴールデンルートを回ったリピーター観光客や、より魅力的な目的地・ルートを選ぶ観光客が増えていくことは確実です。オーストラリア人観光客をターゲットとしたとき、特に好まれるものについて、2024年の動向から読み解いていきましょう。

見どころ・体験をセットにした欲張りツアー

オーストラリア人観光客は、主に日本の歴史や文化、食を求めて日本に向かいます。東京や大阪に向かう人が多いのは、一度に食文化と観光スポットを楽しむことができるというのも大きいでしょう。ですから人気の都市を上回るプランがあれば、新たな観光ルートを発掘することも難しくはないはずです。

「オーストラリア人をはじめとした観光客の方からは『スキーをした夜にスナック巡りをしたい』という声も多く聞かれます。これをツアー化し、地域の居酒屋などで日本人と一緒に盛り上がれる場を提供することで、より魅力的な体験になるのではないでしょうか」(北澤所長)

大きな部屋がある宿泊施設

滞在日数が長いオーストラリア人にとっては、宿泊施設も重要です。カード支払いやWi-Fi環境が整っていること等の基本事項のほか、アパートメントホテルのように部屋が大きいこと、洗濯乾燥機が用意されていること、近くに居酒屋やコンビニがあること等も、大きな魅力となるでしょう。

SDGsとつながる体験

サステナブル意識が高いオーストラリア人は、自分の活動が自然にとって悪影響を及ぼしていないか、持続可能なものかどうかに、注意と関心をはらっています。例えばオーガニック素材の使用、地産地消、コト消費もそのひとつ。「自分がお金を支払うことで文化が地域に継承される」という意識は彼らに、より満足感に満ちた体験を提供します。その点をアピールすることが、結果的に地域の消費活動につながっていくでしょう。

“健康志向”なアクティビティ

オーストラリア人は自然との共生を大切にすること、健康意識が高いことなどから、アウトドアアクティビティを好みます。ビーチでくつろいだり、ピクニックやハイキングを楽しんだり、バーベキューをしたりと、自然の中で週末を過ごすことが珍しくありません。それは旅行先でも同様で、自然の中でトレッキングやサイクリングで軽く体を動かしながら、同時に文化や歴史を学べるといった、自然資源と人文資源を同時に体験できるアクティビティが望まれています。

「日本では政策として、オーストラリア人に魅力的なAT(アドベンチャートラベル/アドベンチャーツーリズム)を推しているのですが、“アドベンチャー”と聞くと身構えてしまう方もいます。自然体験が身近なオーストラリア人だからこそ、英語の“アドベンチャー”と聞くと“Adventurous=冒険的”、つまり危険があるかもしれないと解釈するようです。アウトドアアクティビティを扱う場合は、サイクリングやハイキングなどといった健康志向の体験として打ち出すのが良いでしょう」(北澤所長)

スクールホリデーを意識した取り組み

オーストラリアの人々は、年4回のスクールホリデーに旅行する傾向が見られます。この期間は学校だけでなく習い事も休みになることが多いほか、働く親たちも比較的休みが取りやすいこともあり、家族旅行にはうってつけ。日本への観光客が増えることが予想されるので、この時期の家族層をターゲットにした取り組みも有効です。

スクールホリデーは州ごとに異なりますが、ほとんどが4月半ば、6~7月、9月末~10月、12月後半~2月頭の期間になります。詳しい期間については、オーストラリア政府観光局のサイトをご確認ください。

2025年の展望と課題

北澤所長によると、「2025年は必ず、オーストラリアからの訪日者数が100万人を達成する」と言われており、それを証明するかのように、1月はすでに多数の観光客が日本を訪れているようです。アジア地域以外では、これまで年間訪日者数が100万人を超えた国はアメリカのみ。今年オーストラリアが達成すると、欧米豪の中で2番目の国となるそうです。

「記念の年となるかもしれない今年は、地域の方々と協力しながら様々なプロモーションに取り組んでいければと考えています。今年も例年通り、SNSを中心に、BtoCイベントや、BtoBの相談会を組み合わせて実施する予定です。また新たな取り組みとして、民間企業が主催するBtoCイベントに参画させていただいたり、ご提案いただいた媒体を活用することも検討しています。しかし、PR不足はまだまだ大きな課題です。地方自治体の皆さんが地域ごとにまとまって、オーストラリアで積極的にプロモーション活動を行うことで、より地域の魅力を発信することができると考えておりますので、JNTOとしてももう少し予算をかけて、地方誘客を推進していければと思っています」(北澤所長)

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