By SCP編集部 in オーストラリアでのプロモーション, オーストラリア基本情報, ツーリズムデータ
訪日旅行市場が回復基調にある中、2024年の訪日オーストラリア人旅行者数は過去最高を更新し、2025年は100万人超えも現実的な数字となりつつあります。インバウンド集客のポイントのひとつとして注目されるオーストラリア市場で特筆すべきは、その旅行者の傾向です。平均滞在日数が長く地方への周遊意欲も高いことから、大都市圏に集中しがちな他市場と異なり、地域分散型の観光振興を進める上でも極めて相性が良いといえるのです。加えて、体験価値を重視する志向が強く、文化体験や自然とのふれあい、ウェルネス、食といった地域固有の魅力に高い関心を示している点も、大都市以外の地域にとっては大きな追い風となっています。こうしたオーストラリア市場の動向や訪日旅行者の特徴については、こちらの記事をぜひご覧ください。
このような背景のもと、さらに地域の魅力を的確に発信するための絶好の機会として注目を集めるのが「観光商談会」です。
訪日プロモーションの鍵を握る「B to B観光商談会」
B to B商談会現地開催の意義
B to B観光商談会とは?
観光商談会は、主に観光関連事業者同士が出会い、情報交換や新たな取引関係の構築を目指す「B to B(Business to Business:企業間取引)」型のビジネスイベントです。一般消費者向けの「B to C(Business to Consumer)」イベントと異なり、旅行会社、DMC(Destination Management Company:現地手配業者)、航空会社、宿泊施設、自治体など、観光流通に関わる専門的なプレイヤーが一堂に会するため、実質的な商談や提携に直結しやすい点が大きな特徴です。
対面の強みを最大限に活かして
近年はオンラインによるB to B商談会も増えていますが、現地開催のイベントには依然として大きな優位性があります。対面での商談は、言葉の行間や相手の反応を確かめながら関係性を築くことができ、長期的な信頼関係の構築に繋がります。また、ネットワーキングイベントやカジュアルな交流の場を通じて、偶発的な出会いから新たなビジネスチャンスが生まれることも少なくありません。さらに、現地のトレンドや消費者動向、競合他国のプロモーション事例などを肌で感じることができる点も重要です。特にオーストラリア市場は日本とは異なる商習慣や価値観を持つため、現地に足を運ぶことは市場理解を深め、的確なプロモーション戦略を立てるうえで極めて有効です。日本の自治体や観光事業者にとってこうしたB to B商談会は、地域の魅力を的確に伝え、新たな販路を切り拓くための貴重な機会となります。
海外初出展でも大丈夫?
サザンクロス・プロモーションズでは、オーストラリア市場への出展を検討されている自治体・観光事業者に向けて、現地での展示・商談を一貫して支援しています。初めての海外出展であっても、事前準備から通訳・販促物の手配、当日の運営、商談後のフォローアップまで、現地事情に精通したスタッフによる実務面を包括的したサポートが可能です。ぜひ、お気軽にご相談ください。
オーストラリアで開催されるB to B観光商談会3選
Japan Roadshow
2025年2月にシドニーで開催されたJapan Roadshowの様子
イベントのターゲットと特徴
日本政府観光局(JNTO)が主催する「Japan Roadshow」は、オーストラリアの主要都市で開催される訪日旅行商品の企画・販売促進を目的としたB to B商談会です。現地の旅行会社やツアーオペレーターを主なターゲットとしており、日本からの地方自治体、航空会社、宿泊施設、DMCなどが出展し、日本の地域資源を活かした観光商品を広く紹介しています。単なる出展機会の提供にとどまらず、自治体や観光事業者にとって実践的かつ効果的な海外プロモーションの場として高い評価を得ています。
2025年2月開催時には、大阪・関西万博の開催を控えて積極的にPRが行われました。オーストラリアからの訪日旅行者数100万人達成を目指し、規模は年々拡大しており、2025年8月開催のシドニー会場ではオーストラリア側約200名、日本側約40団体の参加が見込まれています。
イベントの詳細レポートは以前の記事をぜひご覧ください。
信頼と実績!日本語での出展申し込みも可能
JNTOが主催するイベントだけに、公的機関ならではの信頼性に加え、長年にわたる海外市場でのネットワーク構築と市場分析に基づいた戦略性がその強みとしてあります。とりわけオーストラリア市場では、JNTOシドニー事務所が現地の旅行会社、ツアーオペレーター、メディアとの連携を継続的に深めており、参加バイヤーの質と関心度の高さは大きな魅力です。また、地方観光の推進に注力しており、リピーター層に向けた新たな旅行先としての地方の魅力発信が重視されている点も、自治体にとって大きな利点と言えるでしょう。
さらに、JNTO主催イベントは日本語での申込手続きが可能なため、初めて海外出展を行う自治体や観光事業者にとっても参加のハードルが低く、実務面での負担を軽減する工夫がなされています。事前の商談マッチングや出展ガイド、販促資料作成の支援なども丁寧に行われ、準備から実施まで一貫したサポート体制が整っています。
Japan Roadshow(シドニー)
2025年8月はオーストラリア&ニュージーランドで開催
2025年8月に開催予定の「Japan Roadshow」は、オーストラリアの主要都市に加え、ニュージーランドも含む3都市で開催される予定のため、1回の出張で複数の市場・都市に効率よくアプローチできる点も大きな魅力です。限られたリソースの中で最大限の効果を狙いたい自治体にとって、JNTOのネットワークと支援体制を活用したプロモーションは極めて有効な選択肢となるでしょう。
⚫︎参考ウェブサイト:JNTO / イベントレポート
⚫︎2025年8月の開催日程
2025年8月25日:シドニー
2025年8月26日:メルボルン
2025年8月28日:オークランド(ニュージーランド)
イベント日程の詳細はこちらのリンクをご参考ください。
AIME(Asia-Pacific Incentives and Meetings Event)
イベントのターゲットと特徴
AIMEは、オーストラリアのTalk2 Media & Eventsが主催する、アジア太平洋地域最大級のMICE * 業界向け商談会です。メルボルン・コンベンション&エキシビションセンター(MCEC)を会場に開催され、世界中のイベントプランナーやインセンティブ旅行のバイヤー、企業イベントの主催者が一堂に会します。多くの国から参加する出展者と、国際的なホストバイヤーが行う1対1の商談が数多く実施される、その規模感の大きさが特徴です。実際、2025年2月に行われたAIME2025には、前年と比較して100以上多い675団体が33の国と地域から出展し、1390名のバイヤーが参加、全体で約20000件の商談が行われました。また、UFIカンファレンスやAIPCサミットなど専門性の高いイベントと併催され、MICE業界の最新動向を把握することも可能です。展示・商談のほか、ネットワーキングイベントや教育プログラムも充実しており、MICE分野に特化した包括的なイベントといえます。
* MICEとは、会議(Meeting)、報奨・研修旅行(Incentive Travel)、国際会議 (Convention)、展示会・見本市、イベント(Exhibition/Event)の頭文字から取った言葉で、これらのビジネスイベントの総称です。
【参考】日本政府観光局(JNTO)MICEの誘致・開催支援
質が高く効率的な商談と確実な効果
AIMEの最大の利点は、質の高いバイヤーとの効率的な商談機会を確保できる点です。すべての商談は事前にスケジュールが組まれており、短時間で多くのビジネスチャンスにつながるのが特徴です。加えて、イベント業界のトレンドや技術革新に関する知見も得られるため、自社の提案内容や商品力の強化にもつながります。オーストラリアやアジア太平洋市場への展開を視野に入れる企業にとっては、キープレイヤーと直接接点を持てる貴重な機会となります。また、MICE業界のキーパーソンとリアルに対話できることで、新たなネットワークや国際的なパートナーシップの構築にもつながり、長期的な成果を生むことが期待されます。
2024年開催イベントのレポートによると、JNTOが設置したブースでは41社と商談が実施され、うち12社が日本開催の具体案件を、13社が今後の開催候補地として日本を検討していたとのことです。さらに16社が、今後の需要を見据えて日本の最新情報を求めて訪れており、訪日観光の人気がMICE分野にも波及していることがうかがえます。定番の東京・京都・大阪・福岡に加え、ユニークな文化体験や地方ベニューに対するニーズも高く、地方誘客の可能性も広がっていることは確かです。
JNTOの共同出展も魅力
2026年2月のイベントでは、JNTOが日本からの共同出展者を募り「JAPANブース」としての統一的な出展を予定しています(単独出展の事例もあります)。統一ブランドのもとでの出展は、日本の存在感を高めると同時に、個々の自治体が限られた予算でも効果的に情報発信を行えるメリットがあります。効率的な商談の機会に加え、業界動向の把握やネットワーク形成の場としても、AIMEは自治体にとって非常に有意義なプラットフォームといえるでしょう。
⚫︎参考ウェブサイト:AIME
⚫︎2026年の開催日程
2026年2月9日〜11日:メルボルン
Luxperience
出典:Luxperience
イベントのターゲットと特徴
Luxperienceは、 Flight Centre Travel Groupが主催する「高付加価値旅行」に特化した国際商談会です。毎年シドニーのICCで開催されており、富裕層向けの旅行商品を取り扱う高級旅行アドバイザー、コンシェルジュサービス、ツアーオペレーターなどをターゲットとし、出展者にはラグジュアリーホテル、旅館、ウェルネス施設、プライベートツアーオペレーターなどが含まれ、世界各国から約160のプレミアムパートナーが参加します。
商談はすべて事前マッチング制で、1件15分、最低でも42件の個別商談が保証されており、効率性が非常に高いのが特徴です。さらに、ネットワーキングイベントや業界フォーラム、アワードなどの併設プログラムを通じて、ブランド価値や地方の魅力を丁寧に伝えることができる場です。
高付加価値旅行に特化!高い効率性が魅力
Luxperienceは、質の高いバイヤーと確実に商談ができる環境が整っており、出展者の多くがビジネス成約につながる機会を得ています。特に富裕層マーケットにアプローチしたい自治体や観光事業者にとって、非常に戦略的価値の高いプロモーションの機会です。丁寧に構成されたスケジュールにより、限られた時間で最大の成果が見込めるのも大きな魅力です。
JNTOが2024年に出展した際のレポートによると、日本に対する関心の高まりが顕著で、前年に比べて「日本が富裕層に最も人気がある旅行先」との声が多く寄せられたとのこと。また、初日のフォーラムやパネルディスカッションでは、富裕層旅行の最新トレンドや消費者動向に触れられ、情報収集や企画開発の参考になるはずです。ネットワーキングイベントでは、新たな関係構築やブランド認知の向上が図れる点も見逃せません。全体として、限られた日程の中で、マーケティング・商談・市場理解の三位一体の成果が期待できる、非常に密度の高いイベントといえます。
⚫︎参考ウェブサイト:Luxperience
⚫︎2025年の開催日程
2025年10月7日〜10日:シドニー
グローバル市場を見据えた観光戦略の第一歩として
B to B観光商談会は、自治体が自地域の観光資源を世界に発信し、継続的な訪問動機を創出するための有効な手段です。商談相手は販売力とネットワークを持つ海外バイヤーであるため、地域独自の体験や施設を的確に訴求できれば、単発ではなく中長期的な誘客につながる可能性が高まります。
また、対面での商談はオンラインでは得がたい信頼関係の構築に寄与し、リピーター獲得や継続的な販売促進にも波及効果をもたらします。とくに、地域資源の魅力を深く理解してもらうには、現地のバイヤーに直接訴求できるリアルな場が不可欠です。観光の多様化が進む中、自治体がこうした国際的な商談機会を活用することは、都市部から地方への送客促進だけでなく、国際市場におけるブランド確立にもつながります。
観光の未来を見据えた長期的な関係構築と情報発信の場として、より積極的な商談会への参加を検討してみてはいかがでしょうか。