JNTO(Japan National Tourism Organization/日本政府観光局)主催による訪日観光セミナー・商談会
「Japan Roadshow 2024」が、8月26日にシドニー、27日にブリスベン、29日にオークランドで開催された。コロナ禍を経てじつに5年ぶりの開催だ。
ビジット・ジャパン(VJ)事業の定例施策として、オーストラリアとニュージーランドの現地旅行会社などを対象とした訪日旅行商談会は、日本から参加するインバウンド関係者(地方自治体、航空会社、宿泊施設、
DMC等)と現地旅行会社(リテーラー、ツアーオペレーター)が商談を行い、訪日旅行商品の企画や新規販売につなげることを目的としている。
今回の商談会には、シドニー会場に41団体125名、ブリスベン会場に41団体101名が参加し、新たなネットワーキングの構築を含めた密な商談会が開かれた他、空手の演舞や抽選会などの催しも実施された。
JNTOによると、2024年1月から7月までの訪日オーストラリア人旅行者数は51万600人と過去最高を記録した。オーストラリア人旅行者は、他のどの国よりも日本に長く滞在する傾向があり、滞在期間では世界第1位である。
およそ85万人の訪日オーストラリア人旅行者数を年末までの目標に掲げ、その実現のために今後ますますのインバウンド誘客が必要となる。今後の展望としては、2025年に日本で開催される一大イベントのひとつに大阪・関西万博があり、約160カ国が会場に集まり、約8,000のイベントが開催される予定だ。会期中の7カ月間で、2,820万人に上る来場者が見込まれている。
宿泊施設や旅行企業など観光業界にとって厳しいコロナ禍を経て、オーストラリア市場におけるインバウンドの状況は一体どのように変化したのか。JNTOシドニー事務所北澤直樹所長に話を伺った。
「オーストラリアの海外旅行者数の全体は、2019年と比較しても変わっていませんが、訪日旅行者数が増えています。2019年に比べて41%の増加しており、訪日ブームの影響によるものだと考えられます。
また、豪ドルが米ドルに対して弱い今、オーストラリア人がアメリカ旅行を避ける一方で、円安が続く日本旅行の人気が高まっています。現在、日本はオーストラリア全体で5番目の人気渡航先。ニュージーランド、インドネシア、米国、英国に次いでのランクインです。このままいけば、2024年の訪日オーストラリア人数は90万人に達するのではないかと期待しています」
インバウンド人気の高まりで、さまざまな観光地やコンテンツが注目を集めているが、では、どのようなコンテンツやアクティビティがオーストラリア人に響くのか。北澤所長によると、JNTOでは現在オーストラリア人旅行者が求める“付加価値”を意識した発信を進めていると言う。
「彼らは日本での体験に対して非常に高い期待を持っており、特に和食や手工芸品をはじめとした伝統文化や地元ならではの体験が求められています。インスタグラムやフェイスブックで反応が多いのも「お城+海」といった自然の美しさと日本独特の景観を掛け合わせたもの。このようにコンテンツを掛け合わせることで、さらに多くのオーストラリア人に響く魅力的な旅行先となれるのではと考えています。
現在オーストラリアにおける訪日インバウンド需要は非常に好調で、今年の訪日オーストラリア人数は90万人に達する可能性もある。ただ、オーストラリア人を惹きつける上での日本の課題は少なくない。
「今日本は円安で多くのオーストラリア人が訪れていますが、将来的に円高に戻った際にも彼らにとって魅力的な発信が必要です。また、中国がインバウンドを受け入れ始めると、日本へのフライトが減少する可能性も。そういった要因を踏まえ、引き続き日本のプロモーションを実施していくことと、加えて日本の伝統文化や体験、特に食文化の魅力をしっかりと伝えていくことが重要です。
最後に、もう一つの課題として、日本の旅行会社の多くがアメリカ市場を優先するあまりオーストラリア市場を軽視してしまう傾向があります。この点も今後改善が必要でしょう。オーバーツーリズムの問題も含めて、国内での課題をクリアにしていかなければなりません。
私たちの戦略は、オーストラリア人旅行者に対して地方誘客と高付加価値の体験を提供すること。彼らが興味を持つ日本の体験や景色を訴求していきたい。また、自治体や日本の旅行会社のアンケートによると、長期滞在で旅行支出額も高いオーストラリア市場への関心は高まっています。引き続き、皆さまのご協力をいただきながら、日本の魅力を発信していきたいと考えています」
強固な日豪関係を背景に、旅行を通じた人的交流は常に重要視されてきた。日本は国土面積の点では、オーストラリアと比較すると小さな国ではあるが、それぞれの地域に独自の文化、食事、景色、アクティビティなど数えきれないほど多様な特長がある。オーストラリアから日本への訪問者数は過去最高水準で増加しているもの、さらに多くのオーストラリア人が日本を訪れ、思い出に残る日本体験を通して日本への関心と理解を深めて帰国できるような旅行体験を提供するため、今回のイベントは各々の見識を共有し、地元の魅力を発信する貴重な場となったに違いない。
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