関西観光本部、大阪観光局を中心に周辺自治体、空港や鉄道各社が連携し、関西の魅力の訴求を目的とする旅行セミナー「Japan Kansai Tourism Seminar 2025」が、8月25日(月)にシドニー市内にて開催された。大阪、京都、奈良、神戸を含む関西圏の観光資源をオーストラリア市場に向けて紹介し、関西全域へのオーストラリア客の誘致や域内最新情報を観光関連の業界関係者へ届けることを目的としたもので、2019年を最後にコロナ禍を経てじつに6年ぶりの開催となる。今回のセミナーには、日本殺陣道協会、JR西日本、奈良県、関西観光本部が出展し、当地の旅行関係者やメディア約30名が参加した。
関西観光本部は、関西の広域観光のビジョンを示す「関西ツーリズムグランドデザイン2025」を策定しており、関西2府8県の行政・地域・民間・学識の協力を得て、広域観光圏”KANSAI”の実現に向けて、「ONE関西」の考え方で目指す姿の実現に向けて取り組んでいる。今回のセミナーでは、関西観光本部より、関西旅行の魅力を発信するYouTube動画が上映され、日本屈指の広域観光圏”KANSAI”をオーストラリアに発信した。関西は、日本の原点につながる歴史・伝統・文化、これらと溶け合った自然に加え、暮らしやすい生活文化と親しみやすい気質の人々の特徴などが重なり合って奥深い魅力を形成している。そうした魅力をわかりやすく発信することにより、認知度を高め、訪関西機運醸成を図っていくことが肝要だろう。
また、観光地づくりを進める地域をストーリーでつなぐ広域観光ルートづくりも推進しており、拠点地域である大阪・京都などをゲートウェイ都市として、広域観光ルートと拠点地域を効果的につなぐことにより、関西一円に海外旅行者が訪れるルートの実現を目指す。
JR西日本によるプレゼンテーションでは、そうした「地域を磨く・つなぐ」試みも示された。
また、奈良県、やまとびとツアーズによるプレゼンテーションでは、関西の多彩で豊富な観光資源をもとにテーマツーリズムのラインアップを強化し、歴史・伝統・文化の宝庫である関西の強みを最大限活かした「文化観光」や「食」のツーリズム、今日の観光トレンドである「体験型ツーリズム」など、関西ならではの付加価値の高いツーリズムの数々が紹介された。
プレゼンテーション後には、特別プログラムとして日本殺陣道協会によるパフォーマンスも披露され、参加者も交えて刀の使い方や立ち回りを指導。実際の内容を一部体験することができ、参加者が見守る中、臨場感あふれるパフォーマンスが繰り広げられた。
セミナー後に開催されたネットワーキングと商談会も盛況となり、出展者と来場者の間で活発な交流が繰り広げられた。
(左)関西観光本部プロモーション部 中村一郎氏 (右)関西観光本部総合企画室長 大平竜士氏
最後に、関西観光本部総合企画室長の大平竜士氏に話を伺った。関西観光本部は、関西2府8県(福井県、三重県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県、鳥取県、徳島県)を対象エリアとした関西唯一の「広域連携DMO」で、関西の自治体、経済団体、観光振興団体、観光関連を中心とした民間事業者等が参画し、府県や官民の枠にとらわれない組織。それまで日本国内では各県の都市が独自に活動していることが一般的だったが、地域とつながり旅行の新たな形を作ろうという考えに至り、それぞれが資金を出し合い、協議会を設立して共同で取り組むことを決めた。2023年から2025年の3年間の計画で進められてきた取り組みで、その自由度と広域性を発揮しながら、関西広域でのインバウンドをはじめとする観光振興に取り組んでいる。
「オーストラリア人観光客は、初めてまたは2回目の訪日客が多い一方、アジアからの観光客は8割以上が3回目以上の訪日。こうしたリピーターの方々は大阪や京都の定番観光地ではなく、各自の趣味や個別の体験を求める傾向にあり、地域ごとの文化体験や個々の楽しみを実現できるような日本旅行が求められるようになると思います。そのため、関西の多角的な魅力を打ち出したいと考えております」
関西といえば、「Expo2025 大阪・関西万博」が今年4月13日に開幕した。日本では2005年の愛・地球博以来20年ぶり、大阪府では1970年の大阪万博から 55年ぶりの開催となる。日本国際博覧会協会は、国内外からの来場者数は2,820万人を見込んでおり、万博関連事業と来場者消費による経済効果が期待されている。
「前評判で芳しくない部分もあった万博ですが、開幕後は多くの方が来場されており、関西全体で喜ばれている、満足されている状況だと思います。どうしても大阪と京都に関西の客が集中する現状がありますので、それをいかに広域に広げていくかが、現在の最も重要な課題。関西業界全体においても同様で、東京や大阪に集中している現状をいかにして拡大するかが焦点です。この取り組みに対して、私たちは一丸となって進めているところです」
万博開催前半を終えるにあたり、APIRと関西観光本部が共同で実施したアンケート調査結果によれば、万博開催期間前半に訪れた累計外国人来場者数は263万4,013人で、同期間の訪日外客全体に占める比率をみると、18.3%である。前半の発生需要は順調に出てきており、関西経済全体の消費が比較的停滞する中で、その大きな寄与が目立つ。全国的に注目が高まっている万博会場の情報と、関西各府県の観光情報などを一元化することで、後半も万博を起点とした関西周遊観光の促進も狙いたいところだ。