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オーストラリアと台湾の訪日データ比較

By SCP編集部 in ツーリズムデータ |

近年、オーストラリアからの訪日旅行者は増加し続けており、訪日事業のターゲットとして注目されています。日本政府観光局によると、訪日オーストラリア観光客は前年比+11.2%、さらに娯楽サービスや宿泊費などで高い支出が見られ、一人あたりの旅行支出も前年同期比+24.4%と、他の国や地域以上の伸び率です。

一方台湾は、2017年の訪日外国人消費動向調査の分析において、国・地域別にみる訪日外国人旅行消費額が中国に続き2位。またリピーター率も25%と、最多である韓国の30%に次ぐ割合を占めています。

参照元:http://www.mlit.go.jp/common/001245491.pdf
http://www.mlit.go.jp/kankocho/news02_000346.html
https://www.travelvoice.jp/20180403-108446

オーストラリア人も台湾人も、訪日事業の有力な対象として挙げられますが、国や地域によって訪日旅行の目的や興味が異なります。そのため誘致のためのターゲットの設定やプロモーションの方法なども、それぞれの消費者志向へ合わせれば、より効率的でしょう。

今回は訪日オーストラリア人と訪日台湾人の旅行時のデータを基に、それぞれの消費者行動を探っていきます。

 

訪日オーストラリア人と訪日台湾人の旅行者数

推移の比較

訪日外国人が増加していると言われて久しいですが、それぞれの国や地域からどのくらいの人数が増えているのかを把握することは、今後の訪日事業の方向性を考えていく上で大切な要素になります。領土の面積も人口も異なるオーストラリアと台湾ですが、ここではそれぞれの訪日旅行者の推移を見ていきます。

オーストラリアの2017年の総人口は約2,460万人。台湾は2018年3月の時点で約2,357万人とオーストラリアより100万人ほど人口は少ないですが、訪日旅行者は圧倒的に台湾の方が優っています。共通して言えるのは、両方の国・地域とも2012年から増加傾向にあることです。

参照元:https://www.jnto.go.jp/jpn/statistics/tourists_2017df.pdf

月別の比較

続いて訪日オーストラリア人と訪日台湾人の月別の推移を見て行きます。

オーストラリアと台湾とでは祝日などの年間スケジュールなどが異なり、季節が逆であることから、日本へ訪れるタイミングも異なります。

オーストラリア人の場合は、オーストラリアが夏季にあたる12月と1月に訪日客が多い傾向にあります。一年で最も長期の休暇がとれるサマーホリデーシーズンです。豪州や欧米と比較して、お手頃価格で期待を上回る満足度が得られる日本のスキーはいいね!という口コミが広がり、この時期はスキー・スノボ目的の訪問者が多いことが分かります。

その後は9月、4月の順に訪日旅行者は続きます。9月はオーストラリアのスクールホリデーにあたることが要因と考えられます。スクールホリデーは州によって異なりますが、9月から10月頃にかけて2週間の春休みがあるからです。また、2017年はイースター休暇の移行により(※3月27日から4月16日)がオーストラリア市場にも影響し、2016年の3月と4月が逆転する形となっています。

一方、台湾人の場合、大型連休の清明節がある4月から7月の間に高くなり、学校の始まる9月に1度落ち込みますが、中華民国の建国記念日の「国慶日」である10月にまた増える傾向があるようです。

参照元:https://www.jnto.go.jp/jpn/statistics/since2003_tourists.pdf
http://adop.today/report136/
https://publicholidays.tw/zh/2018-dates/

年齢、性別の比較

平成29年観光庁「訪日外国人消費動向調査」によると、訪日オーストラリア人と台湾人とでは、訪れる年代や性別が異なります。それぞれの特性を知ることで、訪日外国人向けの商材へ反映することができるかもしれません。

訪日オーストラリア人の場合、20代が最も多い傾向にあり、次に60代が続きます。一方訪日台湾人の場合では、30代の割合が一番高く、20代、40代の順で高い傾向にあります。

さらに男女比では、訪日オーストラリア人の60%以上が男性であるのに対し、訪日台湾人は55.3%が女性という割合でした。

訪日旅行の増加理由

では、訪日オーストラリア人、並びに訪日台湾人はどのようなことが理由で増えつづけているのでしょうか。

観光局の2018年1月の発表では、訪日オーストラリア人の場合、2016年カンタス航空が大阪(関空)シドニー線、成田メルボルン線を直行便として就航し、日本とオーストラリアのアクセスが向上したことが増加の理由とのことです。さらに訪日旅行のプロモーションも動機のひとつです。

その具体的な例としては、旅行博への出展や五輪金メダリストを起用した訪日PR動画や屋外広告のプロモーションなどが挙げられます。また、2018年1月のオーストラリアABCニュースサイトでは、日本のデフレによるオーストラリアと日本の物価の関係も、その要因とされています。
参照元:http://www.abc.net.au/news/2018-01-16/australia-and-japan-reverse-tourism-relationship/9332518
https://www.jnto.go.jp/jpn/news/press_releases/pdf/180815_monthly.pdf

訪日台湾人の増加については、2017年の観光局の分析では、3つの理由が挙げられています。

1つは各地にクルーズ船やチャーター便の就航や増便がされたことです。また継続的な訪日旅行PR動画制作や連動したイベント、さらに台湾中南部でも旅行博や一般消費者向けのイベントが開催されたことなどが挙げられています。
参照元:https://www.jnto.go.jp/jpn/statistics/data_info_listing/pdf/180116_monthly.pdf

 

訪日オーストラリア人と訪日台湾人の消費額

消費金額

観光局の調査によると、訪日回数の増加とともに、1人あたりの旅行支出が増加する傾向があると分析されています。しかし民族性や習慣によって日本に興味関心のあること、予算感、滞在期間に対してそれぞれ違いが生じてきます。では実際に訪日オーストラリア人と訪日台湾人とで、支出はどのように異なるのでしょうか。

全体消費

まず訪日旅行の国別での消費金額を見ていきます。

2018年4〜6月の観光庁による発表によると、台湾は中国に次いで2位の1,502億円であり、訪日外国人旅行消費額の13.4%。オーストラリアは7位で343億円。全体の3.1%を占めています。


参照元:http://www.mlit.go.jp/common/001245491.pdf

個人消費

一方で、国・地域別でみた訪日外国人1人あたりの旅行支出額では、オーストラリア人は264,327円と前年比+24.4%、一方台湾人は前年比から-4.0%の117,474円でした。国全体でみた場合には台湾人の方が支出の高いことは明らかですが、1人あたりの支出では消費額は逆転し、オーストラリア人の方が上回っています。

このように1人あたりの旅行消費額の高いオーストラリア人と、旅行客数の多い台湾人ですが支出費目の内容にも違いがあります。

買い物の消費額が多い台湾人と比べて、オーストラリア人は宿泊や娯楽サービスの消費額が多いことが下記のグラフから分かります。

参照元:http://www.mlit.go.jp/common/001245491.pdf

滞在期間

では、日本から遠く宿泊費用にお金をかけるオーストラリア人と、日本から近い台湾人とでは、宿泊期間にどのくらいの差があるのでしょうか。

2017年に発表されたものでは、オーストラリア人の平均宿泊数は観光レジャー目的の場合12.8日間、また7日間から14日間以上の滞在が約90%であるのに対し、台湾人の場合は平均5.1日。4日間から6日間が74%という割合を占めています。
参照元:http://www.mlit.go.jp/common/001245491.pdf

 

 

訪日オーストラリア人と訪日台湾人の消費動向

情報収集源

オーストラリア人や台湾人が海外へ旅行する際には、事前に情報を取り入れて、旅行の計画を立て、旅行中にも滞在先について調べます。その情報元を的確に捉えることで、今後のプロモーション活動につながります。ここでは訪日オーストラリア人、訪日台湾人の旅行に際しての情報収集源をご紹介します。

観光庁による2017年の訪日外国人の消費動向によると、訪日オーストラリア人と台湾人の国・地域別の情報源は下記の表のようになりました。

オーストラリア人の場合は、口コミサイト、親族や友人などから情報を取り入れる傾向にあるようです。

訪日 旅行前 訪日 旅行中
情報源 回答率 情報源 回答率
口コミサイト 38.4% インターネット(スマホ) 73.6%
自国の親族・知人 36.6% 観光案内所(空港除く) 33.6%
宿泊施設HP 29.9% インターネット(PC) 29.5%
日本在住の親族・知人 27.5% 宿泊施設 27.6%
個人のブログ 20.8% 日本在住の親族・知人 25.6%
旅行ガイドブック 19.6% 空港の観光案内所 20.2%
日本政府観光HP 17.0% インターネット(タブレット) 17.7%
動画サイト(YouTube) 16.5% 旅行ガイドブック(有料) 15.5%

さらに同年のじゃらんリサーチによる訪日旅行者に対する調査では、訪日オーストラリア人は、航空会社や宿泊施設のホームページが、他のインターネットサイトよりも割合が高いことがわかりました。到着後の情報源は、宿泊施設のスタッフやコンシェルジュ、空港や街での案内所の割合が比較的高いようです。
参照元:https://www.recruit-lifestyle.co.jp/news/pressrelease/travel/nw22540_20170120

 

台湾人の場合では、オーストラリア人の場合ではあげられなかったSNSやテレビ番組なども、情報源として多く利用されています。

訪日 旅行前 訪日旅行中
情報源 回答率 情報源 回答率
個人ブログ 36.8% インターネット(スマホ) 70.2%
日本政府観光局HP 23.8% インターネット(PC) 19.0%
旅行会社HP 23.1% 空港の観光案内所 17.2%
旅行専門誌 18.7% 宿泊施設 17.1%
SNS(FB/Twitter等) 17.7% 観光案内所(空港除く) 15.7%
テレビ番組 17.2% フリーペーパー(無料) 15.6%
宿泊施設HP 15.6% インターネット(タブレット) 8.4%
自国の親族・知人 14.4% 日本在住の親族・知人 6.9%

参照元:http://www.mlit.go.jp/common/001230776.pdf

日本インバウンド・メディア・コンソーシアム(JIMC)の台北国際旅行博で行ったアンケート調査では、訪日旅行の旅行先を決める際に参考にする情報源として、20%が旅行サイト、旅行ガイドブックも同じ割合を占め、17%が個人ブログと回答していました。

空港や観光案内所、ホテルなどにある旅行フリーペーパーを旅行中の情報源として利用していた人は73%でした。
参照元:http://www.jimc.gr.jp/wp-content/uploads/2018/02/【JIMCセミナー201802プレゼン資料】JIMC弓削氏.pdf

リピーター

訪日外国人向けへの商品やサービスの販売促進を検討するにあたり、日本へ訪れたことのない観光客の誘致やリピーターの育成など、様々な目的があると思います。訪日回数が増えると、地方を訪れる割合も高くなるほか、ひとり旅の割合が高くなる傾向にあります。
参照元:http://www.mlit.go.jp/common/001226295.pdf

ここでは、訪日オーストラリア人と訪日台湾人のリピーター動向について探っていきます。平成29年における訪日外国人の消費動向によると、それぞれの国と地域では以下のグラフのようになりました。

訪日オーストラリア人の場合、初めて訪れた人が半数以上であるのに対し、訪日台湾人は2回以上のリピーターが8割を占めています。
参照元:http://www.mlit.go.jp/common/001230776.pdf

 

まだリピーター率の高くないオーストラリア人ではありますが、日本政策投資銀行と日本交通公社が行なった、アジア・欧米豪訪日外国人旅行者の意向調査によると、オーストラリア人は日本以外の旅行先を比較的検討せずに日本へ訪れているようです。訪日旅行のきっかけとしてオーストラリア人は「家族や友人などの勧め」と答えた割合が、他のアジア全体と欧米豪州の回答者の中で高く占めていました。

また首都圏・都心部から離れた地域(以下、地方観光地)への訪問意向として、オーストラリア人は「以前に地方観光地へ旅行したことがあり、今後もぜひ旅行したい」という割合が前回調査と比較して上昇しています。
参照元:https://www.dbj.jp/ja/topics/region/industry/files/0000028801_file2.pdf

台湾人の場合は、Visaが行った過去3年以内に海外旅行へ行った台湾人を対象とした調査で、一年以内に最も行きたい旅行先として日本が76%と、韓国の26.3%を大きく離して1位。3年以内に行った旅行先としても日本が78%とトップでした。
参照元:https://www.visa.com.tw/about-visa/newsroom/press-releases/nr-tw-170425.html

 

訪日オーストラリア人と訪日台湾人を比較して見えること

今回ご紹介したように、訪日外国人の旅行者として国・地域別に比較すると、訪日旅行者数や国・地域別での全体消費に関しては、台湾の方が割合は高いことが見て取れます。

ただ、一回あたりの支出額が高く、訪日観光客も増加しているオーストラリア人へ向けた商品やサービスの施策も、今後の訪日事業において有効であることも伺えます。

オーストラリア人と台湾人とでは、それぞれ訪日する時期や年齢層や性別、旅行目的などが違うため、商材を検討したり、ターゲットを絞ったりする際に留意したい点です。

旅行のプランを立てるための情報源が、オーストラリア人と台湾人とでは異なるため、プロモーションの立案などについてはターゲットの特性に合わせるのが良いでしょう。

ターゲットを絞ったオーストラリア人へのプロモーション、各メディアや誘致に関する必要な案内に関しまして、お気軽にお問い合わせ下さい。

この記事を書いた人:宮川美潮
東京都出身。情報通信系商社にて営業職を務めていた際に、マーケティングに興味を抱いたこと、また大学時代に学んでいた中国語よりも英語の必要性を強く感じ来豪。現在シドニーのTAFE(職業訓練校)にてマーケティングコースを受講中。

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