By SCP編集部 in オーストラリアでのプロモーション, オーストラリア基本情報, ツーリズムデータ
「次の旅、どこに行きたい?」
この問いに答えるのは、もはや大人だけではありません。2024年にHiltonが発表したアジア太平洋地域の旅行動向レポートによると、オーストラリアの家庭の約71%で、Gen Alpha(2010年代以降生まれ)やZ世代の子どもたちが家族旅行先の意思決定に影響を与えていることがわかりました。そしてNine.com.auの記事では、日本は世代を問わず「行きたい国ランキング」の上位に入り、特にファミリー層からの注目が高まっていると報じられています。
こうした背景には、単なる「観光」から、“家族全員でともに過ごし、ともに体験する”旅への価値観のシフトがあります。特にオーストラリアでは、教育的・文化的な意味合いを持つ旅行先が好まれ、子どもにとって“学びのある体験”を、親や祖父母も一緒に楽しむスタイルが広がっています。
この変化は訪日市場にも確実に波及しています。2024年、オーストラリアからの訪日客数は過去最高の92万人を記録(2019年比+50%以上)し、2025年には100万人突破が見込まれます。なかでも家族旅行は、長期滞在・高い消費傾向、そして豊かな体験意欲をあわせ持つ、とても魅力的な存在です。地域の魅力を知ってもらい、活かしていく上でも、今注目したい層のひとつと言えるでしょう。
この“共創型家族旅行”という新たな潮流をふまえ、最新調査や実際の成功事例から、訪日プロモーションの可能性を読み解きます。
目次
オーストラリアの家族旅行、変化する意思決定構造
子どもがリードする旅先選び
オーストラリアの家族旅行では、行き先を決める力が子どもへと移りつつあります。AccomNewsの調査によれば、親の約62%が「子どもの興味や関心」を行き先決定の重要な要素としており、家庭内の旅行計画は“大人が決めるもの”から“子どもがリードするもの”へと変わっています。
こうした変化は、旅行のスタイルにも表れています。かつては観光名所を巡るだけの旅が主流でしたが、今では役割分担しながら楽しむ“共体験型”が人気です。たとえば、雪国で子どもはソリ遊び、親はスキーを楽しみ、夜は一緒に郷土料理を作る、といった内容です。SNSでのシェアや口コミによって、このような旅のスタイルはさらに広がっています。
また、オーストラリア特有の長いスクールホリデーは、日本の季節イベントと相性が良く、桜や雪といった期間限定の自然体験を家族で満喫できる絶好の機会となっています。こうした時期の訪日家族旅行は、特に地方滞在型の人気を押し上げています。
変化を生む背景と理由
この背景には、親世代の価値観の変化があります。ミレニアル世代を中心とする親は、子どもに“経験から学ぶ旅”を提供したいという意識が高く、学校教育でも体験学習が重視されるオーストラリアでは、旅行もまた教育の延長線上として捉えられやすい傾向があります。
加えて、SNSや動画プラットフォームの普及も大きな要因です。YouTubeやInstagram、TikTokなどで旅行先の映像や体験談に触れる機会が増え、子ども自身が「行きたい場所リスト」を作って親に提案するケースが増加しているといいます。家族全員が同じ映像を見て計画を立てることで、子どもの意見がより反映されやすくなっているようです。
こうした背景のもと、日本はその安全性・清潔さ・多様な文化体験の豊かさから、「家族向けにとても安心して楽しめる国」としてオーストラリアの旅行メディアでも高く評価されています。加えて、JNTOの市場分析によるとオーストラリアの家族旅行者は平均13泊と滞在日数が長く、1人あたりの消費額も約40万円と高い傾向にあります。滞在中の消費額が多く、地域内での経済波及効果も大きいため、収益性の高い魅力的な旅行者層と言えるでしょう。
“家族で共創する旅”に、日本が選ばれる理由
日本が家族旅行先として選ばれる背景には、都市型から地方型まで幅広い体験のバリエーションがあります。ミレニアル世代とその子ども世代の双方にとって、日本は「行きたい国ランキング」で常に上位に位置しており、安心・安全な環境に加えて、多彩なエンターテインメントや文化体験を提供できる点が評価されています。
都市部では、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)、東京ディズニーリゾート、ジブリパークといったレジャー施設が高い人気を誇ります。これらの施設は単なる遊び場ではなく、家族全員で楽しめるショーや季節限定イベント、充実した子連れ対応施設を備えています。SNSや口コミサイトには、訪問者が体験した親子のエピソードや便利な利用法が数多く投稿され、次の来訪意欲を高める情報源となっています。
地方でも、家族で“共創”できる体験が各地に広がっています。手打ちそばや寿司づくりといった料理体験、雪国でのソリ遊びやスキー、農作業や漁業体験、さらには地域の伝統行事への参加など、子どもが夢中になれる体験は、親や祖父母の満足度向上にも直結します。「学び」「文化理解」「自然とのふれあい」がバランスよく得られることが、日本のファミリー向け観光の大きな強みです。
さらに、オーストラリア市場への訴求で注目される最新の事例として、今年度シドニーで展開された「Win a Trip to Japan キャンペーン」があります。このキャンペーンは、全日空(ANA)と多言語対応旅行アプリ「Travel Contents」が、シドニーの人気日本食レストラン やよい軒(8月)・一風堂(9月)・Sushi Train(10月) と連携して実施されています。来店したお客様は、卓上のQRコードをスキャンしてANAのeニュースレターに登録するだけで応募が完了。各飲食店ごとに抽選で1組にシドニー〜東京往復航空券(2名分)が当たるほか、「Have Fun in Japan 2-Weeks Free Pass」や「Have Fun in Kansai 1-Week Free Pass」、USJの1日パスなど、多彩な賞品も用意されています。この仕組みは、「食事体験」と「旅行体験」をスムーズにつなぎ、現地生活者に自然に日本への関心を持たせる点で非常にユニークです。また、Travel Contentsは、英語・簡体字・繁体字・韓国語に対応したアプリを通じて、USJや関西観光局、JR西日本などと提携し、交通・観光・安全情報をワンストップで提供。多言語対応と現地接点を組み合わせたこの取り組みは、オーストラリアのファミリー層にもリーチしやすく、訪日プロモーションの新たな成功モデルとして注目されています。
ファミリー層を惹きつけるための6つの実践ポイント
1. 年齢別対応&キッズフレンドリー導線(安心・快適な滞在環境の提供)
家族旅行では、子どもの年齢によって必要な施設やサポートが異なります。授乳室、ベビーカー貸出、子ども用トイレ、混雑回避ルートなどを整備することで、滞在満足度が向上します。USJでは“子連れ利用案内マップ”を導入し、年齢別に適したアトラクションや施設をわかりやすく案内しています。実際に訪れた子連れ客からも「事前に情報を把握できて安心だった」という声が寄せられており、特に海外から訪れる家族にとって大きな安心材料となっています。
2. “共創できる”体験デザイン(役割分担・成功体験構築)
「一緒に作る・体験する」ことは、親子の一体感や思い出の質を高めます。たとえば地方のそば打ち体験で「子は粉をこね、親は伸ばす」といった役割を設定することで、達成感が共有されます。体験後に写真や証明書を提供すれば、SNS投稿や口コミにもつながりやすく、次の集客へと循環します。
3. 子どもが「シェアしたくなる」演出(映える+体験フォーカス)
今や子どもたちにとって、旅の一瞬を写真や動画に収めてSNSで共有すること自体が体験の一部になっています。そうした“映える”演出は来訪意欲を高める大きな要素です。USJやジブリパークでは、キャラクターフォトスポットやコスプレ体験が人気で、家族の体験価値を高めています。北海道・ニセコにも「ラッキーベル」や羊蹄山を背景にした絶景など、家族向けのフォトスポットが多数あり、観光行動調査でもこうした視覚的魅力は旅行先選びの重要な要素とされています。特にファミリー層では、子どもが楽しむ姿を撮影できる場所が来訪動機や満足度に直結します。その結果、ニセコでは4つの主要スキーリゾートにおいて、2024–25年冬シーズンに過去最多の1130万回を超えるリフト・ゴンドラ利用が記録され、その多くがインバウンド客、特にオーストラリア人による利用だったと、UchiJapanの報道で報告されています。こうした「シェアしたくなる体験」がSNSで広がることは、訪問者増加に大きく寄与していると考えられます。
4. 言葉と文化のバリアフリー化(親子双方の理解促進)
文化体験や地域特有のルールを伝える際、英語だけでなく、子どもにも伝わりやすい「やさしい日本語」「イラスト」「漫画」を組み合わせることが重要です。例えば岐阜市では、案内標識に日本語・英語・中国語・韓国語・タガログ語に加え、「やさしい日本語」も併記する取り組みが進められており、親子ともに理解しやすく、訪問体験の質を高めています。また観光庁は、歩きながら食べない・迷惑行為を避けるなどの観光マナーを伝えるため、誰でも理解しやすいピクトグラム案内を2024年末に公開しています。
5. 親世代・祖父母世代への配慮(バリアフリー・選べる食事・静寂性)
三世代旅行では、世代ごとの体力差や嗜好の違いに対応できる宿泊・食事・移動手段が求められます。日本国内の主要都市に展開するアパートメントホテル「MIMARU」では、三世代でも宿泊可能な広々とした客室を強みとしています。また、2025年に 東京・京都・大阪向けに、「バリアフリー旅行ガイド」を英語で無料公開しました。内容は、ベビーカーや車椅子に対応した交通機関、施設情報、アクセス方法、MIMARU施設の特徴などを、見やすいビジュアル付きでまとめたものです。これは外国人旅行者や多世代家族に配慮した情報提供として注目されています。
6. 海外への発信(ターゲット市場への認知拡大)
どれだけ優れた体験や施設があっても、認知されなければ来訪にはつながりません。オーストラリア市場に特化した情報発信は、集客効果を大きく左右します。同じくアパートメントホテル「MIMARU」は、オーストラリア市場を意識したPRを展開し、現地メディアや旅行サイトを通じたキャンペーンにより、長期滞在需要を獲得に成功しています。
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「旅の質」は“共感”で決まる:リアルな声の力
旅行者の意思決定においては、「誰が発信しているか」が情報の信頼度を大きく左右します。Hiltonの2025年アジア太平洋地域トレンドレポートによると、若い世代(Gen Alpha / Z)では、洗練されたインフルエンサー投稿よりも、実在の家族によるリアルな体験投稿を信頼する傾向があるとされています。家族目線の情報は、体験の詳細や課題まで含めて共有されることが多く、「自分たちの旅行に置き換えてイメージしやすい」という点が支持される理由です。
また、AccomNewsの調査によるとオーストラリアでは、親の6割が「子どもの興味をもとに行き先を選ぶ」と回答しており、SNS上の親子レビューや旅行ブログは、次の旅行計画に直結する重要な情報源となっています。特に家族旅行の場合、「安全性」「年齢に応じた楽しみ方」「移動や食事のしやすさ」といった実務的な情報が、同じ境遇の旅行者からの投稿で具体的に得られる点が評価されています。こうしたリアルな声は、“また行きたい”“行ってみたい”という共感を生み、訪問の動機付けにつながります。
共感と信頼を高めるための実践策
- 写真共有に適したフォトブースや“体験証明”の設置
写真映えだけでなく「ここで体験した」という証拠を残せる仕掛けが有効。 - 自治体HPや施設内でのレビュー紹介
実際の旅行者による声や投稿を公式情報と並べて掲載することで信頼度を強化。 - PR素材への旅行者の言葉の活用
加工されたキャッチコピーよりも、体験者の生の言葉が共感を呼びやすい。
「また来たい」を生む、日本ならではの旅づくり
オーストラリアでは、子どもたちが旅先選びに関わる動きが広がっています。「家族みんなで一緒に楽しみ、学び、思い出をつくる」――そんな共創型の旅は、日本の多彩な魅力と相性が良いようです。都市のエンターテインメントも、地方の自然や文化も、どちらも家族の心に残る体験になり得ます。ご紹介した6つの実践ポイントは、少しの工夫や視点の変化から取り入れられるものばかりです。そして、訪れた家族が「また来たい」と感じる瞬間をつくることが、新たなリピーターや口コミによる紹介へとつながっていくかもしれません。リアルな声や笑顔の記録は、何より説得力のある“招待状”になるでしょう。オーストラリアの家族旅行者は、長く滞在し、豊かな体験を求めています。次の季節、あなたの場所にも、笑顔あふれる家族が訪れる可能性があります。だからこそ、そのときに「来てよかった」と思ってもらえるように、少しずつ準備を進めてみませんか。














