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100万人突破の先へ、Japan Roadshowが映す豪州インバウンドの現在地

By SCP編集部 in イベントレポート

JNTO(日本政府観光局)主催による訪日観光セミナー・商談会「Japan Roadshow 2026」が、2月2日にシドニー、4日にブリスベンで開催された。シドニー会場に165名、ブリスベンに158名のバイヤーが来場した。本イベントは、ビジット・ジャパン(VJ)事業の定例施策として、オーストラリアおよびニュージーランドの現地旅行会社を対象に実施されているもので、日本側の観光関係者と現地旅行会社との直接的な商談機会を創出することを目的としている。

日本からは旅行会社やDMC、宿泊施設、地方自治体、DMO、運輸機関など幅広い分野のインバウンド関係者が参加し、現地のリテーラーやツアーオペレーターと活発な意見交換を行った。訪日旅行商品の造成や新規販売につなげる実務的な場であると同時に、日豪間の観光ビジネスの最新動向を共有する場としての役割も担っている。

今回の商談会には、日本全国からシドニー会場に45社、ブリスベン会場に43社が参加した。特に目立ったのは、地方自治体やDMOの存在感である。これらはオーストラリアの旅行会社にとって、地域固有の観光資源やアクティビティ、まだ広く知られていないデスティネーションを紹介するうえで欠かせないパートナーだ。北は北海道から南は九州・沖縄まで、日本各地を代表する団体が一堂に会したことは、近年のインバウンド施策が「地方分散」を明確に意識していることの表れとも言える。

加えて、鉄道会社や観光交通事業者など、パスやバスサービスを提供する交通関連サプライヤー、宿泊施設、体験型コンテンツを提供する事業者も多数参加した。各サプライヤーが専門とする地域ごとに配置されていた点は、商談の効率性を高める工夫であり、結果として多くの具体的なマッチングやネットワーキングが生まれていた。訪日旅行市場が量的拡大から質的深化へと移行しつつある中で、こうした「具体的な商品づくり」に直結する商談の重要性は、今後さらに高まっていくだろう。

2025年の訪日外国人数は過去最多となる約4,270万人を記録し、初めて4,000万人を突破。そのうちオーストラリアからの訪日客は105万8,300人に達し、前年比15%増となった。中国、韓国、台湾、米国、香港、タイに次ぐ7番目の市場として、オーストラリアの存在感は年々高まっている。

開会挨拶に立ったJNTOシドニー事務所の島田優太次長は、オーストラリアからの訪日客数が100万人を超えた点について、「重要なのは、その関心が東京・大阪・京都だけに集中していないこと」だと指摘した。日本の食文化、自然、安全性といった評価を背景に、地方への関心が着実に広がっているという。

次長は、オーストラリアの旅行者を「好奇心が強く、日本の文化や人、体験そのものを深く理解しようとする、高付加価値な市場」と位置づけた。今後も、より長く滞在しより広範囲を訪れる旅行スタイルが期待される中、地方側の受け入れ体制や商品造成の質が問われる局面に入っていると言えるだろう。

続いて登壇した在シドニー日本国総領事館の山中修総領事は、日豪関係が観光分野においても着実に深化していることに言及した。100万人という数字は、「両国の強い絆を示すだけでなく、日本をより深く、より広く知りたいというオーストラリア人の関心の高まりを反映している」と述べた。実際オーストラリア市場では、都市観光にとどまらない体験志向や、地域文化への関心が顕著になっている。

総領事はまた、日本が「伝統と革新が調和する国」である点を強調。京都の歴史ある寺社仏閣から、東京や大阪のダイナミックな都市風景まで、多様な体験が可能であること、そしてそれらを支える日本の食文化が、旅行体験全体の価値を高めていると語った。特に、各地域に根付いた郷土料理や食文化は、日本旅行の大きな訴求点であり、地方誘客の重要な切り口になっている。

さらに食に限らず、日本には世界有数のスキーリゾートや豊かな自然、アニメ・漫画・ゲームといったポップカルチャーなど、若い世代を中心に支持される要素が多い。こうした多面的な魅力を結びつけているのが、「おもてなし」の精神であると述べ、地方の温泉地で迷っていた旅行者を地元住民が目的地まで案内したエピソードを紹介した。

「日本人のおもてなしの心は、レストランやホテルだけでなく、日常の中で出会う人々との何気ない交流の中にも感じられます。ある旅行者が、日本の地方にある小さな温泉町で道に迷ってしまい、地元の方が目的地を教えるだけでなく、実際にそこまで一緒に歩いて案内してくれたそうです。さりげない親切は、旅行者の心に深く残るもの。日本各地で旅行者が体験する思いやりと温かさの一例と言えるでしょう。」

何気ない親切が強い印象として記憶に残る点は、日本旅行のリピート意欲や口コミに直結する重要な要素と言える。

締めくくりとして、総領事は今年50周年を迎える「日豪友好協力基本条約」に触れ、人と人との交流が両国関係を支えてきたことを改めて強調した。そのうえで、主要都市にとどまらず、地方へ足を延ばしてほしいと呼びかけ、地方こそが日本の多様性と奥深さを体感できる舞台であると語った。

さらに、JNTOシドニー事務所のビジネス開発&マーケティング・シニアアシスタント・マネージャーであるHarriett Bougher氏は、将来的にオーストラリアからの訪日客数を一段と高い水準へ引き上げたいとの考えを示した。その実現には、現地旅行会社による継続的な分析や商品開発、日本への理解と情熱が不可欠であり、日豪双方の協力の積み重ねが成果につながっていることに感謝を述べた。

また、日本で今後開催される国際イベントとして、2027年の「国際園芸博覧会(グリーンエキスポ)」が紹介された。日本国内における国際イベントは昨年の大阪万博が記憶に新しいが、グリーンエキスポは花や植物、サステナビリティをテーマとする同博覧会だ。2027年3月19日から9月26日まで横浜で開催予定で、1,000万人以上の来場者が見込まれている。

1859年の開港以来、横浜は国際的な玄関口としての役割を担い、日本の園芸産業においても植物や花を海外に輸出し、海外の植物を日本に紹介してきた。会場となるのは、かつて米軍施設として使用され、2015年に日本へ返還された横浜郊外の土地である。港町としての歴史と園芸産業の背景を持つ横浜で、今なお自然環境が保たれた会場立地は、持続可能性を象徴する舞台として説得力がある。イベント後に公園として活用される点も、レガシーを重視する近年の国際博覧会の潮流と一致している。

最後に、「Japan 101ウェビナー」シリーズについても紹介された。鉄道予約や地理、スキー、ラグジュアリートラベル、地方といった実務的テーマを扱うこの取り組みは、BtoB市場における知識底上げに寄与している。次回は2月25日に開催予定で、ゴールデンルート以外の地域に焦点を当てる。

「Japan Roadshow 2026」は、単なる商談会にとどまらず、オーストラリア市場における日本観光の「次の成長段階」を示す場にもなっている。量的拡大を達成した今、訪日客をいかに都市から地方へ分散させて質の高い体験を提供し、持続可能な形で市場を育てていくか。その答えを探るための重要なステップとして、本イベントは大きな意味を持っていたと言えるだろう。

最後に、JNTOシドニー事務所の北澤直樹所長に、現在の日豪インバウンド市場の状況について話を聞いた。

近年の訪日ブームについて、北澤所長はまずその背景をこう語る。

「今回の訪日客数の伸びは、JNTOや各自治体による豪州市場でのプロモーション強化に加え、円安、航空路線の拡充など、複数の要素が重なった結果だと考えています。

シドニー事務所として特に力を入れてきた取り組みも多岐に渡ります。BtoCでは、SNSを通じて“今の日本”を継続的に発信することを重視してきました。加えて、WEBメディアを活用した幅広い情報発信や、日本酒イベントなど従来と異なる切り口のイベントにも積極的に参加しています。現地旅行会社との共同広告も実施し、プロモーションの幅を意識的に広げてきました。

また、毎年主催しているこの商談会は、BtoBのオーストラリアの旅行会社と日本側サプライヤーを直接つなぐ重要な場です。それに加えて、MICE専門の旅行会社向け商談会や、高付加価値旅行を扱う旅行会社向けの商談会にも参加し、ネットワークの拡充を図ってきました。また、現地旅行会社の皆さまに向けて、ニュースレターやウェビナーシリーズを定期的に配信し、訪日旅行に関する知識向上を図ってきました。

日本の観光関連事業者や団体の方々がオーストラリア市場に参入しやすくなるよう、具体的なアドバイスも行ってきました。そうした一つ一つの取り組みが、今になって成果として表れてきているのではないかと感じています。

ただし、2018〜2019年のデータを見ると、米国や英国などでも、オーストラリアからの訪問客数はすでに100万人を超えています。今年の100万人は大きな節目ではありますが、今後に向けて今年の実績を少しでも上回る数字を獲得していきたいですね。そのためにも、地方誘客、アドベンチャー・ツーリズム、高付加価値旅行といったテーマを軸に、新しい訪日客層の拡大を目指す一年にしたいと思っています。

観光庁の発表*によると、訪日外国人の市場別1人当たり消費額では、オーストラリアはドイツ、英国に次いで3番目に高い市場です。日本政府が掲げる『2030年までに消費額15兆円』という目標に向けても、非常に重要な市場だと認識しています」

最後に、所長は今後の展望についてこう締めくくった。

「オーストラリア市場に向けて、引き続き質の高い観光コンテンツを提供できるよう、日本国内外の事業者や自治体の皆さまと連携して取り組んでいきたいです。検討段階ではありますが、新年度予算が通過すれば、旅行会社向けの表彰式や、オーストラリア人訪日客100万人達成を記念したメディアイベントなども視野に入れています」

*(参考)インバウンド消費動向調査 2025年暦年の調査結果(速報)の概要
https://www.mlit.go.jp/kankocho/content/001977992.pdf

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