JNTO(Japan National Tourism Organization/日本政府観光局)主催による訪日観光セミナー・商談会「Japan Roadshow 2019」が、12月5日(木)にブリスベン、12月9日(月)にシドニーで開催された。ビジット・ジャパン(VJ)事業の定例施策として浸透しつつあるこの取り組みだが、シドニーでは北は北海道、南は沖縄まで日本の自治体、宿泊施設や旅行企業の53団体が参加、旅行・メディア関係者186名との熱のこもった活発なネットワーキングが展開された。
商談会に先立って行われたセミナーではまずJNTO所長の田中陽子氏が登壇し、2019年10月までの訪日オーストラリア人観光客数が50万人に達したことに触れ、12月までにその数は60万人に昇るだろうとの見解を示した。また、来年のオーストラリア-羽田間の発着枠拡大や東京オリンピック・パラリンピック開催にも言及し、日本の露出がさらに増えることで、さらなる地方誘客につなげていきたいとの展望を述べた。
つづいてシドニー総領事の紀谷昌彦氏が挨拶に立ち、出展者と来場者がより結びつくことで、多くのオーストラリア人が日本の「隠れた」魅力を体験できるようになってほしいとし、また総領事館でも祭りジャパンフェスティバルなどの日本プロモーションイベントを支援することで、インバウンド促進につなげたいとした。
またソフトボール・オーストラリア元代表で、日本女子ソフトボールリーグの現役選手であるステイシー・ポーター氏がゲストスピーカーとして、オーストラリア人の視点から日本の魅力について語った。長年日本でプレーしている経験から日本人は細部までも目が行き届き、誠実でかつ高いパフォーマンスをするために努力を惜しまないと国民性について言及。さらに趣味である電車旅のことにからめて、日本の公共交通機関の利便性と快適性についても熱く語った。車内の静かさと乗客がお互いを尊重している光景は日本ならではとし、オーストラリア人にも定番の観光地やスキー場に留まるだけでなく、電車やバスを利用して、様々な場所へ足を伸ばしてほしいと訴えた。
セミナー後にセッティングされた商談会では参加団体が来場者とのネットワーキングに励み、各ブースが大盛況。来場者からも「ツアーに組み込んだ場合はどのような流れになるのか」「今取り引きをしたら特典はあるのか」など具体的な質問が飛び交い、活気にあふれたイベントとなった。東京オリンピック・パラリンピックを来年に控え、その後も国際競技大会がつづくなどインバウンドの追い風が吹く日本において、今後もより多くのオーストラリア人が日本を訪れることに期待をしたい。
JNTOシドニー事務所 田中陽子所長
「来年の東京オリンピック・パラリンピックだけで訪日オーストラリア人数が伸びると考えていません。オリンピックで注目を浴び、日本に興味を持った方たちが増えるのはその後だと考えています。現在、20代・30代の層が一番多く日本を訪れているため、その方たちに訴求できるようデジタルマーケティングを強化しています。例えばインフルエンサーを活用した地方プロモーションの実施ですね。『日本ではこのような風景もあるんだよ』と主要観光地以外の地域にも目を向けてもらえるようご紹介いただいています。最近、関心が高まっていると感じるのは中山道や熊野古道です。オーストラリア人の趣味に適したアクティビティに日本の文化的や伝統的要素が加わっているので、受け入れやすいのだと思います。1つの地方自治体、市や県だけではなく、その地域を支えるホテルやサプライヤーさんなども巻き込み、そしていずれは日本一丸になってインバウンドを盛り上げていけると良いなと思います」
文・取材:臼井佑季
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