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インバウンド地方誘客の鍵! 消費額大のオーストラリア人を狙う

By SCP編集部 in オーストラリア基本情報, ツーリズムデータ

近年、地方部を訪れる外国人旅行者が増え、経済効果や地域活性化をもたらしていることが話題になっていますが、なかでもその動向に注目したいのが、オーストラリアからの旅行者です。彼らの多くが希望する訪問地として地方部を挙げており、月に約3万人のオーストラリア人が実際に地方部へ足を運んでいます。

南半球のオーストラリアでは、以前から日本の冬(12~1月)にスキーやスノーボードを楽しむ旅行者が増える傾向があります。南半球の暑い季節に寒さを楽しめることや、「japow(ジャパウ)」と称される日本の雪質の良さが魅力とされてきました。欧米からの観光客が減る冬季においても、オーストラリア人旅行者の存在は地方誘客のカギとして、10年以上前から注目されています。

今後、オーストラリア人旅行者を地方に呼び込むためには、どのような施策をとっていけばいいのでしょうか。昨今のオーストラリア人旅行者が日本への旅に求めているものやその傾向について、地方部へ向かう旅行者の特徴、ライフスタイルなどのデータとともに確認しておきましょう。

三大都市圏“以外”の場所へ!地方に向かうオーストラリア旅行者

訪日旅行者の半数以上が地方を訪問。広がる旅行の目的・動機

日本の観光各地を巡ると、地方部であっても、海外からの旅行者が目に留まることが増えました。観光庁によると、三大都市圏(東京・大阪・名古屋)を除く地方部への訪問は、日帰りも含めると、およそ旅行者全体の52%(2023年4〜12月 参照:観光庁)。オーストラリアからの旅行者だけで見ると、その数は全体の60.1%にものぼります。彼らの目的は、珍しい神社・仏閣巡りや文化体験はもちろんのこと、北海道でスノーアクティビティを楽しんだり、沖縄でマリンスポーツを満喫したりと、多岐にわたります。特に冬季のウィンターリゾートは、その雪質の良さを求めて世界中から人々が集まります。

都市部で期待されるマスなモノ消費に対し、地方部ではコト消費や、より二ッチなモノ消費が求められており、この傾向は今後もますます拡大していくと見られています。

消費額は4年で2倍以上に増加!地方部で拡大する宿泊費&飲食費

地方部へもたらす外国人旅行者の影響は、単純な人数の増加だけではありません。地方部で消費される金額にも大きく作用しています。新型コロナウイルス感染症拡大の前後で比較すると、2019年度は宿泊者の消費単価が約3.2万円だったのに対し、2023年度は約6.9万円。およそ2倍以上に増えています。中でも宿泊費、飲食費が大きく増加しており、これは地方に長期滞在する外国人旅行者が増えたことを示しています。


参考:観光庁

宿泊先は“個人手配”傾向へ。SNS・動画でのクチコミで、よりニッチな体験を

訪日人数や消費金額の増加に加え、注目したいのが「手配方法」です。これまでは、特に地方部への訪問においてはツアー利用者も目立っていましたが、現在は逆転。地方部を訪れる人々の宿泊先について、2019年度は個人手配の割合が49.7%だったのに対し、2023年度は73.7%の人々が自身で宿泊先の段取りを整えていました(参照:観光庁)。昨今では外国人旅行者の約3割以上がSNSや動画サイトを参考にしているという結果が出ており(参照:観光庁)、そこで得た“珍しいモノ・コト・場所”の情報を元に、旅行プランを組む人も増えています。ツアーの使用では足が届かない場所への需要が、インターネットを通した個人手配に繋がっているものと思われます。

オーストラリア人旅行者は長期滞在型!地方部への探求心も旺盛

訪日するオーストラリア人の特徴。20代が多く、平均泊数は13.8泊

観光庁データによると、日本を訪れるオーストラリア人旅行者のうち最も多い年代は20~29歳で、男女比では男性が約6割の女性が約4割を占めます。他国よりも比較的若く、アクティブな世代が多い傾向にあります。


参考:観光庁

またオーストラリア人の旅行の特徴として、滞在日数が平均13.8泊とアジア地域に比べて長いことが挙げられます。そのため宿泊費・飲食費での支出が多く、それらの消費額は訪日外国人のなかでも非常に高い数値となっています。さらにこの額は増加傾向にあり、2023年には1人当たりの旅行支出は約34万円と、2019年に比べると37.4%増になっています。

そのほか特筆すべき点として、家族旅行者の多さも挙げられるでしょう。家族を同行する旅行者の割合は全地域平均18.8%であるのに対し、オーストラリアでは32%となっています。家族と過ごす休暇を大切にする国民性が見てとれます。


参考:観光庁

2024年1-7月の訪日旅行者は過去最高数を突破

パンデミック収束以来、訪日人数の増加傾向は著しく、2024年1月から7月までの訪日オーストラリア人旅行者数は51万600人と過去最高を記録しました。また、日本を訪れるオーストラリア人のうち43%以上の人々が2回目以降に訪れた“リピーター”だというデータが出ており(参照:観光庁)、彼らにとって日本が足を運びやすい国として捉えられていることがわかります。それらの理由として円安が続いていることも挙げられますが、文化体験を好む人々が多く、日本独特のモノ・コトが求められている点も大きな動機のひとつと言えるでしょう。

毎月約3万人以上のオーストラリア人旅行者が地方部へ足を延ばす 

観光庁のデータによると、オーストラリア人旅行者の60.1%が地方部を訪れており、その数は毎月約3万人以上にのぼります(参照:JNTO)。チャンネル登録者数約54万人をほこるオーストラリア人インフルエンサーのCurrently HannahのYouTubeチャンネルでは、日本の地方都市を訪れた動画「10 Unique Japan Travel Spots」が92万回以上再生されており、突出した人気トピックとなっています。また、トラベルYouTuberのAllan Suによる「How to Spend 14Days in Japan(日本での14日間の過ごし方)」は1000万回再生を突破。長期滞在を目的とした視聴者や、わかりやすい観光スポット以外での経験を求める人々が多くいることを示しています。(登録者数・再生回数は2024年11月現在の数字です)

■訪日オーストラリア人における今後の地方観光の可能性 

ローカルこそが魅力的! 地方独特の“コト体験”が人を呼び込む 

昨今、日本を訪れる外国人旅行者からは、わかりやすい観光地を巡る旅よりも日本のローカル体験が好まれていますが、それはオーストラリア人も同様です。陶芸や華道から、和食体験、剣道教室まで、旅行者の興味は多岐にわたります。特にオーストラリアでは公共の場で飲酒ができないため、公園などで飲酒ができる花見体験は貴重だそう。そこでしかできないローカル体験を打ち出すことができれば、その地方への誘客に繋がるため、工夫次第で日本各地でインバウンド消費を創出することができると言えます。

家族旅行を好む=スクールホリデー期間の旅行客が増加

前述したように、オーストラリア人旅行者の多くは家族旅行として訪日しています。そのためスクールホリデーに当たる期間に旅行者が増える傾向があります。スクールホリデーは年に4回あり、その中でも最も長いのが、12月後半から1月末までの期間です。そのタイミングでキャンペーンを打つことで、集客が見込みやすくなるでしょう。

またこの時期は、欧米諸国からの旅行者数が減るシーズンでもあります。落ち込みがちな冬季観光のインバウンドにおいて、オーストラリア人旅行者の多さは注目すべきポイントになると思います。

話題の”クワイエットバケーション(quiet vacationing)”を意識した環境づくりも

リモートワークの普及と同時に、世界的に“クワイエットバケーション”なる仕事術が話題となっています。これは上司に伝えずこっそり旅行に出かけ、旅先から必要な仕事をリモートでこなす働き方のこと。SBSニュース によると、フルタイムで働くオーストラリア人の45%が既にクワイエットバケーションを取り入れているか、そうした働き方を検討しているそうです。テレワークに適した環境が整っていれば、仕事をしながら旅行する長期滞在者を取り込むことも可能。地方部の集客を伸ばすことにつながるかもしれません。

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