NEWS

コロナを経てオーストラリア人の海外旅行はどう変わったのか?

By SCP編集部 in オーストラリア基本情報, ツーリズムデータ

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が世界的に流行したことで、各国の旅行事情は、コロナ前後で様々な変化を見せています。もちろん経済的要因もありますが、それだけでなく、そこには環境の変化や人々の心理も大きく働いています。旅行客を受け入れる立場として、変化した点やその背景を知ることで、より最適なインバウンドへの取り組み方法を探っていきましょう。

■海外旅行者数の変遷と、コロナ前後で変化した旅行先

コロナ以前:海外旅行者数は増加の一途をたどっていた

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が猛威をふるう少し前まで、オーストラリアでは海外旅行者の数が年々増加していました。オーストラリア統計局のデータによると、コロナ直前の2019年には、オーストラリア人海外旅行者の数は記録上最大に達し、2009年度と比較すると約540万人も増えています。2018年度と比べても、1年で約50万人が増加しており、完全に右肩上がりの流れとなっていました。

旅行者は20代から50代くらいまでの世代が特に多く、旅行先での平均滞在日数は約14日。長期休暇を取り入れる生活習慣がベースにあるため、“ホリデーを海外で過ごす”という時流がごく自然に馴染んでいったのでしょう。2000年代に入ると、スクールホリデーとも重なる年末年始を中心として、比較的近場のニュージーランドを始め、イギリス、アメリカ、アジア各国への渡航者が年々増加していきました。日本への旅行者も増加の一途をたどり、2019年には10年前の約2倍となる渡航者数を記録し、オーストラリア人旅行者の渡航先として7番目に多い国となりました。

(参考:オーストラリア統計局

コロナ後:人気の旅行先はインドネシアへと変化

渡航制限がかけられた2020年度以降は旅行者数が世界的に停滞していましたが、2022年に各国で緩和されるにしたがい、オーストラリアからの旅行者数もたちまち増加しました。飛行機の就航便数が増えたこともあり、2023年度には2019年度の水準にまで回復を遂げ、その勢いは今後もますます増していくと見られています。

こうした状況の中、コロナ前は長年ニュージーランドが最大の渡航国だったのに対し、コロナ後はインドネシア、特にバリ島への旅行が増え、2023年度にはインドネシアへの旅行者数がニュージーランドを逆転しました。またインドにおいては、2019年度に比べて約15%もの増加率を達成するほど、人々の関心を集めています。独特の文化を持つアジアは今、インドネシアを筆頭に、オーストラリアの人々にとって非常に興味深く、足を運びたい場所となっているのです。

もちろん日本も同様に注目度が上がっており、オーストラリアから日本を訪れる人々はコロナ前よりもさらに増加。2024年のオーストラリア人訪日者数は9月に63万7300人を突破し、現時点ですでに過去最高の数字を記録しています。(参照:日本政府観光局(JNTO))国ごとに統計した旅行者数データでも、日本はアメリカに次ぐ5位と順位を上げ、オーストラリアの人々にとって人気の旅行先となっていることがわかります。旅行者は特に冬季に多く、東京・大阪などの都市圏はもちろんのこと、北海道や長野、軽井沢など地方都市への観光客が目立つ結果となっています。

(参考:オーストラリア統計局

■旅行者数、渡航国が変化した背景は?

コロナの反動による “リベンジトラベル”心理

コロナ禍での渡航制限で、人々は移動の自粛を余儀なくされました。しかも年々海外旅行への熱気が高まっていたなかでの突然の規制です。“海外旅行を我慢する”というストレスは想像以上に大きかったのでしょう、平常での生活ができるようになった今、そのストレスが大きな反動となり、これまで以上に旅行欲が駆り立てられているようです。

渡航者数がどんどん増えているのはもちろんですが、それ以外にも、海外旅行先のフライトや旅行保険の検索数が上昇したり、オーストラリアで行われる海外旅行フェアは軒並み人気となるなど、様々なところで如実に表れています。この心理行動は“リベンジ(復讐)トラベル”と言われ、年末年始のホリデー期間に向け、さらに盛り上がっていくと見られています。

アジア人気は異文化への好奇心から

 

オーストラリア人旅行者の特徴として、異文化体験を好む人々が多いことが挙げられます。歴史的に見ても多文化主義であることに加え、オーストラリアには移民が多いため、人々は他の文化を味わうことを大切にしているからです。

前述した“リベンジトラベル”でも言えることですが、コロナによる渡航制限期間を経て、人々は自国と異なる景色・文化への興味がより一層増しました。抑圧された経験を通し、自分が知らないモノ・コトへの好奇心が改めて浮き彫りになったからです。特にアジアは欧米やオーストラリアとは風景も歴史も大きく異なるので、興味がかきたてられるのも自然な流れ。それに加え時差の少なさや直行便の増加、有利な為替レート状況なども後押しし、コロナ以降、これまで以上にアジア地域に対して関心が高まっていると言えます。

リモートワークがより身近になり、旅行先からの勤務も可能に

コロナ後の傾向として、比較的長い期間をかけて海外旅行に行く人が増えていることが挙げられます。これには多様な働き方が認められ始めたことが大きく関係しています。

コロナ禍によりテレワークが普及したことで、人々は仕事をする場所を定める必要がなくなりました。もちろん職種にはよりますが、ワーケーション(滞在先で休暇を取得しつつ仕事も行う働き方)やクワイエットバケーション(こっそり旅行に出かけ、旅先から必要な仕事をリモートでこなす働き方)という言葉も生まれるほど、休暇と仕事を日常の中に混在させた生活が可能になってきています。

こうなると、もはや海外旅行はバケーションに限った話ではありません。日々の社会生活を送りながら海外を楽しむことができますし、旅行に対する心理的ハードルも下がることでしょう。さらに都市圏だけでなく地方都市に滞在するパターンも増加しており、よりローカルと密着した“暮らすような旅”を堪能しているようです。コロナ禍を経て働き方が多様化したことも、旅行者の行動に少なからず関わっているのです。

■オーストラリア人旅行者の今後の動向は?

海外旅行はますます増加する

コロナ以前から続く“ホリデーを海外で過ごす”という流れは、今後も続いていくでしょう。オーストラリアの人々は、日々の生活の中で旅行を非常に重要視していますし、まだまだ続くリベンジトラベルの気運が、人々を海外旅行に向かわせると見られています。

また、職種によっては海外渡航先から仕事をすることも可能となった今、旅行者数だけでなく、滞在日数も延びる可能性があります。滞在先は地方を含め多岐にわたり、旅行の形も多様化していくかもしれません。こうした流れは観光業界にとってはビジネスチャンスとなり得ますし、相乗効果で更なる旅行者の増加も見込めることでしょう。

オーストラリア人の訪日観光客数は2023年は61万人を超え、2024年1月には単月で過去最高の10万3600人を記録しています。今年はこの数字がどこまで伸びるのか、観光関係各社から注目されています。

旅行者の意識はアジアへ

オーストラリアにはない異文化体験を求め、アジア人気はますます勢いを増すと考えられています。オーストラリアにはアジア系住民が少なくありませんし、アジア料理店が多数点在することや、各国の食材を扱うスーパーマーケットも多いなど、人々は普段からアジアに馴染みがあります。ですから海外旅行に行き慣れていない人にとっては行きやすく、慣れた人にとっては、より自分の好みに合わせた体験ができる地域と言えるでしょう。

これは日本に対しても同様です。自然や遺跡、歴史、食、現代のポップカルチャーなど、オーストラリアのあらゆる世代の人々から日本文化は強い関心を集めており、それらはどれも、旅行者を日本に呼び込むきっかけとなりえます。各々の文化や都市が、それぞれ特色あるアピールができれば、日本に来るオーストラリアからの旅行者は今後ますます増えていくと考えられます。

SNS

関連する記事

コメントを残す