By SCP編集部 in ツーリズムデータ | 各国のインバウンドの違い
2020年に東京オリンピックを控え、世界における日本への注目度が高まっています。増々多くの外国人観光客が日本を訪れるようになり日本のインバウンド市場は大きな盛り上がりを見せています。
近年はアジア圏に続き欧米豪圏からの訪日外国人観光客の増加が著しく、特にオーストラリアは2012年以降増加傾向にあり、実は一人当たりの旅行予算は1番多いのです。オーストラリアはアジア圏以外での日本語学習者数が1番多く、日系企業の数も年々増加しており、今後オーストラリア国内での日本への関心は増々高まっていくことが予想されます。
その一方で、イタリアからの訪日外国人観光客数も増加傾向にあり、2012年には51,801人にとどまっていたイタリア人インバウンド市場は、2018年には約3倍の150,060人にまで成長しました。
本記事では、訪日オーストラリア人と訪日イタリア人の旅行動向を比較分析し、それぞれの特徴を見ていきます。
訪日観光客数の比較
観光客数の推移
始めに訪日オーストラリア人と訪日イタリア人それぞれの観光客数の推移を見ていきます。
オーストラリア、イタリアともに訪日観光客数は年々増加しており、2018年の訪日オーストラリア人は55.2万人、訪日イタリア人は15万人にまで達しました。
どちらの国においても今後さらなる訪日観光客数の増加が期待されます。特に近年、オーストラリアからの観光客の増加は著しく、国別訪日観光客数のランキングでは第7位にランクインするほどオーストラリア国内での日本人気が上昇しています。
性別比較
次に2018年の訪日オーストラリア人と訪日イタリア人の性別の割合を比較していきます。
どちらの国においても男性が60%以上の割合を占めていることがわかります。特にイタリアの方が男性観光客の割合が高いことが読み取れます。
年代別比較
次に年代別による訪日オーストラリア人と訪日イタリア人を比較します。
オーストラリアのグラフを見ると20代の訪日オーストラリア人の割合が一番高いことが分かります。その一方で、イタリアのグラフでは30代の訪日イタリア人の割合が一番高くなっています。
どちらの国においても20代・30代が日本へ強い関心を抱いていることがうかがえます。20代・30代の訪日観光客を維持しつつ、それ以外の世代を惹きつけるインバウンド事業を行うことが今後の課題となります。
それぞれの国の訪日観光客の属性や特徴を把握することで、より効果的なインバウンドプロモーションの戦略や実践へと繋がります。
訪日観光客の消費動向
滞在期間
訪日オーストラリア人と訪日イタリア人の滞在期間はどれくらいなのでしょうか。訪日観光客の消費動向を把握することはインバウンドプロモーションの重要な要素の一つとなります。
グラフを見ると、どちらの国も1週間以上の滞在が多いことが特徴的です。両国とも日本への距離が遠く、何度も定期的に訪れることができないことが理由に挙げられます。
また、訪日オーストラリア人の平均滞在日数は13.3泊であるのに対し、訪日イタリア人の平均滞在日数は15.2泊でした。
滞在日数の短いアジア圏からの訪日観光客に比べ、訪日オーストラリア人と訪日イタリア人は長期間日本に滞在し、観光地により益をもたらしてくれる魅力的なターゲットであると言えます。
滞在目的
「日本文化体験をしたい」「日本食を食べたい」「伝統的な街並みを見てみたい」など、訪日観光客は様々な目的を持って日本を訪れます。では訪日オーストラリア人と訪日イタリア人はどのような目的を持って日本を訪れるのでしょうか。
オーストラリア | イタリア | |
1位 | 日本食を食べること(85.4%) | 日本食を食べること(85.4%) |
2位 | 自然・景勝地観光(60.1%) | 自然・景勝地観光(58.0%) |
3位 | 日本の歴史・伝統文化体験(54.9%) | ショッピング(54.4%) |
4位 | ショッピング(54.4%) | 繁華街の街歩き(52.1%) |
5位 | 繁華街の街歩き(52.4%) | 日本の歴史・伝統文化体験(51.5%) |
この表からわかるように、訪日オーストラリア人と訪日イタリア人の8割以上は「日本食を食べること」が訪日の大きな目的の一つとなっています。2位は「自然・景勝地観光」と続いており、日本の四季と共に姿を変える自然や景色の美しさは訪日外国人を魅了しているのでしょう。
オーストラリアの第3位が「日本の歴史・伝統文化体験」であるのに対し、イタリアの第3位は「ショッピング」がランクインしています。またオーストラリアの第4位が「ショッピング」である一方、イタリアの第4位は「繁華街の街歩き」となっています。
これらのことから訪日オーストラリア人は形に残る「モノ」よりも日本でしかできない「コト」を望む傾向があり、その一方で訪日イタリア人はショッピングや繁華街の街歩きといった「モノ」を望む傾向があるといえます。
このようにターゲットとなる国の観光客の目的を把握することでターゲットへのアプローチをより効果的に行うことができます。
一人当たりの消費額
では、訪日外国人観光客は実際に日本を訪れた際、どれくらいお金を使うのでしょうか。オーストラリア、イタリアそれぞれの一人当たりの消費額を比べてみましょう。
まず始めに、グラフを見るとオーストラリア、イタリアともに一人当たりの消費額が全体に比べ、非常に高いことがわかります。観光庁の調べによると、訪日外国人観光客の一人当たりの消費額が最も高いのはオーストラリア(24万2千円)であり、日本にとって非常に重要なインバウンドのターゲットです。
(参照:観光庁「2018年(平成30年)の訪日外国人旅行消費額(確報)」 )
宿泊費に関してはオーストラリアは全体の約2倍、イタリアは全体の約1.7倍の支出であることが分かります。中でも訪日オーストラリア人一人当たりの宿泊費は98,832円と訪日滞在費の約4割を宿泊費にあてており、イギリスに続き第2位にランクインしました。
また、飲食費も宿泊費の次に消費額が高く「日本食を食べたい」という訪日観光客の目的と実際の行動の繋がりが読み取れるのではないでしょうか。
このように訪日オーストラリア人と訪日イタリア人は全体に比べ一人当たりの消費額が非常に高く、インバウンドプロモーションのターゲットとしてとても魅力的なマーケットと言えるでしょう。
ハイシーズン比較
それでは訪日オーストラリア人と訪日イタリア人はどの時期に一番日本を訪れるのでしょうか。
出典:JNTO 日本の観光統計データ2018年「月別国・地域ごとの訪日外客数の推移」
グラフを見ると、オーストラリアとイタリアのハイシーズンの違いが明らかにわかります。訪日オーストラリア人は12~4月のウインタースポーツができる冬の時期に日本に訪れる傾向があります。その一方で訪日イタリア人は桜のシーズンである4月、7~9月の夏の時期、更に紅葉のシーズンの秋の時期に日本に訪れる傾向があります。
今後オーストラリアには夏の日本の魅力を、イタリアには冬の日本の魅力を伝えていくことが必要になるでしょう。
訪日旅行後の影響
満足度調査
日本を実際に訪れた訪日外国人観光客は日本にどんな印象を持つのでしょうか。
それぞれの調査結果を見てみましょう。
どちらも8割以上が「大変満足」という回答をしています。また「満足」と回答した割合も高く、実に9割以上が日本を訪れ満足していると言えるでしょう。
日本への再訪意向
また、日本への再訪意向については、オーストラリア・イタリアどちらの国も約7割が「必ず来たい」、約2割が「来たい」と回答しました。全体を比べてみるとオーストラリアの方がイタリアよりも日本への再訪意向がやや高いと言えます。
訪日旅行への満足度や再訪意向が高いほど2度目、3度目の訪日旅行に繋がり、リピーターの育成を促します。
リピーター
日本への来訪回数を比べてみると、初めて日本を訪れたという訪日イタリア人の割合が66.9%であるのに対して、訪日オーストラリア人の割合は58.7%でした。つまり、訪日オーストラリア人は訪日イタリア人に比べ、リピーターが多いということになります。
詳しく見てみると、日本に2回以上訪れている訪日オーストラリア人のリピーターが41.3%もいるのに対して、訪日イタリア人のリピーターは33.1%にとどまっています。
このような結果にはオーストラリアと日本は時差があまり変わらないこと、イタリアに比べ移動時間が短く飛行機の乗り換えもないことが理由に挙げられるのではないでしょうか。
さらに、繰り返し日本を訪れるということは日本旅行への慣れにも繋がり、ゴールデンルートと呼ばれる東京、京都、大阪などの有名な観光地だけでなく周辺地域へ足を延ばす機会も増えると考えられます。
JTB総合研究所の調査によると、訪日オーストラリア人は都会よりも田舎への関心があることがわかっています。インバウンドで地域創生を試みる地域にとってオーストラリアは非常に重要なターゲットであると言えます。
また、今後の課題として訪日オーストラリア人のリピーターを離さないインバウンドプロモーションを展開すること、訪日イタリア人のリピーターの育成をすることが挙げられます。
情報収集源
最後に、訪日外国人観光客がどのように日本旅行の情報を集めているのか、旅行中に実際に役に立った情報は何なのか見ていきましょう。
オーストラリア | ||
訪日旅行前 | 訪日旅行中 | |
1位 | 口コミサイト(トリップアドバイザー等)(41.9%) | 無料Wi-Fi(61.5%) |
2位 | 自国の親族・知人(32.1%) | 交通手段(55.3%) |
3位 | 宿泊施設ホームページ(30.6%) | 宿泊施設(35.8%) |
4位 | 動画サイト(YouTube/土豆網等)(25.0%) | 観光施設(35.6%) |
5位 | 日本在住の親族・知人(22.1%) | 飲食店(32.7%) |
訪日オーストラリア人の訪日旅行前の情報源は口コミサイトやホームページ、動画サイトなどインターネットを利用して日本旅行に関する情報を得ていることが分かります。また親族や知人から情報を得るという人も多いようです。
注目すべきなのは、訪日旅行中に役に立った情報として宿泊施設の割合が観光施設の割合よりも上回っている点です。訪日滞在費の中で宿泊費に一番お金をかける訪日オーストラリア人ならではの特徴と言えるでしょう。
イタリア | ||
訪日旅行前 | 訪日旅行中 | |
1位 | 旅行ガイドブック(34.3%) | 交通手段(57.5%) |
2位 | 口コミサイト(トリップアドバイザー等)(30.1%) | 無料Wi-Fi(42.1%) |
3位 | 自国の親族・知人(24.1%) | 飲食店(39.8%) |
4位 | 動画サイト(YouTube/土豆網等)(23.7%) | 宿泊施設(27.7%) |
5位 | 個人のブログ(21.1%) | 観光施設(25.6%) |
それに対し、訪日イタリア人の訪日旅行前の情報源として旅行ガイドブックが1位にランクインしています。パソコンやスマートフォンなどのデジタル機器の普及により以前に比べ紙媒体の情報の需要は減少傾向にありますが、訪日イタリア人にとって紙媒体での情報源はまだまだ重要なようです。
また、訪日旅行中に役に立った情報もオーストラリアと比べると順位に違いがあり、訪日イタリア人にとって交通手段の情報が非常に重要であることがわかります。
これらの情報から考えられることとして、オーストラリアへはインターネットを使ったPRを、イタリアへはガイドブックなどの紙媒体を使ったPRをすることが効果的であると言えるのではないでしょうか。
また、訪日旅行中に訪日観光客が求めている情報へアクセスする際にいかに不便さを感じさせないかが、インバウンド事業をより発展させるためのカギとなるでしょう。
まとめ
訪日オーストラリア人と訪日イタリア人の旅行動向を比較分析したところ
- オーストラリアとイタリアともに訪日観光客数は年々増加しており、滞在日数も長く、一人当たりの消費額が全体に比べ非常に高いため、インバウンド事業にとって重要なマーケットである。
- 特にオーストラリアは一人当たりの消費額が第一位と非常に魅力的なターゲットである。
- オーストラリアは何度も日本を訪れる観光客の割合が高いため、イタリアに比べ、よりインバウンドプロモーションの効果に期待が持てる。
- オーストラリアとイタリアで旅行目的や観光客の属性などで共通する点もあるが、ハイシーズンやリピーター数、情報収集源に大きな違いがみられる。
- より効果的なインバウンドプロモーションを実施するためにはターゲットとなる国の特徴やパターンを理解することが重要である。
以上5点がオーストラリアとイタリアのインバウンドを考える際に重要な要素になると言えます。
オーストラリアとイタリアは今後日本のインバウンド事業の重要なターゲットとなっていくことが予想されます。より日本の魅力を多くの外国人に知ってもらうためにこういった分析はとても価値のあるものでしょう。
オーストラリアでのインバウンドプロモーションに関するご不明な点やご質問などございましたら、お気軽にお問い合わせください。