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オーストラリアとスペインの訪日データ比較

By SCP編集部 in ツーリズムデータ |

日本に来る外国人観光客と言えば近隣の中国・韓国・台湾と言ったアジア圏からが目立ちますが、近年では欧米豪圏からの訪日外国人観光客が急激に増加しています。

その中でもオーストラリアは一人当たりの旅行予算が一番多く日本での滞在期間も長くリピーターの割合も高いことから、オーストラリアは非常に魅力的なインバウンド市場と言えます。

その一方で、スペインからの訪日観光客数の増加も著しく、ヨーロッパ諸国の中ではなんとスペインは旅行消費額が一番高い国なのです。この結果はスペインへのインバウンドプロモーションの重要性を明示しており、今後目を離すことができない重要なターゲットです。

本記事では、訪日オーストラリア観光客と訪日スペイン観光客の旅行動向を比較分析し、それぞれの特徴を見ていきます。

 

 

訪日観光客数の比較

観光客数の推移

始めに訪日オーストラリア人と訪日スペイン人それぞれの観光客数の推移を見ていきます。

出典:日本政府観光局(JNTO)

オーストラリア、スペインともに訪日観光客数は増加傾向にあります。特にオーストラリアの増加の割合は著しく、2018年には年間50万人以上のオーストラリア人が日本を訪れました。

それに対し、スペインは年々増加傾向にあるもののオーストラリアと比べるとその差は歴然です。ヨーロッパ圏内で比べてみると、イギリス、フランス、ドイツ、イタリアに続き第5位にランクインしていますが、第4位のイタリアと約40万人もの差があります。

しかし、2018年10月からスペインへの直行便が週3日から週5日に増えたため、今後の訪日スペイン人の増加に期待ができるのではないでしょうか。

性別比較

次に2018年の訪日オーストラリア人と訪日スペイン人の性別の割合を比較していきます。

出典:平成30年観光庁「訪日観光客消費動向調査」

オーストラリア、スペインともに男性の割合の方が高いことが読み取れます。特に訪日スペイン人の約7割が男性という結果になりました。

世界の平均は男性49.5%、女性50.5%と割合はほぼ同じで、むしろ男性の割合の方がやや少なくなっています。これらの結果はオーストラリア、スペイン特有の傾向が見えてきます。

年代別比較

年代別による訪日オーストラリア人と訪日スペイン人の違いを見ていきます。

出典:平成30年観光庁「訪日観光客消費動向調査」

訪日オーストラリア人の傾向として、20代の観光客の割合が一番高く、その後30代、40代、、、と徐々に割合が低くなっていく傾向が読み取れます。その一方で訪日スペイン人は30代の割合が一番高く、20代、40代と続きます。50代以上の訪日スペイン人の割合は急激に下がり、70代以上は0%という結果になりました。

今後の課題として、50代以上の訪日スペイン人観光客数を上げるインバウンドプロモーションをしていくことが挙げられるでしょう。

 

 

訪日観光客の消費動向

次に、訪日観光客の日本での過ごし方や滞在費用を詳しく見ていきましょう。

滞在期間

訪日オーストラリア人と訪日スペイン人の滞在期間はどれくらいなのでしょうか。

 

出典:平成30年観光庁「訪日観光客消費動向調査」

グラフを見ると、オーストラリア、スペインともに7~13日の滞在の割合が一番高いことがわかります。両国とも8割以上が1週間以上滞在していることが特徴的です。

また、訪日スペイン人の平均泊数は14.3泊で、訪日オーストラリア人の平均拍数は13.3泊と訪日スペイン人の方が滞在日数が長い傾向にあることがわかります。

訪日外国人観光客の平均泊数は9.0泊ということから、オーストラリア、スペインともに平均よりも長く日本に滞在する傾向にあり、とても魅力的なターゲットであると言えます。

滞在目的

オーストラリア スペイン
1位 日本食を食べること(85.4%) 日本食を食べること(71.3%)
2位 自然・景勝地観光(60.1%) 自然・景勝地観光(56.8%)
3位 日本の歴史・伝統文化体験(54.9%) 温泉入浴(51.8%)
4位 ショッピング(54.4%) 日本の歴史・伝統文化体験(48.6%)
5位 繁華街の街歩き(52.4%) 旅館に宿泊(47.4%)

出典:平成30年観光庁「訪日観光客消費動向調査」

表を見ると、オーストラリア、スペイン両国とも「日本食を食べること」が一番人気であることがわかります。また、「自然・景勝地観光」と回答した人も半分以上おり、日本ならではの自然の風景が訪日外国人観光客にとって日本旅行をする際に欠かせないものであることがわかります。

スペインのランキングを見てみると3位に「温泉入浴」、5位に「旅館に宿泊」と訪日スペイン人の中で日本の旅館が人気であることが特徴的です。また、6位は「日本の日常生活体験」と続いており、訪日スペイン人はショッピングや繁華街の街歩きといった買い物よりも日本の文化や生活に興味があることがわかります。

その一方で、オーストラリアのランキングは買い物などの「モノ消費」と日本文化体験といった「コト消費」両方が混在しており、オーストラリアに対するインバウンド事業を考える際、モノ消費とコト消費の両方のアプローチをする必要があると言えるでしょう。

滞在目的を比べてみるとオーストラリアとスペインでは日本滞在目的に違った傾向があることがわかります。このようにターゲットとなる国の滞在目的を把握することでより、効果的なインバウンドプロモーションの戦略を練ることができます。

一人当たりの消費額

次に訪日オーストラリア人と訪日スペイン人の一人当たりの消費額の違いを比べてみましょう。

出典:平成30年観光庁「訪日観光客消費動向調査」

まず、全体と比べるとオーストラリア、スペインともに一人当たりの消費額が高いことがわかります。特に、訪日オーストラリア人の一人当たりの旅行支出は242,041円と訪日外国人観光客の中で最も高い消費額になっています。その一方で訪日スペイン人の一人当たりの旅行支出は237,234円とオーストラリアに続き第2位であり、こちらも非常に高い消費額になっています。

訪日オーストラリア人は宿泊環境を重視し、宿泊費の平均は約10万円で、2番目に高い割合を占める飲食費の約2倍もかかっています。訪日スペイン人のグラフからも似たような傾向を読み取ることができ、両国とも日本にとって重要なインバウンドプロモーションのターゲットであることがわかります。

ハイシーズン比較

インバウンドプロモーションを行う際、どの時期にどこの国から外国人観光客が来るのかを知ることができれば、より効果的なインバウンド事業を展開することができます。

出典:JNTO 日本の観光統計データ「2018年月別国・地域ごとの訪日外客数の推移」

グラフを見るとオーストラリアとスペインのハイシーズンが対照的であることが分かります。6~10月の夏・秋シーズンに多くの訪日スペイン人が訪れるのに対し、オーストラリアではウインタースポーツを楽しむことができる12~4月の冬の時期の日本が人気です。

特に訪日スペイン人は8月に日本を訪れる傾向にあり、8月に向けてスペインへインバウンドプロモーションを行うことが効果的であると言えます。

オーストラリアは冬のハイシーズンに対して夏の訪日観光客数が非常に少ないという問題があります。したがって、オーストラリア人が夏に日本を訪れたくなるようなPR方法を考えていくことが必要になります。

 

 

訪日旅行後の影響

ここでは、訪日旅行後の外国人観光客の実際の感想やリピーター数を比較していきます。

満足度調査

出典:平成30年観光庁「訪日観光客消費動向調査」

日本旅行後の満足度についてアンケート調査を行ったところオーストラリア、スペイン両国とも80%以上が「大変満足」と回答しています。特にスペインのグラフを見ると、なんと92.5%もの人が「大変満足」と回答しており、とても満足度が高い結果となっています。

日本への再訪意向

 

出典:平成30年観光庁「訪日観光客消費動向調査」

日本への再訪意向に関するアンケートでは訪日スペイン人の約8割が「必ず来たい」、約1.3割が「来たい」と回答しました。その一方で、訪日オーストラリア人の約7割が「必ず来たい」、約2割が「来たい」と回答しました。オーストラリアに比べ、スペインの方が強い訪日再訪意向を持っていることがデータから読み取れます。しかしオーストラリア、スペイン両国とも9割以上が日本への再訪意向を示しており、日本のインバウンド事業の非常に大切なターゲットであると言えるでしょう。

リピーター

出典:平成30年観光庁「訪日観光客消費動向調査」

先程の調査結果で訪日オーストラリア人、訪日スペイン人共に日本への再訪意向が非常に高いことが分かりました。では実際のリピーター数はどのような状況なのでしょうか?

グラフを見ると日本を2回以上訪れている訪日オーストラリア人のリピーターが41.3%であるのに対して、訪日スペイン人のリピーターは22.3%に留まっています。再訪意向調査では訪日スペイン人の方が訪日オーストラリア人よりも「必ず来たい」と回答した割合が高かったにも関わらず、実際のリピーター数はオーストラリアが大きく上回りました。

その理由として、スペインから日本への移動時間の長さや旅行費用の高さ、文化の大きな違いがあげられるのではないでしょうか。マドリード・成田間の直行便の数が増えたとはいえ、オーストラリアへの直行便の数に比べたらその数はまだまだ少ないです。また、オーストラリアは多文化主義社会であり多くの日系企業や日本のレストランやショップを町中で見ることができ、オーストラリア人はスペイン人に比べ日本の文化や環境に慣れているといえます。

今後スペインへのインバウンドプロモーションを行うにあたり、訪日スペイン人のリピーターの育成が大きな課題となります。

情報収集源

最後に、日本を訪れる前に訪日オーストラリア人と訪日スペイン人が実際にどのようなところから情報を得ているのか、また訪日旅行中にどのような情報が役に立ったのかを見てみましょう。

オーストラリア
訪日旅行前 訪日旅行中
1位 口コミサイト(トリップアドバイザー等)(41.9%) 無料Wi-Fi(61.5%)
2位 自国の親族・知人(32.1%) 交通手段(55.3%)
3位 宿泊施設ホームページ(30.6%) 宿泊施設(35.8%)
4位 動画サイト(YouTube/土豆網等)(25.0%) 観光施設(35.6%)
5位 日本在住の親族・知人(22.1%) 飲食店(32.7%)

出典:観光庁「訪日外人の消費動向 報告書(第2編)」

訪日旅行前の情報源として、約半分の訪日オーストラリア人が口コミサイトを参考にしていることがわかります。日本が提供している情報ではなく、実際に行ったり住んだりした経験がある人から情報を得ていることが特徴的です。訪日旅行中に役に立った情報として半分以上の訪日観光客が「無料Wi-Fi」「交通手段」と回答しました。

スペイン
訪日旅行前 訪日旅行中
1位 個人のブログ(45.7%) 交通手段(67.9%)
2位 動画サイト(YouTube/土豆網等)(33.0%) 無料Wi-Fi(53.2%)
3位 旅行ガイドブック(25.2%) 宿泊施設(36.4%)
4位 自国の親族・知人(22.2%) 飲食店(34.5%)
5位 日本在住の親族・知人(20.7%) 観光施設(33.6%)

出典:観光庁「訪日外人の消費動向 報告書(第2編)」

スペインのアンケート結果にもオーストラリアと似たような傾向が見られます。しかしオーストラリアと異なる点として、第3位に「旅行ガイドブック」がランクインしていることが挙げられます。
つまりスペインにはインターネットでのインバウンドプロモーションだけでなく旅行ガイドブックといった紙媒体でのプロモーションも効果的であると言えるでしょう。また、訪日旅行中に役に立った情報として半分以上が「交通手段」「無料Wi-Fi」と回答しました。

注目すべきはオーストラリアとスペインどちらの国も訪日旅行中に役に立った情報として「交通手段」と「無料Wi-Fi」が挙げられている点です。東京や大阪などの主要都市はこれらの情報を簡単に手に入れることができますが、地方の観光地はこれらの情報を手に入れるの一苦労であるケースが多々あります。したがって地方の観光地でのインバウンド事業を展開するにあたり交通手段や無料Wi-Fiの情報の整備は必要不可欠であると言えるでしょう。

 

 

まとめ

訪日オーストラリア人と訪日スペイン人の旅行動向を比較分析したところ

  • 年々訪日オーストラリア人と訪日スペイン人の数が増加している。特に訪日オーストラリア人の増加が顕著であり今後さらなる訪日オーストラリア人の増加に期待ができる
  • 訪日オーストラリア人、訪日スペイン人ともに平均泊数が全体平均に比べて長く、一人当たりの消費額も非常に高いため非常に魅力的なインバウンドプロモーションのターゲットである。
    特にオーストラリアは一人当たりの消費額が全体の第一位である。
  • オーストラリア、スペイン共に日本旅行後の満足度、訪日再訪意向の割合が非常に高いため今後リピーターの育成をすることがインバウンド事業の発展に効果的である。
  • 訪日オーストラリア人と訪日スペイン人でハイシーズンや日本でやりたいことに大きな違いがあるため、それぞれに合ったインバウンドプロモーションを行う必要がある。

以上4点がオーストラリアとスペインのインバウンドを考える際に重要な要素になると言えます。

オーストラリアとスペインはインバウンドプロモーションのターゲットとして重要かつ魅力的あり今後より一層インバウンドプロモーションに力をいれていきたい相手です。

オーストラリアでのインバウンドプロモーションに関するご不明な点やご質問などございましたら、お気軽にお問い合わせ下さい。

 

この記事を書いた人:大倉 奈央子
静岡県出身。金沢大学国際学類にて日本語教育を専攻中の大学3年生。現在はシドニー工科大学にて交換留学中、観光学やマーケティングについて学んでいる。趣味は写真・旅行・カフェの朝食巡り。

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