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訪日観光プロモーションに関する予算の設定方法

By SCP編集部 in オーストラリア基本情報

訪日インバウンド事業の誘客ターゲットとして注目を集めているオーストラリアですが、オーストラリア人向けの商品やサービスを売り込むには、オーストラリアでの効率的なプロモーションの展開が必要です

日本政府、観光庁の2020年度予算のうち国際観光客税財源として510億(前年比の1.07倍)を充当しオーストラリアからの誘客を強化する発表ました。さらに、来年の東京五輪開催に伴い訪日インバウンドの盛り上がりはますます大きくなっていくことでしょう

では、戦略的にプロモーション予算を立てるにはどのようにすればいいのでしょうか。また、オーストラリアと日本国内でのプロモーション予算はどのように違ってくるのでしょうか。

 

国別の予算設定をする際にオーストラリアに予算を多く設定すべき理由

限られた予算の中で、効果的に商品・サービスを広めるためには、的確にターゲットをしぼり、最適なプロモーションを計画する必要があります。そのためには、まず訪日オーストラリア人の動向について知必要があります。

観光庁が発表した『訪日外国人消費動向調査』(2019年速報値)の国籍別での「訪日外国人一人当たりの旅行支出」では、オーストラリアは24万円を超え、中国を抑えてトップでした。また宿泊費、飲食費の面でも、支出額が最も高いという結果でした。

長期滞在旅行者として知られているオーストラリア人ですが、2019年の調査によると90%を超える旅行者が7日から20日間日本に滞在しており、他の国からの訪日旅行者と比べても長期の傾向にあります。

また、2020年のデータによると、オーストラリアの総人口が約2,550万人に対して約1,106万人(約2.27人に1人)が海外旅行へ行っています同年のオーストラリア人の訪日旅行者数は約55万人

このように、「滞在期間が長い」、「旅行中の支出金額が多い」といった傾向をもつオーストラリア人旅行者を積極的に誘致する理由がここにあります。

 

 

予算の立て方

決められた予算の中でプロモーションをする場合

プロモーション予算を事業の決められた全体予算のなかで設定するにはいくつか方法ありますが、ここでは代表的な支払可能額法売上高比較法競争者対抗法を紹介します

支払可能額法

貸借対照表や損益分岐点の分析をもとにプロモーションの上限予算を設定する方法です。あらかじめプロモーションにいくら掛けるかを決定し、その額を超えないよう調節しながらプロモーションを実施します

売上高比率法 過去の売上高や利益高、あるいは将来の見込み売上高のある一定の割合をプロモーション費用として設定する方法です。
競争者対抗法

業界の競合他社または先導的企業のプロモーション費用や売上高比率などを参考にして予算を設定するやり方です。これには自社とは必ずしも同じではない競合他社のプロモーション投資額を参照にするということを念頭に置いて予算を設定する必要になります

目標数値に合わせた予算設定をする場合

一方で、予算を前提としてプロモーション戦略を考えるのではなく、掲げた目標に合わせた予算を設定する場合もあります。

目標基準法はプロモーション目標を達成するための費用を算出し、それに必要な広告費の支出の細目を見積って総額を算定する方法です。手元にあるデータや類似品のデータから仮説を立てて広告費を設定します。

目標基準法の利点は、支出額、露出度、試用率、固定客数などの関係を明確に表せることです。それらの数値から売り上げ、認知度向上などの目標達成に向けて、目標指標を判断することが重要です。

また、予算設定する際に理解しておきたいのが、オーストラリアでプロモーションする媒体やメディア選定です。なかでもオーストラリアで特に注目を集めているのが、オンライン広告。

リサーチ会社のスタティスタ(Statista)の2020年の調査報告によると、オーストラリアでは検索連動型広告、バナー広告、ソーシャルメディア広告、クラシファイド広告などのオンライン広告への年間投資は730億円(前年比+7.1%)と予想されています。さらに、個人の平均投資は約3万円(前年比+5.6%)であり、オンライン広告を使ったプロモーションは重要度を増しています

出典:Statista 

オンライン広告のなかでも最も高い検索連動型広告とはユーザーが検索エンジンに入力した検索キーワードに連動して、画面に表示され広告のことで、特定のターゲット、広告の掲載スケジュールや配信地域などを細かく設定できます。また、広告の表示回数やコンバージョン数(購入や予約などの成果を得られた回数)などの詳細も把握することが可能です。

広告費用のシステムとして、ユーザーがその広告をクリックした時だけ発生しますが、1クリックあたりの単価や広告予算の上限は広告主側が設定できます。設定後でも効果の薄い広告を改善したり、期間などを限定したり変更することできます。

日本からオーストラリアへプロモーションする場合の予算追加項目

商品やサービスのプロモーションをオーストラリア現地で実施する際に、日本国内でのプロモーションでは必要のなかった費用が新たに発生することがあります。

オーストラリアのイベントなどへ出展する際に予算の立案として必要である主要な項目とそれに伴うオーストラリアの物価についてご紹介します。

予算内訳項目の把握

オーストラリアでのイベントやセミナーへの出展に関わる主な費用です。

  • 出展料、スペース料
  • 出張旅費(現地渡航費、宿泊費、食費、現地での交通費、通信費)
  • 輸送費
  • 運営費(通訳、アシスタントの雇用費)
  • 関税
  • 保険(海外旅行保険、出品物への保険)
  • 調査費(事前の市場調査、アンケート調査費など)
  • そのほか(セミナー開催費、記録用映像製作費など)

オーストラリアでのイベントにてプロモーションを実施する際には出品・展示に関わる日本から輸送することが考えられます。その場合は商業用運賃関税運送保険などが必要になるでしょう

輸送費は商品の運搬や保管にかかるすべての費用を指します(コンテナ代、出品物の保管費用、運送業者の費用や仲介業者の費用が含まれます)

出品・展示物の輸送方法としては、海上運送、航空運送、国際宅配便などがあり、出品物や予算、期間などを踏まえて検討します。ただし一般的には会社に依頼するのが安全で確実でしょう。また、商品をオーストラリアへ届ける際に、予期せぬことが起こる可能性を考慮して、輸送する荷物に保険をかける(運送保険)のが無難でしょう

オーストラリアは、物品の一時輸入のための通関条約(ATA条約)の職業用具条約、展覧会条約、商品見本条約すべてに加盟しています。そのため、日本からの物品の一時輸入は通関手帳であるATAカルネを利用することが可能です。使用しない場合でもオーストラリア国内で消費、販売、譲渡、賃貸、破棄しない限り、輸入時の関税、財・サービス税は免除されます。ただし、オーストラリアにて展示品を販売する場合には、オーストラリアの税関に関税とその他諸税を支払わなければなりません。

また、展示品販売場合は関税がかかりますがオーストラリアの関税率は商品によって異なります。販売の際には品目ごとに関税の確認が必要です。

 

物価の勘案

日本とオーストラリアでは、物価や交通システムが異なります。

オーストラリア現地でのプロモーションをご検討される際は、広告宣伝費用や商品の輸送以外にも、現地での出資も含めて予算を立てる必要があります。本項目では、滞在期間中に予算として必要とされる、外食費と現地での交通費をご紹介します。

外食費は、ファーストフード店では$3〜$10の価格帯から始まり、レストランでは日中だと$15〜$30、夜になると$30〜$70といった価格帯です。

シドニー公共交通機関を利用する場合にはICカード(Opalカード)を使うのが便利です。このカードを使えば平日の日の交通費の課金の上限$16.10なので、利用の度合いによってはお得です。シドニーでは電車とバスが一般的で、距離によって運賃が異なります。

地下鉄・電車

距離 大人(Opalカード) 大人(片道チケット)
0-10km $3.61(off-peak $2.52) $4.50
10-20km $4.48(off-peak $3.13) $5.60
20-35km $5.15(off-peak $3.60) $6.40
35-65km $6.89(off-peak $4.82) $8.40
65+km $8.86(off-peak $6.20) $10.80

バス

距離 大人(Opalカード) 大人(片道チケット)
0-3km $2.24 $2.90
3-8km $3.73 $4.60
8+km $4.80 $6.00

トラム

距離 大人(Opalカード) 大人(片道チケット)
0-3km $2.24 $2.90
3-8km $3.73 $4.60
8+km $4.80 $6.00

【公式ウェブサイト】Transport NSW

 

公共交通機関がカバーしていない場所への移動や、深夜の場合はタクシーを使うこともあります。シドニーは、いくつかのタクシー会社がありますが、料金はニューサウスウェールズ州内で定めらておりメーター制です。初乗りは$3.6~、1キロごとに$2.19加算されます。ただし、ハーバーブリッジやハーバートンネルなどの部有料道路を通る場合や、曜日・時間帯によっては追加料金が加算されます。

【公式ウェブサイト】NSW Taxi Fares Order 2018

 

 

オーストラリアのプロモーションにかかる予算例

オフラインの場合

オフラインの主要なメディアには新聞、テレビCM、交通広告などがあります。その他にも、オーストラリア現地へ赴き展示会やイベントへ参加することもプロモーション施策として挙げられます。

商品やサービス認知を向上させる目的のイベントもあれば、既存客の囲いこみや顧客満足の向上を目的とするものもあります。

オーストラリア人の旅行出発前の旅行情報源ランキングでは、1位口コミサイト、2位に宿泊施設ホームページ、3位親族・知人という結果となっています。

旅行情報源ランキング
◆旅行出発前◆ ◆旅行出発後◆
順位 情報源 回答率 順位 情報源 回答率
口コミサイト (トリップアドバイザーなど) 45.1% インターネット(スマートフォン) 76.8%
宿泊施設ホームページ 33.6% 観光案内所(空港除く) 38.2%
自国の親族・知人 33.5% 宿泊施設 31.7%
動画サイト(YouTubeなど) 27.5% インターネット(パソコン) 30.1%
個人のブログ 28.3% 空港の観光案内所 23.3%
旅行ガイドブック 20.3% インターネット(タブレット) 18.3%

 

 

展示会やイベントなどへ参加する際の予算の例をご紹介します。

食品・農産物についてのプロモーションの予算例

シドニー日本産農産物・食品輸出商談会の場合

主催:日本貿易振興機構 (ジェトロ)
日程:9月
商談相手:オーストラリアの輸入卸業者、ケータリング業者、レストラン関係者
対象商品: 日本産和牛、水産物・水産加工品、調味料、製菓
主催者側提供サービス: 会場費、共用設備、通訳手配、バイヤー向け広報資料作成など

 

無形商材(地方自治体、宿泊施設、日本文化)のプロモーションの予算例

オーストラリアでの一般消費者向けの旅行博や観光セミナーについては、複数の団体の共同出展にとなる場合が多く、企業や地方自治体などで出展費用は変動します。

Travel Expoの場合

日程:2月
募集企業:インバウンド促進団体、商業施設、運輸産業、宿泊リゾート施設、芸術文化施設、地域産業振興事業体、物産品販売事業体など
主催者側提供サービス:資料設置カウンターデスク3台、電源口1つ、ストックスペース

 

オンラインの場合

オーストラリアのネット普及率は87%オーストラリア人が利用する主要検索エンジンは、グーグル(Google)が95%という高いシェアを獲得しています2019年5月現在

日本の場合は56%がグーグル、ヤフー(Yahoo!)が54%と続きます(2019年12月現在)

また、オーストラリア人の1日ソーシャルメディア利用時間は平均約153分です(2012年には90分でした)。利用時間は年々増加しており、オンライン広告はオーストラリア市場のプロモーションには欠かせないツールです。

オフラインでの広告とは違い、日本にいながらオーストラリアへのプロモーションが可能オンラインの予算の例をご紹介します。

ターゲットを絞った広告の予算例

ターゲットを絞った広告をオンライン上に掲載する施策の代表格にグーグル広告があります。利用者が商品やサービスを検索しているタイミングでプロモーションを打ち出せるので、問い合わせなどの成果につながる可能性が高くなります。また配信地域を絞ることができることも魅力のひとつです。

グーグル広告は広告掲載の目標と金額を設定でき、変更も可能です。

その他にもオーストラリア人の利用度の高いフェイスブック(Facebook)やインスタグラム(Instagram)を用いて年齢や性別、興味関心などに合わせたプロモーションも効果的です。

目標予算:¥90,000

月間 オンライン広告予算例
媒体 内訳 合計
ウェブサイト グーグル広告 ¥80,000
SNS フェイスブック広告 ¥6,000
インスタグラム広告
 合計 ¥86,000

 

現地メディアを含めた広告の予算例

前述のグーグルでの広告やSNS以外にも、現地のメディア用いた広告の方法もあります。現地メディアが持つ影響力を活用し、より多くのオーストラリア人に日本の魅力を伝えることができます。

目標予算:¥150,000

月間 現地メディアを含めた広告予算例
媒体 内訳
現地メディア A 制作料
出稿
合計 ¥8,000
現地メディア B  制作料
出稿
合計  ¥74,000
その他  実施と運用
データ化
 合計  ¥82,000〜

 

 

オーストラリア人向けプロモーションの広告予算の立案について

オーストラリア向けのプロモーション予算を考える場合、オフラインかオンラインかに関わらず、国内プロモーションとは異なる予算の管理や考え方が必要です

この他にもオーストラリア人へのプロモーションには、オーストラリアでの市場分析オーストラリア現地での法や制度有効なメディアの違いなど留意しなければならない点が多々あります。詳しくはオーストラリア市場で効果的なウェブメディアご参照ください

オーストラリア人の利用度の高いサービスやメディア媒体、オーストラリアでのイベント参加に関しましては、お気軽にご相談ください。

 

出典:トラベルボイス訪日外国人消費動向調査観光庁 訪日外国人の消費動向worldometerai日本政府観光局(JNTO)日豪EPA 関税割当品目一覧日本政府観光局JNTO 統計データ 、JNTRO(日本貿易振興機構)Two Cents 、nielsenBroadbandSearch

 

この記事を書いた人:宮川美潮

東京都出身。情報通信系商社にて営業職を務めていた際に、マーケティングに興味を抱いたこと、また大学時代に学んでいた中国語よりも英語の必要性を強く感じ来豪。現在シドニーのTAFE(職業訓練校)にてマーケティングコースを受講中。

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