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訪日オーストラリア人観光客のインバウンドデータまとめ2020年

By SCP編集部 in ツーリズムデータ

近年、大きな盛り上がりを見せている日本のインバウンド市場ですが、中国・韓国・台湾などアジア圏からの旅行客が目立つ一方で、オーストラリアからの旅行者も年々増えてきているのをご存知ですか?

さらにインバウンド市場にとってはうれしいことに、オーストラリア人の一人あたりの旅行予算は中国に次いで2番目に多いのです(2019年はオーストラリアがトップ)。

そんな、インバウンドのターゲットとしてはかなりの優良市場とも言えるオーストラリア人はいったいどんな旅行をしているのでしょうか。彼らの海外旅行事情データとともに、訪日旅行の現状を踏まえ、今後のインバウンド対策におけるポイントを紐解きます。

オーストラリア人の海外旅行事情

オーストラリア人の海外旅行者数推移

出典:日本政府観光局(JNTO )統計データ

オーストラリア人の海外旅行者数は毎年増加しており、彼らの旅行熱は年々ヒートアップしています。

2018年のオーストラリアの人口が約2,517万人なので、じつに約2.27人に1人が海外旅行していることになります。

オーストラリアの海外旅行支出額

出典:日本政府観光局JNTO  統計データ

2018年のオーストラリア人旅行者の海外旅行支出額(旅行先の国へ支払う消費額)は約599億豪ドル(1米ドル=1.63豪ドル算出)、日本円でおよそ4兆円 *です。上記の推移グラフを見ると2014年に一度支出額が減少したものの、2015年以降は回復し増加し続けているのがうかがえます。

UNTWO 世界観光機関が出している旅行支出ランキングでは、2017年においてオーストラリアは毎年6位にランクインしており、旅行需要が高い国と言えます。

*1豪ドル=66.8円で算出。

※本数値に国際旅客運賃は含まれない。

オーストラリア人は何月に海外旅行へ行っているのか?

出典:AFTA Travel Trends Report 2019

年間を通じて毎月一定数の人が海外へ出かけています。中でも、10月から12月にかけて海外旅行に行く人が多いことが分かります。

これは全般的に、オーストラリアのスクールホリデーが大きく関係しています。(スクールホリデーの詳しい情報についてはこちら⇒「オーストラリアにおける長期のスクールホリデー制度と旅行の関連性」)。オーストラリアでは子どもを旅行に連れて行き、新しい場所や体験に触れさせることは教育の一環と考えている人が多く、スクールホリデーに絡めて長期休暇を取り、海外で長期滞在をする傾向があります。

オーストラリア人の人気海外旅行先ランキング:訪日旅行の競合はどこか?

2018年 オーストラリア人の海外旅行先ランキング

  国名
旅行者数(人)
1位 ニュージーランド 1,435,900
2位 インドネシア 1,283,600
3位 アメリカ 1,091,800
4位 イギリス 665,500
5位 中国 592,200
6位 タイ 571,900
7位 日本 465,500
8位 シンガポール 413,600
9位
インド 393,900
10位
フィジー 340,800

出典:AFTA Travel Trends Report 2019

上位国への旅行者数と大きく開きがあるものの、日本は7位につけており、オーストラリア人の人気の旅行先のひとつと言えます。特に日本は昨年の2017年の海外旅行先ランキングと比較して16.3%の伸びを見せており、今後も訪日オーストラリア人の増加が期待できます。

オーストラリア人旅行者の年齢別データ

出典:Australian Government

海外旅行に出かけるオーストラリア人の年齢層で一番多いのが45~54歳。次いで35~44歳、55~64歳と、中高年層が多いという結果が出ています。中高年は若年層と比較して経済的に余裕があるので、彼らをターゲットとするサービスの提供はインバウンド対策において有効だと考えられます。

海外旅行における滞在期間

出典:Australian Government

多くが「1ヶ月未満」ですが、1ヶ月以上滞在する人が旅行者全体のうち約2もいるのが特徴です。オーストラリアでは比較的長い休暇を取って海外旅行に行くのが一般的で、長期的な滞在に比例して旅行中の支出も多くなることから、各国におけるインバウンド市場に大きく影響を与えていることが考えられます。

オーストラリア人の海外旅行事情まとめ

  • 伸び続ける海外旅行者数に比例して一人あたりの支出額も増加傾向にある。
  • 中高年がボリュームゾーン。
  • スクールホリデーに合わせて年末に旅行に行く人多数。

 

 

訪日オーストラリア人のインバウンドデータ

オーストラリア人は日本に何人来ている?

出典:日本政府観光局(JNTO)統計データ

ここ5年間、訪日オーストラリア人観光客数は伸び続けており、2014年においては30万2,656人だった訪日オーストラリア人観光客数は、2019年には2倍以上となる62万1,771人を記録しています。

訪日オーストラリア人のインバウンド消費額推移

出典:観光庁 訪日外国人消費動向調査

訪日数の増加に比例して消費額も増加しています。オーストラリア人のインバウンド市場は年々拡大してきていると言えます。

訪日オーストラリア人一人あたりのインバウンド消費額推移

出典:観光庁 訪日外国人消費動向調査

インバウンド市場におけるオーストラリア人一人当たりの消費額は、2017年にいったん減少したものの、2018年、2019年と2年連続で増加し続けています。全体的に2016年以降は減少傾向にある中で、安定的に全体平均額の約1.5倍の金額を使っているオーストラリア人は、インバウンド対策次第でリターンを大きく得られるターゲットと言えます。

月別訪日オーストラリア人

出典:日本政府観光局(JNTO)統計データ

12月~1月の訪日数が突出して多いことが分かります。この時期はオーストラリアの夏季休暇期間にあたり、日本でスキー・ホリデーを楽しむ旅行スタイルの定着が理由として挙げられます。オーストラリア人のインバウンドを考える上で、この期間での招致を重点的に行うとともにその他の時期についても工夫することで新たなインバウンドプロモーション戦略に繋がる可能性があります。

4月は欧米諸国同様、イースター休暇が春季の訪日に繋がった可能性が高いです。

オーストラリア人の訪問先 ー 都道府県ランキング

都道府県 宿泊人数(人) 都道府県 宿泊人数(人)
1位 東京 851,430 24位 熊本 5,130
2位 京都 272,950 25位 宮城 5,050
3位 大阪 236,340 26位 岩手 4,980
4位 北海道 141,750 27位 栃木 4,920
5位 千葉 115,990 28位 鹿児島 4,610
6位 長野 93,870 29位 青森 4,600
7位 広島 74,160 30位 大分 4,090
8位 神奈川 54,000 31位 滋賀 3,830
9位 岐阜 35,870 32位 山形 3,490
10位 石川 32,070 33位 群馬 3,410
11位 山梨 23,160 34位 愛媛 2,550
12位 愛知 22,350 35位 三重 2,250
13位 沖縄 16,740 36位 埼玉 2,020
14位 福岡 15,830 37位 秋田 1,990
15位 兵庫 14,500 38位 徳島 1,850
16位 新潟 13,840 39位 富山 1,820
17位 静岡 9,070 40位 茨城 1,800
18位 和歌山 8,420 41位 佐賀 1,280
19位 岡山 7,440 42位 高知 1,240
20位 奈良 6,840 43位 島根 1,220
21位 福島 6,700 44位 宮崎 960
22位 長崎 5,880 45位 鳥取 780
23位 香川 5,730 46位 山口 680
47位 福井 610

出典:日本政府観光局(JNTO)統計データ

2018年にJNTOが行った調査によると、東京・京都・大阪の3県に続き、北海道・長野などのスキー場が豊富な県が上位にランクインしています。東京の宿泊者数構成比率は40%、京都は13%と主要都市での宿泊比率は高い一方で、訪日期間中に各地方へ足を延ばし宿泊するオーストラリア人もいるので、主要都市からどのようにオーストラリア人を誘致するかが各地方でのインバウンド戦略の課題と言えます。

※各県、従業員10名以上の宿泊施設からの回答収集による調査データ。

年齢・性別構成比

出典:日本政府観光局(JNTO)統計データ

すべての年代で男性の訪日者割合が女性訪日者割合を上回っています。

年代別でみると、訪日オーストラリア人旅行者のうち、一番多いのが男女共に20代で男性22.9%、女性14.7%と、若年層が多くを占めています。現時点で、海外旅行先としての日本のニーズは若者にあると言えます。

ただし、既述のとおり海外旅行に出かけるオーストラリア人全体では40代以上が約6割とかなりの割合を占めているので(1.6  オーストラリア人旅行者の年齢別データ)、中高年層にどうアプローチし、誘致できるかが、今後の訪日オーストラリア人数を伸ばすうえで鍵となるでしょう。

訪日オーストラリア人は誰と来ているのか?

出典:観光庁 訪日外国人の消費動向

「夫婦・パートナー」が一番まです。次いで「家族・親族」が全体の約3割強を占めていますが、「友人」、「自分ひとり」も約2割と、どのタイプも満遍なく訪日しています。そのため、各市場でアプローチしやすいターゲット層を特定し、特定のターゲットへの一極集中を防ぐことが効率的なインバウンド戦略に繋がるでしょう。

※結果は複数回答を含む。

訪日オーストラリア人の滞在日数

 

出典:観光庁 訪日外国人の消費動向

全国籍と比較すると圧倒的に長く滞在していることが分かります。既述ですが、オーストラリアでは長期休暇を取って海外旅行に出かけるのがとても一般的なので、訪日旅行においても1~3週間の間、長期滞在しているようです。長期間の滞在で一定した消費が生じることから、オーストラリア人をインバウンドターゲットにすることで大きなリターンが期待できます。

ⅶ. オーストラリア人全体の海外旅行における滞在期間

訪日オーストラリア人は初訪日・リピーターどちらが多い?

出典:日本政府観光局(JNTO)統計データ

6.6割が「初めて」と回答しています。リピーター率はそれほど高いわけではないと同時に、近年の訪日オーストラリア人増加による結果ともとれます。初訪日が多数を占めるオーストラリア人ですが、スキー客にはリピーターが多いとも言われています。今後の対オーストラリア人へのインバウンド戦略においては、新規での訪日客獲得だけでなく、滞在中の満足度を上げ、もう一度訪れたくなる取り組みも視野に入れた対策が必要であると言えるでしょう。

訪日オーストラリア人は個別旅行とツアーどちらが多い?

出典:観光庁 訪日外国人の消費動向

訪日オーストラリア人の旅行形態ですが、個人手配が圧倒的です。旅行先の選択や旅程は自ら情報収集し決定しているとも言え、インバウンド市場においては一般客にリーチする戦略が必要です。

訪日オーストラリア人の情報収集元とは?

出典:日本政府観光局】(JNTO)統計データ

個人での旅行が多いオーストラリア人のおもな情報収集源は口コミサイトがトップ、次いで親族や知人からの口コミと、一般人目線での評判を参考にしています。一方で宿泊施設のホームページや旅行ガイドブック、旅行会社のホームページなども全体のうち2~3割は見ているので、各メディアを活用するのも有効的でしょう。全体的にインターネットを多く活用していることが伺え、デジタルメディアでのPRは不可欠です

※複数回答を含む。

旅行支出内訳:訪日オーストラリア人は何にお金を使っているのか?

出典:観光庁 訪日外国人の消費動向調査

滞在期間が長いことが影響していますが、全体の支出額のうち4割を宿泊料金に割いています。観光庁の調査によると、宿泊費にお金をかけるのが欧米諸国(イギリス、フランス、イタリア、ドイツなど)、買い物代にお金をかけるのがアジア圏(中国、ベトナム、台湾、タイなど)といった結果となっています。

また、訪日した全国籍の各支出で「娯楽・サービス費」項目で一番お金を使っているのがオーストラリア人と『モノ』より『コト』(体験)にお金をかける傾向にあると言えます。

人気の買い物場所は?

出典:日本政府観光局(JNTO)統計データ

日本全国どこでもあるコンビニエンスストアを利用するのは訪日オーストラリア人も同じのようです。大きな買い物をする先は百貨店・デパートと想定されます。

※複数回答含む。

オーストラリア人が訪日旅行に求めることとは?

出典:日本政府観光局(JNTO)統計データ

上記は「訪日前に日本への旅行で何を期待していたか」、訪日オーストラリア人に対して行った聞き取り調査の回答結果です。日本食への興味・期待値は高いようです。続いて自然や景勝地観光が2位、日本の歴史体験・伝統文化体験が3位に来ており、都市に留まらず、各地方へ美しい自然や景観を求めて足を運ぶことが予想される回答です。4位のショッピングを抑えてのランクインとの結果から、オーストラリア人は体験消費型の観光客と言えるでしょう

※複数回答含む。

オーストラリア人の訪日事情まとめ

  • 長期滞在、かつ堅調な支出。
  • 20代の若者多数。
  • インターネットの口コミから情報収集。
  • モノより体験を求める傾向。
  • 自然・景観を求める人が多く、都市圏だけなく、地方にも足を運ぶ

 

 

オーストラリア人のインバウンド戦略まとめ

以上のオーストラリア人の海外旅行事情と、現在の訪日旅行事情を比較して言えることは…

 

  • 一人あたりの消費額はまだ伸びる余地あり: 訪日旅行22万5845円(2017年)⇒24万9128円。(2019年)
  • 新規訪日客を増やすと同時にリピーターを増やす取り組みも必要。
  • 日本らしさ、日本でしかできない体験ができることによりフォーカスしたPRを。
  • デジタルでのインバウンド対策は必須。一般旅行者やインフルエンサーを経由した情報発信はさらに有効。
  • 中高年層をターゲットに据えたアプローチ強化で新しい客層の開拓⇒更なる訪日者数増加の可能性大。
  • 東京・京都などのゴールデンルートにはない体験や自然、景観をアピールすることで、地方にも勝機あり


※ 参照元:日本政府観光局 JNTO  「訪日旅行データハンドブック 2019

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