By SCP編集部 in ツーリズムデータ | 各国のインバウンドの違い
ここ数年、訪日オーストラリア人は大幅に増加しています。特にスキーレジャーは、北海道をはじめ各スノーリゾートにたくさんのオーストラリア人が足を運び、訪日旅行の重要な要素となっています。また、オーストラリアはイングランドやニュージーランドと競り合う世界有数のラグビー強国。大勢のラグビーファンが競技場を埋め尽くし盛り上がる光景は、オーストラリアではごく一般的です。そのため、2019年日本で開催されるラグビーワールドカップでは、訪日オーストラリア人の需要拡大も期待されています。
参照元:
https://www.jtb.co.jp/inbound/report/overseas/201802.asp
https://www.dbj.jp/pdf/investigate/etc/pdf/book1605_01.pdf
一方、訪日中国人もインバウンド事業のターゲットとして定着しています。2015年1月から訪日中国人に対する、ビザ発給要件が緩和されたことにより、同年の訪日旅行者数が45年ぶりに出国日本人数を上回りました。また、訪日中国人が大量に買い物をする「爆買い」が、この年のユーキャン新語・流行語大賞の年間大賞を受賞するほど、訪日中国人の旅行動向が注目され、現在もなお訪日中国人は増え続けています。
参照元:
https://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/press4_001624.html
https://www.jnto.go.jp/jpn/news/press_releases/pdf/20160119_1.pdf
https://www.sankei.com/life/news/151201/lif1512010028-n1.html
インバウンド事業のターゲット国として、関心が向けられているオーストラリアと中国は、それぞれの消費動向や日本に求めるものが異なります。そのため、それぞれの国に適した商品やサービスを検討し、そのプロモーションを立案することが重要です。
そこで本記事では、インバウンド事業のプロモーションを検討する際に必要なデータとして、訪日旅行に関する情報を元に訪日オーストラリア人と訪日中国人の旅行動向を見ていきます。
訪日オーストラリア人と訪日中国人の旅行者数
推移の比較
インバウンド事業が精力的に押し進められている昨今、実際にどのくらいの訪日外国人が増えているのでしょうか。ここでは訪日オーストラリア人と訪日中国人の、それぞれの訪日旅行者数の推移をみていきます。
訪日オーストラリア人数は、2011年の東日本大震災にて一時落ち込みましたが、2012年から安定して増加傾向にあります。これは、2012年5月以降のスノー旅行に関連した訪日プロモーション、アベノミクスの始動により為替が円安になったことが要因です。
参照元:
https://www.jnto.go.jp/jpn/statistics/data_info_listing/pdf/130125_monthly.pdf
https://www.mizuho-ri.co.jp/publication/research/pdf/insight/jp160219.pdf
一方、訪日中国人が増え始めたのは、訪日オーストラリア人よりも遅い、2014年から。観光局によると、大型クルーズ船の多数寄港や航空便の就航などが理由と挙げられています。加えて、10月からの免税制度拡充と円安傾向により、買い物目当ての訪日中国人が増加。さらに2015年から訪日中国人数が一気に急増したのは、ビザ発給要件の緩和、国際航空路線の拡充、訪日プロモーションの実施が要因です。
参照元:https://www.jnto.go.jp/jpn/news/press_releases/pdf/20150120.pdf
月別の比較
次に、訪日オーストラリア人と訪日中国人の、月別での訪日旅行者の推移をみていきます。オーストラリアと中国では、学校年度や祝日などのスケジュールに違いがあるため、訪日時期も異なります。訪日のタイミングを把握することで、インバウンドターゲットにマッチした企画やプロモーション展開を検討することが可能です。
オーストラリアでは、訪日スキー旅行の需要が高いことから、シーズンである12月と1月は訪日オーストラリア人数が増えます。この時期はオーストラリアの学校年度末から新年度までのスクールホリデーにもあたり、家族で冬の訪日を楽しむオーストラリア人も多数います。また、オーストラリアの学校年度は1月下旬(あるいは2月上旬)から12月下旬までの4学期制のため、州によって異なりますが、9月から10月ごろにかけて2週間の春休みがあります。これが、9月の訪日旅行者を伸ばすひとつの要因となっています。
さらに、9月には日本語教師が日本語クラスに所属するオーストラリア人を率いて、訪日教育旅行が催行されます。オーストラリアの日本語学習者は約30万人と多数のため、訪日者数アップの貢献につながっています。
参照元:https://education.jnto.go.jp/receive/receive-list
対する中国の学校年度は、9月1日から7月中旬までの2学期制。7月から9月は夏休みにあたるので、8月が訪日旅行のピークになります。さらに3連休になる6月の端午節と9月の中秋節、10月に1週間ほどある国慶節が、訪日旅行に関わってくるようです。
また、中国には春節という旧正月があります。元来、この期間は家族で過ごすという習慣のため、旅行者数は少なめでしたが、近年では春節期間中の旅行も増加傾向。2018年の春節では、650万人の中国人が海外へと旅立ち、歴代最多となりました。
参照元:
https://www.mofa.go.jp/mofaj/toko/world_school/01asia/infoC10800.html
https://www.mofa.go.jp/mofaj/toko/world_school/02pacific/infoC20100.html
https://www.xuehua.us/2018/07/04/650万中国游客将海外旅行过春节-欧洲仍是热门/zh-tw/
https://core.ac.uk/download/pdf/12545786.pdf
https://publicholidays.cn/zh/2019-dates/
年齢、性別の比較
2017年観光庁「訪日外国人消費動向調査」によると、訪日オーストラリア人と訪日中国人とでは、訪日の年代や性別の割合が異なります。それぞれの属性を把握することは、ターゲットへと向けた的確なプロモーション立案が可能です。
グラフを見ると、訪日オーストラリア人も訪日中国人も20代の割合が一番高く、両国の若者は日本に強い興味を持っていることがうかがえます。また、訪日オーストラリア人は60代がそれに続きますが、訪日中国人の場合は年齢を重ねるにつれて減少していく傾向にあります。
さらに男女比では、訪日オーストラリア人は66%が男性の割合であるのに対し、訪日中国人は女性が57%を占めています。
これらのデータを参考にすることで、インバウンドプロモーションの戦略や実施に確実性をもたらします。
参照元:http://www.mlit.go.jp/common/001230776.pdf
訪日外国人の増加理由
それでは訪日オーストラリア人と訪日中国人が着実に増加し続けている理由は、どのようなことでしょうか。
観光局によると、訪日オーストラリア人の増加は、カンタス航空による就航、旅行博への出展、訪日旅行の積極的なプロモーションが理由として挙げられています。その具体的な例には、オーストラリア人が高い関心を寄せる日本食のSNSでのプロモーションや、オーストラリアの人気料理番組での約1週間にわたる日本特集の放映などがあります。
訪日中国人は、2017年5月のビザ発給要件の緩和により訪日個人旅行を楽しめる人数が増え、その需要が高まったことや、クルーズ船寄港数の増加などが主な理由だそうです。また、多分野にわたる日本の魅力を紹介する宣伝広告、オンライン・トラベル・エージェントと連携したキャンペーン、インフルエンサーを通じた情報発信などにより、リピーターの獲得や訪日旅行目的の多様化を図ったことが影響しています。
こうした成果の生じるインバウンドプロモーション施策は、現在取り組んでいるプロモーション方法や今後の展開に関してヒントとなるでしょう。
参照元:
https://www.jnto.go.jp/jpn/statistics/data_info_listing/pdf/180116_monthly.pdf
https://www.jnto.go.jp/jpn/news/press_releases/pdf/180815_monthly.pdf
訪日オーストラリア人と訪日中国人の消費
消費金額
では、両国の訪日旅行時における消費金額について比較します。どの国がどのように旅行費用をかけているかを知ることは、今後のターゲット設定、商品やサービスの販売促進などにもつながるため、把握しておきたいことがらです。
買い物代の消費額が高いことで知られる訪日中国人ですが、消費費目によっては、訪日オーストラリア人の方が目を引くものがあります。
全体消費
はじめに、訪日旅行の国別での消費金額をみましょう。観光庁によると、2018年4~6月期の訪日外国人旅行の消費額は、1兆1,233億円。そのうち中国がトップで32.2%を占める3,620億円の消費額でした。一方オーストラリアは、全体の3.1%を占める343億円と国全体では7位でした。
個人消費
ところが国籍・地域別にみた訪日外国人1人あたりの旅行支出では、訪日オーストラリア人の総額は最も高額で264,327円(前年比+24.4%)。なかでも宿泊費、娯楽などのサービス費においてはトップでした。また、訪日中国人の際立つ特徴は買い物代で、109,120円と他国・地域にも比べて群を抜いていました。
国全体では訪日中国人の消費額がひときわ目立っていたのに対し、1人あたりの支出では訪日オーストラリア人が突出しています。
さらに支出費目に関しても、両国で大きな違いがあります。訪日中国人がショッピングやお土産の購入を楽しむのに対して、訪日オーストラリア人は商品やサービスによって得られる経験や体験を重視していると言えるでしょう。
参照元:http://www.mlit.go.jp/common/001245491.pdf
滞在期間
今度は訪日オーストラリア人と訪日中国人が、どのくらいの宿泊期間で日本へ旅行しているかをみていきましょう。
2017年発表のデータでは、訪日オーストラリア人の平均宿泊数は観光レジャー目的の場合12.8泊、訪日中国人の場合は6.1泊でした。
また、訪日オーストラリア人の滞在期間は、1週間から2週間以上との回答が約90%を占めるのに対し、訪日中国人は4日から6日間以内の滞在が半数を占めます。
全国籍・地域の観光レジャー目的の平均滞在期間は5.8泊であることを踏まえても、訪日オーストラリア人は長期滞在の傾向にあることが分かります。
参照元:http://www.mlit.go.jp/common/001230775.pdf
支出額や滞在期間の統計に基づくと、訪日オーストラリア人数が増えることで観光地に益がもたらされる割合は高くなります。こうしたことから、オーストラリアは非常に魅力のあるマーケットと判断でき、インバウンドプロモーションを実施するターゲットとして、たいへん価値の高い国となります。
訪日オーストラリア人と訪日中国人の消費動向
情報収集源
旅行の計画を立てる際に利用する情報源も、訪日オーストラリア人と訪日中国人とで異なります。ただ旅行中の情報源は、どちらの訪日者も、若干の割合の変動はあるものの、内容はほぼ一緒のようです。このデータを利用して、的確かつ適切なインバウンドプロモーションの展開に拍車をかけましょう。
観光庁が発表する2017年の訪日外国人の消費動向によると、訪日オーストラリア人と訪日中国人の情報源は下記のようになりました。
訪日オーストラリア人の旅行前の情報源は、トリップアドバイザーなどの口コミサイト、自国や日本在住の親族や知人からのものが上位を占めています。特徴的なのは、宿泊施設のHPが3番目にランクしていること。これは、宿泊料金にお金をかけるオーストラリア人ならではです。また、偏った情報源から入手するというより、個人から国までさまざまな情報源を利用しいていることが見て取れます。
訪日 旅行前 | 訪日 旅行中 | ||
情報源 | 回答率 | 情報源 | 回答率 |
口コミサイト(トリップアドバイザー等) | 38.4% | インターネット(スマホ) | 73.6% |
自国の親族・知人 | 36.6% | 観光案内所(空港除く) | 33.6% |
宿泊施設HP | 29.9% | インターネット(PC) | 29.5% |
日本在住の親族・知人 | 27.5% | 宿泊施設 | 27.6% |
個人のブログ | 20.8% | 日本在住の親族・知人 | 25.6% |
旅行ガイドブック | 19.6% | 空港の観光案内所 | 20.2% |
日本政府観光HP | 17.0% | インターネット(タブレット) | 17.7% |
動画サイト(YouTube) | 16.5% | 旅行ガイドブック(有料) | 15.5% |
一方、訪日中国人は、SNSからの情報源に頼ります。特に中国で使われているSNSはWeibo、WeChatなどで、訪日旅行事業でもそのSNSを利用してのプロモーションが展開されています。そのほか、旅行会社のホームページやガイドブック、パンフレットや専門誌など、旅行業界からの発信が情報源となるようです。
これらの統計値から、両国とも個人の感想や意見も大事にしていることが分かります。これは、インバウンドプロモーションを仕掛ける前段階の商品づくりにも役立つ情報です。
訪日 旅行前 | 訪日 旅行後 | ||
情報源 | 回答率 | 情報源 | 回答率 |
SNS | 24.4% | インターネット(スマホ) | 69.5% |
旅行会社HP | 20.8% | インターネット(PC) | 13.5% |
自国の親族・知人 | 17.5% | 観光案内所(空港除く) | 13.3% |
個人ブログ | 14.7% | フリーペーパー(無料) | 13.1% |
旅行ガイドブック | 13.9% | 空港の観光案内所 | 12.5% |
日本在住の親族・知人 | 13.6% | 宿泊施設 | 11.4% |
旅行会社パンフレット | 11.7% | 日本在住の親族・知人 | 11.4% |
旅行専門誌 | 11.1% | インターネット(パンフレット) | 8.0% |
参照元:
http://www.mlit.go.jp/common/001230776.pdf
https://amadeus.com/documents/en/airlines/research-report/journey-of-me-report/amadeus-journey-of-me-insights-apac-report-cn_en.pdf
リピーター
商品やサービスを考える際に、リピーターの獲得を目的として展開することもあるでしょう。リピーターは将来の訪日者。インバウンド事業において大切な要素です。そこで、訪日オーストラリア人と訪日中国人の訪日回数についてみていきます。
訪日オーストラリア人の場合、1回目の訪日旅行者は67%。初回訪日の方がまだまだ多い現状です。しかし、訪日旅行全体の満足度としては「大変満足」と答えた訪日オーストラリア人が83%もおり、対象となる国・地域別の中でも高い割合を占めていました。さらに日本への再訪意向の調査でも、訪日オーストラリア人は「必ず来たい」との回答が72.8%であることから、今後、リピーター率の上昇が期待できます。
訪日中国人の場合も、1回目の訪日旅行者は60.2%、2~5回目は34.0%と、訪日オーストラリア人とほぼ等しい割合を占めています。しかしながら、訪日旅行全体の満足度では「大変満足」が49%、再訪意向については「必ず来たい」と答えた人が60.9%と、訪日オーストラリア人よりも低い割合でした。
観光庁の調べには、訪日旅行回数が増えると、地方へ訪れる割合、ひとり旅の割合が高くなる傾向だとあります。訪日オーストラリア人は、初回訪日者が多く満足度が高いことから潜在的なリピーターと判断できるでしょう。そのため、日本の各観光地では地域の魅力をオーストラリア人に向けて実施するプロモーションに力を注ぐことをおすすめします。
参照元:
http://www.mlit.go.jp/common/001226295.pdf
http://www.mlit.go.jp/common/001230775.pdf
http://www.mlit.go.jp/common/001230776.pdf
訪日オーストラリア人と訪日中国人を比較して見えること
今回ご紹介したように、訪日外国人の国・地域別での全体消費に関して、訪日中国人が特に高いことが分かります。
ただ訪日オーストラリア人も、一回あたりの支出額や訪日時の満足度が高いこと、長期滞在型であることから、今後も注力すべき、インバウンド事業の有力な対象国であると言えるでしょう。
訪日オーストラリア人と訪日中国人とでは、それぞれ旅行する時期や年齢層、性別、旅行目的や旅行プランを立てるための情報源などが異なります。そのため、ターゲットの選定、商品やサービスの販売促進を考案する際には、特性に合わせることが効果的です。
インバウンド事業におけるオーストラリア人へのプロモーション、さらにターゲットの選定に合わせたプロモーション展開、またオーストラリアの各メディアや誘致に関する必要な案内など、お気軽にお問い合わせください。