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オーストラリアとフランスの訪日データ比較

By SCP編集部 in ツーリズムデータ |

最近オーストラリアでは日本旅行がブームになっています。特にオーストラリア人の間では日本のウインタースポーツが大人気で、毎年多くの訪日オーストラリア人が北海道や長野を始め、各スキーリゾートに足を運んでいます。もちろんウインタースポーツのみならず様々な目的を持って日本を訪れており、今オーストラリアは非常に注目されているインバウンド事業のターゲットとなっています。

また、オーストラリアは世界有数のラグビー強国であり、オーストラリア国内で非常に人気の高いスポーツの一つです。2019年9月には日本でラグビーワールドカップが開催されることもあり、より一層多くのオーストラリア人が日本を訪れることが予想されます。

その一方で、フランスでも観光客数は年々増加しており、2018年の訪日フランス人観光客数は304,896人とヨーロッパ諸国の中でイギリスに続き第2位にランクインしました。また、訪日フランス人の平均泊数は18.4泊とヨーロッパ諸国の中で一番長い平均泊数を記録しており、フランスも日本にとって重要なインバウンドプロモーションのターゲットであると言えます。

本記事では、訪日オーストラリア人と訪日フランス人の旅行動向を比較分析し、それぞれの特徴を見ていきます。

 

 

訪日観光客数の比較

まず始めにオーストラリアとフランスそれぞれの訪日観光客の基本データを見ていきましょう。

観光客数の推移

出典:日本政府観光局(JNTO)

2012年~2018年のオーストラリアとフランスそれぞれの観光客数の推移を見てみると、どちらも年々観光客数が増加していることがわかります。オーストラリアは2018年には一年間の訪日観光客数が50万人を突破し、国別訪日観光客数のランキングで堂々の第7位にランクインしました。オーストラリア国内で年々高まる日本旅行ブームが訪日観光客数の増加を後押しし、今後さらなる観光客数の増加が予想されます。

その一方で、フランスも着実に観光客数が増加しています。オーストラリアと比べるとまだまだ少ない印象を受けますが、2018年には2012年の約2.3倍もの観光客数を記録しています。
また、フランスはヨーロッパ諸国の中でイギリスに続き第2位の訪日観光客数を誇り、日本にとって非常に重要なインバウンドのターゲット国であると言えます。

性別比較

次に訪日オーストラリア人と訪日フランス人の性別の割合を比較していきます。

出典:平成30年観光庁「訪日外国人消費動向調査」

グラフを見ると、オーストラリア・フランスともに男性が約60%、女性が約40%という結果になりました。訪日観光客全体の性別の割合は男性が約50%、女性が約50%であることを考えると、オーストラリアとフランス共に男性の方が日本に来る傾向が高いといえます。

年代別比較

出典:平成30年観光庁「訪日外国人消費動向調査」

訪日オーストラリア人と訪日フランス人の年代の割合を見てみると、オーストラリア・フランス両国とも同じような傾向にあることがわかります。20代の訪日観光客の割合が最も高く、その後30代、40代と徐々に割合が低下しています。

また同行者についての調査では、訪日オーストラリア人は夫婦・パートナーと来ると回答した人の割合が30.6%と最も高く、その次に自分ひとりだけで来ると回答した人の割合が28.2%となりました。

その一方で訪日フランス人は自分ひとりで来ると回答した人の割合が36.3%、夫婦・パートナーと来ると回答した人の割合が24.4%という結果になりました。

これらの結果から、家族向けのインバウンド事業を展開することで、家族・親族と日本を訪れる人の割合を増加させ、さらに20代、30代以外の年代の割合を増加させることができるでしょう。

このように訪日観光客の属性を分析していくことで新たなインバウンドプロモーションの方法を見つけることができます。

 

 

訪日観光客の消費動向

ここからは訪日オーストラリア人と訪日フランス人の日本での消費動向について見ていきます。

滞在期間

出典:平成30年観光庁「訪日外国人消費動向調査」

グラフを見ると、オーストラリア・フランス共に7~13日間と回答した割合が一番高く、その次に14~20日と3割以上が回答しました。つまり両国とも1週間以上の長期滞在をする訪日観光客が非常に多いと言えます。

また訪日オーストラリア人の平均泊数は13.3泊、訪日フランス人の平均泊数は18.4泊であり、特にフランスはベトナム、フィリピン、インドに続き第4位の平均泊数を誇ります。全体の平均泊数は9.0泊であることから、オーストラリア・フランス両国はとても長く日本に滞在してくれる魅力的なインバウンドプロモーションのターゲットであります。

滞在目的

日本を訪れる外国人観光客は様々な目的を持って日本を訪れます。それでは、訪日オーストラリア人、訪日フランス人はそれぞれどのような目的を持って日本を訪れるのでしょうか?

オーストラリア フランス
1位 日本食を食べること(85.4%) 日本食を食べること(88.7%)
2位 自然・景勝地観光(60.1%) 日本の歴史・伝統文化体験(53.6%)
3位 日本の歴史・伝統文化体験(54.9%) 自然・景勝地観光(52.0%)
4位 ショッピング(54.4%) ショッピング(48.7%)
5位 繁華街の街歩き(52.4%) 繁華街の街歩き(45.9%)

出典:平成30年観光庁「訪日外国人消費動向調査」

調査の結果を見るとオーストラリア・フランス共に滞在目的に似た傾向があることがわかります。第1位は「日本食を食べること」であり、なんと約8.5割以上もの訪日オーストラリア人と訪日フランス人が回答しています。また「自然・景勝地観光」や「日本の歴史・伝統文化体験」と回答した割合も高く、オーストラリア・フランス両国の特徴として、日本ならではの体験を求めて訪れていることがわかります。

オーストラリアとフランスのみならず近年、多くの外国人観光客が買い物などの形に残る「モノ消費」ではなく、日本でしかできない経験の「コト消費」に重点を置くことがわかっています。

一人当たりの消費額

インバウンドプロモーションについて考える際に気になるのは、‟実際外国人観光客がどれくらいのお金を日本滞在中に使うのか”ということでしょう。ここでは訪日オーストラリア人と訪日フランス人の日本滞在中における一人当たりの消費額を比較分析していきます。

出典:平成30年観光庁「訪日外国人消費動向調査」

一人当たりの消費額を見てみると、オーストラリア・フランス共に全体に比べ消費額が大きいことが分かります。特徴的なのは両国とも宿泊費が約10万円と非常に高く、全体の約4割を占めていることです。

これらの結果からオーストラリア・フランス共にインバウンドプロモーションのリターンを大きく得ることができるターゲットであると言えます。

ハイシーズン比較

出典:日本政府観光局(JNTO)

オーストラリアのハイシーズンはオーストラリア人に人気のウインタースポーツができる12~4月であることが分かります。ピークの1月には6.5万人以上のオーストラリア人が日本を訪れています。

その一方で、フランスのハイシーズンは4月、7月、10月と3回あることがグラフから読み取れます。つまりフランスに対して訪日インバウンドプロモーションを行う際は、これらの時期にめがけてプロモーションをすると良いでしょう。

 

 

訪日旅行後の影響

最後に、訪日オーストラリア人と訪日フランス人が日本旅行後にどのような感想を持つのか、またその後の行動について見ていきます。

満足度調査

出典:平成30年観光庁「訪日外国人消費動向調査」

訪日旅行後の満足度調査によると、オーストラリア・フランスともに約84%が「大変満足」、約14%が「満足」と回答しました。実に98%の訪日オーストラリア人と訪日フランス人が日本旅行を存分に楽しんだということがわかります。

このように満足度が非常に高いことは今後の日本におけるインバウンド事業の更なる発展の一助となることでしょう。

日本への再訪意向

出典:平成30年観光庁「訪日外国人消費動向調査」

日本への再訪意向について見てみると、訪日オーストラリア人の約73%が「必ず来たい」、約21%が「来たい」と回答しました。訪日フランス人に関しても約68%が「必ず来たい」、約22%が「来たい」と回答しました。訪日オーストラリア人の方がやや日本への再訪意向が強いことが読み取れますが、オーストラリア・フランス共にリピーター獲得に繋がる十分な再訪意向の結果であると言えます。

リピーター

それでは実際のリピーター数はどれくらいなのでしょうか?

出典:平成30年観光庁「訪日外国人消費動向調査」

日本に初めて訪れたオーストラリア人とフランス人の割合はそれぞれ約59%、約57%と半分ほどの割合です。それに対して日本に2回以上訪れている、つまりリピーターの割合は約43%と大きな割合を占めています。これらは日本旅行への満足度や日本への再訪意向の高さ所以の結果であると言えます。

しかし全体の平均のリピーター(2回以上訪日している外国人観光客)は約62%であり、全体に比べるとまだまだオーストラリアとフランスからのリピーターが少ないことから、訪日オーストラリア人と訪日フランス人のリピーター育成は今後の課題であるでしょう。

情報収集源

訪日外国人観光客は日本旅行前にどのようにして情報を収集しているのでしょうか?まだ日本旅行中どのような情報が役に立っているのでしょうか?

オーストラリア
訪日旅行前 訪日旅行中
1位 口コミサイト(トリップアドバイザー等)(41.9%) 無料Wi-Fi(61.5%)
2位 自国の親族・知人(32.1%) 交通手段(55.3%)
3位 宿泊施設ホームページ(30.6%) 宿泊施設(35.8%)
4位 動画サイト(YouTube/土豆網等)(25.0%) 観光施設(35.6%)
5位 日本在住の親族・知人(22.1%) 飲食店(32.7%)

出典:観光庁「訪日外人の消費動向 報告書(第2編)」

このデータからわかることとして、訪日オーストラリア人はトリップアドバイザーなどの口コミサイトや自国の親族や知人などといった実際に日本を訪れたことがある人の意見を参考にする傾向があります。中でも第3位に「宿泊施設のホームページ」の情報を収集しているのは訪日滞在費の中で宿泊費に一番お金をかけるオーストラリアならではの特徴であると言えます。
また訪日旅行中に役に立った情報として約6割の訪日オーストラリア人が「無料Wi-Fi」と回答しており、無料Wi-Fiの需要の高さと設置の必要性がよくわかります。

 

フランス
訪日旅行前 訪日旅行中
1位 日本在住の親族・知人 (28.7%) 交通手段 (62.1%)
2位 旅行ガイドブック (28.1%) 無料Wi-Fi(51.4%)
3位 口コミサイト(トリップアド バイザー等) (27.7%) 観光施設 (29.1%)
4位 自国の親族・知人 (25.4%) 飲食店 (29.1%)
5位 個人のブログ (23.2%) 宿泊施設 (26.7%)

出典:観光庁「訪日外人の消費動向 報告書(第2編)」

それに対して、訪日フランス人の日本旅行前の情報収集源として第1位に「日本在住の親族・知人」、第2位に「旅行ガイドブック」が挙げられています。訪日オーストラリア人の情報収集源がもっぱらインターネットからであったのに対して訪日フランス人は紙媒体の旅行ガイドブックが情報収集源であることが印象的です。フランスだけでなくヨーロッパ諸国は旅行ガイドブックから情報収集する傾向にあり、紙媒体でのヨーロッパ諸国に対するインバウンドプロモーションが効果的であることがわかります。
また、訪日旅行中に役に立った情報として「交通手段」が第1位にランクインしています。長期滞在をする傾向にある訪日フランス人は滞在期間が長い分公共交通機関を利用する機会も多く、交通手段の情報の需要が非常に高いと言えるでしょう。

オーストラリア・フランス両方のランキングの第1位、第2位に「無料Wi-Fi」と「交通手段」が挙げられており、いかにこれらの情報の需要が高いのかがわかります。東京や京都などの主要都市にはこれらは十分に整備されていますが、やはり地方には無料Wi-Fiがなかったり交通手段に関する情報が日本語のみでしかなかったりといった問題があります。

訪日外国人観光客が日本でどんな情報を求めているのか、それを知りその対策に取り組むことはインバウンドプロモーションにおいて重要な要素の一つです。

 

 

まとめ

訪日オーストラリア人と訪日フランス人の旅行動向を分析したところ

  • オーストラリアとフランスからの訪日外国人観光客数は年々増加している
  • 滞在日数や訪日旅行中の一人当たりの消費額が全体に比べとても高いことからオーストラリアとフランスは日本にとってインバウンドプロモーションの非常に魅力的なターゲットであると言える。
  • オーストラリアとフランス両国は訪日観光客の属性や消費動向、満足度、再訪意向など似た傾向にあるものが多い
  • ハイシーズンや情報収集源には大きな違いがあったため、それぞれの国への独自のアプローチ方法でプロモーションを行う必要がある

以上4点がオーストラリアとフランスのインバウンドを考える際に重要な要素になると言えます。

オーストラリアフランスは今後インバウンド事業において大きな成長が期待される重要なターゲット国です。それぞれの訪日観光客の傾向や特徴を把握し効果的なプロモーションを行うことが必要となるでしょう。

オーストラリアでのインバウンドプロモーションに関するご不明な点やご質問などございましたら、お気軽にお問い合わせください。

 

この記事を書いた人:大倉 奈央子
静岡県出身。金沢大学国際学類にて日本語教育を専攻中の大学3年生。現在はシドニー工科大学にて交換留学中、観光学やマーケティングについて学んでいる。趣味は写真・旅行・カフェの朝食巡り。

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