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オーストラリアとヨーロッパ訪日データ比較

By SCP編集部 in ツーリズムデータ |

年々増加する訪日観光客数は、ついに2018年に3000万人を突破しました。そのうちアジア圏は2600万人の訪日観光客数を誇っており、日本のインバウンドの主要マーケットとなっています。しかし、アジア諸国の訪日観光客は団体旅行者が多く、一人当たりの消費額は比較的低いことが指摘されています。

一方、豪州と欧州諸国はアジア諸国と比べて滞在日数が長く、訪日中の旅行消費額も高いことから、有望のインバウンドターゲット国とみられています。日本は安全性が高く、日本特有の食事や歴史、文化を擁しており、豪州、欧州諸国からのさらなる訪日観光客数獲得の可能性を秘めています。

本記事では、豪州(オーストラリア)と欧州(イギリス・フランス・ドイツ・イタリア・スペイン・ロシア)というの訪日観光客数のデータを比較分析していきます。

訪日観光客数の属性

まず初めに、豪州と欧州の訪日観光客にはどうような属性があるのかを見ていきます。

2012年~2018年における観光客数の推移


出典:日本政府観光局(JNTO)

 

2012年から順調に各国の訪日観光客数が伸びています。とくにオーストラリアの増加率は顕著で、2012年に20万人だったのが2018年には55万人にまで増加しており、168%という伸び率を記録しました。

一方欧州を見てみると、2018年の時点で30万人を超えたのは、イギリスとフランスの2国にとどまりました。しかしながら、東京オリンピックの開催等により、日本の注目度はますます高まってきており、今後も訪日観光客数の増加に期待ができます。

 

月ごとの観光客数の推移

出典:観光庁「訪日外国人の消費動向報告書(第2編)」

 

全体のハイシーズンは4月・10月で、ローシーズンが6月という結果になりました。

オーストラリアのみで見てみると、1月・12月の訪日観光客数が多く、ウィンターアクティビティを目的に来日していることが分かります。一方で8月の訪日観光客数が最小値を記録しており、今後いかにサマーシーズンで観光客数を誘致できるかが課題だと言えます。

欧州は、4月・10月の過ごしやすい時期が訪日観光客数にとって人気でしたが、1月の訪日観光客数は最小となりました。このことから豪州と欧州で、人気のシーズン及び訪日目的に違いがあることが見て取れます。

性別比較

出典:観光庁「訪日外国人の消費動向報告書(第2編)」

 

各国ともほぼ同様の結果となりました。男性に比べ女性の割合が少なくなっていることから、女性をターゲットに絞ったインバウンドプロモーションを展開していく必要があります。

年代別比較

出典:観光庁「訪日外国人の消費動向報告書(第2編)」

 

20代の訪日観光客数割合が最も多く、年代が上がるにしたがって、訪日観光客数の割合も少なくなっています。

この結果に関しては、豪州と欧州で大きな差は見られませんでした。

同行者調査

出典:平成30年観光庁「訪日外国人消費同行調査」

 

オーストラリアを見てみると、「自分ひとり」「夫婦・パートナー」「家族・親族」の割合が同率で並んでいます。一人旅行から家族連れまでさまざまな層が来日していることが分かります。

欧州では、イギリスとドイツ、ロシアの「自分ひとり」の割合が多いことが特徴で、豪州と比べると「家族・親族」での訪日の割合が少なくなっています。ここを狙ってインバウンドプロモーションをしていくことで、20代以外の年齢層の誘致にも期待が持てます。

このように各国の属性には違いあり、それぞれの国にふさわしいプロモーションをしていく必要があります。

 

 

訪日旅行者の消費動向

滞在期間

豪州 イギリス フランス ドイツ イタリア ロシア スペイン
平均滞在日数 13.3泊 13.8泊 18.4泊 13.9泊 15.2泊 17.2泊 14.3泊

出典:観光庁「訪日外国人の消費動向報告書(第2編)」
出典:「欧米豪発アジア観光マーケット調査」

 

滞在日数の結果を見てみると、7〜13日間、14〜20日間の割合が多くなっており、アジア諸国と比べると長期滞在する傾向があります。

平均滞在はフランスの18.4泊最長という結果になりました。オーストラリアは13.3泊と、欧米諸国に比べてやや少なくなっています。

 

JNTOの調査によると、アジア観光マーケットにおける欧米豪人の嗜好傾向は、長期リゾート型の訪問先としてタイが、短期都市型の訪問先としてシンガポールが人気となっています。日本独自のコンテンツを活かし、他国との差別化を図ることが必須です。長期滞在者に向けた宿泊・飲食・周遊プランの開発、短期滞在者に向けた、MICE等のビジネストラベラーの誘致が対策として考えられます。

滞在目的

訪日観光客が実際に何を期待し、目的として来日しているのかを見ていきます。

1位 2位 3位 4位 5位
豪州 日本食を食べること 自然・景勝地観光  日本の歴史・伝統文化体験 ショッピング  繁華街の街歩き
イギリス 日本食を食べること 日本の酒を飲むこと(日本酒・焼酎等) 繁華街の街歩き 自然・景勝地観光 ショッピング
フランス 日本食を食べること 日本の歴史・伝統文化体験 自然・景勝地観光 ショッピング 繁華街の街歩き
ドイツ 日本食を食べること 自然・景勝地観光 日本の酒を飲むこと(日本酒・焼酎等) 日本の歴史・伝統文化体験 繁華街の街歩き
イタリア 日本食を食べること 自然・景勝地観光  ショッピング 繁華街の街歩き 日本の歴史・伝統文化体験
ロシア 日本食を食べること ショッピング  繁華街の街歩き 日本の歴史・伝統文化体験 自然・景勝地観光
スペイン 日本食を食べること 自然・景勝地観光 温泉入浴 日本の歴史・伝統文化体験 旅館に宿泊

出典:平成30年観光庁「訪日外国人消費同行調査」

 

全ての国で「日本食を食べること」が1位となりました。また「日本酒を飲むこと」もイギリスとドイツの上位にランクインしており、訪日観光客の期待の大きさが見て取れます。

物品を買うことによる「モノ消費」をオレンジ色、その地での体験や思い出に重きを置いてお金をかける「コト消費」を青色で色分けをしました。「日本食を食べること」や「日本酒を飲むこと」を日本に赴いたからこそできる体験であると考えれば「コト消費」のほうが圧倒的に多くなっていることが分かります。

豪州や欧州諸国の訪日観光客は日本でしかできない体験に強いこだわりを持っているため、それに応じたサービスや体験を提供していく必要があります。

一人当たりの消費額

 

出典:観光庁「訪日外国人の消費動向報告書(第2編)」

欧州諸国に比べ、やや滞在日数が短い豪州でしたが、実際に訪日中に消費している額は24万以上と全体の中でも最も高い金額を誇っています。このことから、オーストラリアがいかに日本にとって重要なインバウンドターゲットであるかが分かります。また、豪州の滞在日数を伸ばすことでさらなる消費額が期待出来ます。

一方、欧州を見てみると、平均滞在日数の長かったフランスとロシアの一人当たりの消費額は比較的少なくなっています。滞在日数と消費額が必ずしも比例して大きくなっているわけではないことが見て取れます。

しかしながら、アジア諸国と比較すると豪州も欧州諸国もその滞在日数の長さと消費額の高さは顕著であり、どちらも日本の欠かせないターゲットであることは言うまでもありません。

また、滞在期間の長さを考えると、各国の宿泊費の割合が最も高くなっていることにも納得がいきます。

 

JNTOの調査によると、豪州や欧州諸国の訪日観光客は夜間の観光を好む傾向がありますが、その需要を取り逃がしているとの指摘があります。ナイトタイムエコノミーの開発が今後の課題点の一つだと言えます。
参照:「欧米豪発アジア観光マーケット調査」

都道府県別訪問先

全体 豪州 イギリス フランス ドイツ イタリア ロシア スペイン
1位 東京都 東京都 東京都 東京都 東京都 東京都 東京都 東京都
2位 大阪府 千葉県 千葉県 千葉県 千葉県 千葉県 千葉県 千葉県
3位 千葉県 京都府 京都府 京都府 大阪府 京都府 京都府 京都府
4位 京都府 大阪府 神奈川県 大阪府 京都府 大阪府 大阪府 大阪府
5位 福岡県 広島県 大阪府 神奈川県 神奈川県 奈良県 神奈川県 神奈川県
6位 奈良県 長野県 広島県 広島県 広島県 石川県 北海道 広島県
7位 北海道 神奈川県 長野県 奈良県 愛知県 広島県 奈良県 岐阜県
8位 愛知県 北海道 山梨県 兵庫県 兵庫県 神奈川県 広島県 奈良県
9位 神奈川県 奈良県 奈良県 山梨県 奈良県 岐阜県 静岡県 石川県
10位 沖縄県 山梨県 石川県 和歌山県 長野県 兵庫県 沖縄県 山梨県

出典:平成30年観光庁「訪日外国人消費同行調査」
出典:「欧米豪発アジア観光マーケット調査」

 

各国の人気の訪問先を都道府県別でまとめました。

東京の根強い人気が一目瞭然の結果となって現れました。東京を中心とした関東圏大阪を中心とした関西圏が人気の訪問先となっています。

しかしながら、JNTOの調査では、その都市の過密性によるアクセシビリティや快適性への影響が懸念点として挙げられています。今後は主要都市だけでなく、地方にまで訪日観光客が足を伸ばせるような対策が必要です。まずは有効なプロモーションにより日本の魅力を知ってもらうことが不可欠です。

情報収集源

1位 2位 3位 4位 5位
豪州 口コミサイト 自国の親族・知人 宿泊施設ホームページ 動画サイト 日本在住の親族・知人
イギリス 口コミサイト 日本在住の親族・知人 宿泊施設ホームページ 自国の親族・知人 旅行ガイドブック
フランス 日本在住の親族・知人 旅行ガイドブック 口コミサイト 自国の親族・知人 個人のブログ
ドイツ 日本在住の親族・知人 口コミサイト 旅行ガイドブック 自国の親族・知人 動画サイト
イタリア 旅行ガイドブック 口コミサイト 自国の親族・知人 動画サイト 個人のブログ
ロシア 口コミサイト 個人のブログ 動画サイト 日本在住の親族・知人 SNS
スペイン 個人のブログ 動画サイト 旅行ガイドブック 自国の親族・知人 日本在住の親族・知人

出典:観光庁「訪日外国人の消費動向報告書(第2編)」

赤色で示しているように、「口コミサイト」や「親族・知人」が上位にきています。豪州と欧州諸国の違いで言うと、欧州諸国は「旅行ガイドブック」がランクインしており、紙媒体での情報収集が根強く好まれていることが分かります。反対に言うと、オーストラリアに向けたプロモーションを行う際はインターネット媒体が効果的だと考えられます。

 

 

訪日旅行後の影響

満足度

出典:平成30年観光庁「訪日外国人消費同行調査」

グラフを見ると各国の満足度が非常に高いことが分か

ります。「大変満足」と「満足」を含めると9割超えという結果になりました。

リピーター

出典:観光庁「訪日外国人の消費動向報告書(第2編)」

グラフを見てみると、2回目以降の再訪回数の割合が最も多かったのがロシアという結果になりました。飛行時間の長さで比較すると、直行便の場合オーストラリアとロシアは9時間強、その他は12時間以上かかりますが、飛行時間の長さが訪日回数に及ぼす影響はそれほどないと考えられます。

日本の強みである豊かな自然環境や歴史・文化の固有性を生かすことで、日本ファンの増加、さらにはリピーター獲得を目指していきたいところです。そのために、何よりも日本の情報や魅力を効果的に発信していく必要があります。

 

 

まとめ

豪州と欧州の訪日観光客の属性、旅行動向を分析したところ

  • 各国の訪日観光客数は年々増加している。オーストラリアの伸び率は極めて高い
  • オーストラリアのハイシーズンである1月が欧州諸国ではローシーズンとなっており、来日目的の違いが大きい。
  • 一人当たりの消費額はオーストラリアが最高の24万である。
  • 情報収集源として豪州はインターネット媒体が、欧州諸国はインターネットと紙媒体が有効的である。

以上4点が豪州と欧州のインバウンドを考える際に重要な要素だと言えます。

豪州と欧州には共通点や相違点があり、インバウンドを考える際にはターゲットの旅行動向を分析し、より効果的なアプローチ戦略を練ることが重要です。

オーストラリアでのインバウンドプロモーションに関するご不明点やご質問などがございましたら、お気軽にお問い合わせください。

この記事を書いた人:柳  花歩
和歌山県出身。津田塾大学で翻訳と教育学を学んだのち、英語教師として就職。現在はワーキングホリデーでシドニーに滞在中。

 

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