世界各地で新型コロナウィルスの感染が拡大しているが、オーストラリアでは大半の地域でのコロナ感染がほぼゼロの状態を維持しており、今後は、クリスマスまでにオーストラリアの州や領土を跨いだ往来がどの程度実現されるか、その動向が注目されている。一方、世界中がコロナウイルス感染の第2波・第3波に見舞われる中、国境再開に関して極めて慎重な姿勢を示しているオーストラリアでは、全面渡航解禁までまだまだ時間を要すると考えられ、海外旅行再開に向けてはしばらく茨の道が続くことが余儀なくされそうだ。
オーストラリアのコロナの現状
8月初めにオーストラリア・ビクトリア州をコロナ第2波が襲来し、世界的に最も厳しいロックダウンを112日間にわたり施行した。その甲斐もあってか、ビクトリア州政府は、11月24日にはこの8カ月間で初めてコロナの新規感染者数がゼロになったと発表。一方で南オーストラリア州でクラスターが発生し、コロナの感染防止策のため、11月18日から6日間の厳しいロックダウン措置が発令されたが、予定より早くロックダウンが解除されたことは記憶に新しい。今年の7月からコロナの感染拡大によって、オーストラリアの2大州であるニューサウスウェールズ州とビクトリア州はじつに100年ぶりとなる州境閉鎖を実施していたが、ビクトリア州の感染状況が落ち着きを見せたことで、11月23日に両州境の閉鎖が解除された。コロナによる規制はオーストラリア・クイーンズランド州でも緩和され、12月1日からニュースサウスウェールズ州全土との往来が可能となったことに加え、入州後の自己隔離も免除となる。オーストラリアのその他地域ではコロナの新規感染者数もほぼ確認されていないため、オーストラリアはコロナの抑制に比較的成功していると言っていいだろう。
オーストラリアは今年3月から、コロナ感染防止策の一環として国境を封鎖していたが、先月ニュージーランドのみ部分的に再開(ニュースサウスウェールズ州、ノーザンテリトリー準州と南オーストラリア州への入州に限定される)。限定的ではあるものの、国境が再開されたことでオーストラリアの鎖国状態は事実上終止符が打たれたかたちとなったが、依然としてオーストラリアからの出国はニュージーランドも含めていかなる国においても原則禁止されている。
2020年10月訪日オーストラリア人数
日本政府がコロナの感染をある程度抑制できているとオーストラリアを上陸拒否対象地域から除外したことで、日本では11月1日からオーストラリア人の入国を再開した。しかし、国境を跨いで入国したとしても、引き続きオーストラリアからの渡航者にはコロナ対策として14日間の隔離措置が敷かれ、また新たに査証免除措置の適用を停止している。オーストラリアでも3月からコロナの感染防止策として国境を跨ぐ移動を規制する海外渡航禁止令を継続しているため、2020年10月の訪日オーストラリア人数は200人に留まった。(前年同月比99.6%)
日本政府観光局(JNTO)訪日外客数の集計・発表
https://www.jnto.go.jp/jpn/statistics/data_info_listing/pdf/201118_monthly.pdf
オーストラリアの国境再開について
10月にオーストラリア連邦政府は、コロナのワクチンが広く普及するまで、国境開放を待つとした上で、観光客や留学生を含む海外旅行は2021年末まで再開されないとの見通しを明らかにしている。一方、11月10日にオーストラリアのモリソン首相は、現在ニュージーランドのみと締結している「トランスタスマン・トラベル・バブル」を日本を含めたアジア地域のいくつかの国や地域に拡大する考えを州首相に伝えるとし、国境を跨いだ移動再開の見通しは依然として立っていないが、日豪両国間で話し合いが進められていると明らかにした。
また、11月17日、国境が閉ざされたコロナ禍に、モリソン首相が外国首脳初となる来日を果たした。現在オーストラリアと日本の関係は極めて良好であるため、両国のコロナの感染状況が落ち着けば、他諸国よりも比較的早い段階で観光客が国境を越え、両国間を行き来できるのではとの期待も高まっている。
JNTOシドニー事務所田中所長のコメント
日本側の規制緩和もあり、10月のオーストラリアからの訪日客数は若干前月を上回りましたが、依然、オーストラリア側がコロナの感染防止策として国境を越える海外渡航や出入国に関する規制緩和を講じているため、状況に大きな変化はありません。
ただ、コロナの感染ペースも落ち着き、クリスマス休暇も近づいていることから、オーストラリアの国内旅行については、各旅行会社・州政府ともにプロモーション活動を活発に実施するなど前向きな進展が見られます。しかし、渡航解禁が見えない中、国境を跨ぐ海外旅行に関してはなかなか予約まで繋がりづらい状況は続いています。しかし、オーストラリアの国内旅行が活発化されることは、コロナ収束後に期待される国境を越えた自由な往来に繋がる事ですので、、前向きなサインと捉えています。
日本ではコロナの第3波が懸念されていますが、オーストラリアではまだ国境封鎖解除に時間を要し、国際観光再開まで時間がかかるだろうという空気感ですので、日本でのコロナの感染拡大が訪日旅行に大きく影響を及ぼしている状況ではありません。
コロナ禍のためオンライン形式ではありますが、11月下旬にオーストラリア最大級のトラベルフェア「Snow Travel Expo」が開催されます。JNTOとして参加はしないのですが、SNS等を通して開催告知や訪日スキーの魅力を発信するなど、側面的な支援を実施いたします。
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