By SCP編集部 in オーストラリア基本情報, ツーリズムデータ
年齢によって興味・関心となる対象が違うように、旅行に対する価値観は世代によって異なります。ベビーブーマーの旅行の特徴は? Z世代のトレンドは? 家族旅行の場合の選択権・決定権はどの世代が担うことになる…? オーストラリア人の旅行に対する世代別価値観をチェックして、彼らの求める旅行プランを探ってみましょう。
1959年~1964年生まれ(ベビーブーマー)
旅行費用が他世代に比べ高額!
現在、オーストラリアの人口の約4分の1を占めているのがベビーブーマー世代です。この世代は国民純資産(National Wealth)の半分以上を所有し、経済的に余裕のある人が多いのが特徴。そのため旅行にかける費用も、他世代に比べるとかなり高額になっています。
ベビーブーマー世代向けの旅行商品を扱うサイトstarts at 60によると、この世代が2023~2024年に予約した旅行の平均金額は約6450豪ドル。飛行機の運賃が上がったことを鑑みたとしても、この数字は他世代・他国に比べ多額となっています。短期旅行を複数回行くより一度の長期旅行を好むこともあり、現地での宿泊費・飲食費などに多く出費する傾向が強い世代と言えます。
クルージングが人気
クルージング好きなオーストラリア人の中でも、ベビーブーマー世代は特にクルーズ旅行を好みます。その期間中は美しい景色と快適な空間が約束されているし、一度の旅行で複数の都市を簡単に回ることができるため、この世代の生活スタイルにも合っているのでしょう。行き先はオーストラリア内での国内旅行のほか、ニュージーランドへ向かう船も大人気。体力を問わないため家族や友人たちとも出かけやすく、多くの旅の選択肢の中でも、クルージングが選ばれやすくなっています。
コロナ以降、海外旅行者数は伸び悩んでいる
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行により、全世代の人々が海外渡航への自粛を余儀なくされました。その後、渡航制限が解除されるとともに、若い世代を中心に海外需要は一気に回復しましたが、一方で、ベビーブーマー世代だけが、未だ旅行者数が伸び悩んでいます。
starts at 60によると、コロナ以前は国内旅行者数と海外旅行者数の比率が4:6と海外旅行者数の方が多かったのに対し、コロナ後の2023年度は6.5:3.5と、国内旅行を選ぶ人が多くなっています。理由として挙げられるのは、個々が体調面のリスクを念頭に置いているケースのほか、コロナ期間中に旅行に使う予定だったお金を家電や車の購入に充てた人が多いため、回復が遅れていると見られています。
1965年~1982年生まれ(X世代)
体を休め、リラックスを求める傾向
社会人として責任ある立場についている人が多い40代~50代後半。この世代には、ホリデーを“体を休め鋭気を養う期間”として捉える人が多いと見られています。2022年のAUSTRALIAN Seniorsのデータによると、50歳以上の人々の65%が旅行の目的を「リラックス」と答えています。また旅行に望むものとして「身体的に負担の少ない休暇」(40%)、「慣れ親しんだ場所や、言語に困らない場所」(38%)を挙げており、心身ともにリフレッシュできる旅行が求められています。
歴史や文化を学ぶ意欲
X世代は生活が安定してくる年齢、特に子育てがひと段落した人にとっては少し余裕を感じられるころ。知的好奇心を満たしたり、趣味に時間・お金を使ったりと、学びに対して意欲的になる傾向があります。AUSTRALIAN Seniorsによると、関心のある体験として40%の人が「歴史や文化」、35%が「食べ物・ワイン」を挙げており、それが旅行への動機につながることも多いようです。
1983年~1996年生まれ(Y世代/ミレニアル世代)
フットワークが軽く、グローバル思考
4人に1人が海外生まれということもあり、グローバルな考え方をもつ人が多い世代です。モノを所有することよりも経験を大切にするため、旅行に対するフットワークは非常に軽く、休暇の過ごし方を考えるのを楽しみとしている人が多いと言われています。旅行保険会社InsureandGoの調査によると、31歳~50歳の65%が、今後1年間に「家を買うよりも旅行がしたい」と答えたことがわかりました。(International fraud gangs targeting Australian travellers to Bali – AccomNews) 住宅の値段が高騰していることも理由として挙げられますが、それ以上に、オーストラリア人の旅行熱が加速していることがわかります。
オンライン世代
デジタルデバイスとともに育ってきた世代なので、旅行に関してもほぼすべての手配をインターネットで済ませます。旅行先を決めるのはもちろん、飛行機・ホテル・レストランの予約、現地イベントや詳しいリサーチなど、すべて自分たち行います。さらにはこの世代の大半が、帰国後にSNSなどで旅行先について発信。それを見たフォロワーがまた同じように旅行する…という連鎖反応ができあがっているようです。
行きたい国は日本!
Hilton’s 2025 Trends Reportの調査によると、ホリデーに行きたい旅行場所として、ミレニアル世代の36%が「日本」と回答。ハワイやニュージーランド、フィジーよりも関心が高く、多様な文化への好奇心の高さをうかがい知ることができます。
1997年~2012年生まれ(Z世代)
オーストラリアで経験できないイベントに興味
10代や20代の若い世代は旅行を日々の“ご褒美”として捉えており、自身の成長に不可欠なものだと考えています。Hilton’s 2025 Trends Reportによると、最低でも年に1回は旅行したいと希望するZ世代は全体の60%以上にのぼり、家族旅行に大きな影響を及ぼしています。現に昨年1年だけでも、最低1回以上旅行した人は84%もいて、そのほとんどが来年も旅行を楽しむだろうと言われています。
彼らが特に好むのは、オーストラリアにないもの。桜まつりやスキー旅行などの自然イベントや、国際的アーティストのライブ、世界的に有名な文化遺産などです。特にコンサートなどのイベントに関しては、南半球では行われていないものに対する興味も強く、Z世代の35%がイベントをきっかけ・中心として旅行を計画していることがわかっています。
また、彼らの希望する旅行先で挙げられるのが、日本・ニュージーランド・アメリカ・ハワイ。東南アジア圏を超え、よりグローバルに、多様な文化に触れることを求めているようです。
友人との旅行、単独旅行も増加中
Z世代、特に20代の人々はグループで活動的に旅行する傾向があります。インスタグラムなどのSNSで見かける遺跡や観光地を好み、気の合った仲間と遠方地域へも出かけます。綿密に計画するというよりは、興味に合わせて俊敏に動くことができる世代なので、単独での旅行も増加しています。
多世代での家族旅行の場合は?
全世代共通の興味は“ローカル体験”
オーストラリア人は家族と過ごす休暇を大切にしており、家族旅行者の割合が他地域よりも多くなっています。普段の忙しい生活から離れ、旅行を通じて家族全員で楽しめるスロートラベルを求める声は多く、家族旅行をするオーストラリア人観光客のほとんどがローカル体験やリラクゼーション、アウトドアに興味を持っています。特に文化体験に関しては世代を問わず楽しめるということもあり、ますます人気が高まっています。
Z世代の意見が強く反映される
Hilton’s 2025 Trends Reportによると、プランを提案するのは主にZ世代とアルファ世代(2012~2024年生まれ)。前述したように、これらの世代は旅行を自分の成長にとって必要不可欠であると考えているため、家族旅行を積極的に牽引する存在となっています。目的地だけでなく、現地でのアクティビティや食事に至るまで、オーストラリア人のZ世代の71%が家族旅行のプラン作りに積極的に参加し、かつ、オーストラリア人の親のほぼ3人に2人が、子どもの興味に基づいて休暇の目的地を決めているそうです。
ただし決定権と支払いは、もちろん彼らではなく親たちであるX・Y世代。多世代にわたって満足できる滞在場所やアクティビティを取り入れていくことが、今後の誘客にもつながると見られています。
まとめ
長期旅行を好むことや、その土地の自然や文化を楽しみたいなど、オーストラリア人全体に言える旅行傾向はもちろんありますが、世代間に見られる価値観の差が旅行プランにも少なからず影響しています。特に家族旅行においては、Z世代の存在を抜いて考えることができません。これは家族旅行が多いオーストラリア人の誘致を考える上で非常に重要となるポイントです。Z世代の目につきやすい媒体でアピールしたり、彼らの好むキャッチーな内容を盛り込んだPRを展開するなど、今後はますます若い世代を意識した取り組みが必要となるでしょう。
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