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【海外PR戦略】オーストラリア市場開拓に向けた認知拡大

By SCP編集部 in オーストラリア基本情報

日本から海外(オーストラリア)へ向けて商品やサービスをプロモーションする際の目的は主に2つに絞られます。それは、「認知拡大」と「コンバージョンの獲得」です。

会社や商品・サービスの特徴が、ターゲットとする顧客に浸透していないと予想される場合は、前者の認知拡大を事前準備として進めることで、後ほど行うプロモーションに効果を発揮します。

つまり、会社や商品・サービスへの正しい認知は、海外にて新規顧客を獲得するうえで重要な役割を担うだけでなく、その後の活動をスムーズかつ安定したものにすることが期待できるのです。

それでは、実際に海外で認知を拡大させるにはどのようなことに気をつけるといいのでしょうか。近年、日本との経済連携が強化されているオーストラリア市場に向けた基本的な認知拡大のポイントを、オーストラリアでの近年の傾向と共にご紹介します。

認知拡大とは

認知度とは

ビジネスにおける認知度とは多くの場合、知名度と比較して考えられます。知名度とは会社や商品の名前が知られている割合のことを指し、一方、一般的にビジネスにおける認知度とは、市場で会社や商品が理解されている割合のことを意味します。

つまり認知拡大をすることによって、顧客の信頼がより獲得しやすくなり、購買へとスムーズに結びつけることを容易にするのです。

参照:SONIDO「認知度を上げるのに効果的な9つのステップを公開」

 

一般的な認知拡大のポイント

認知拡大への4つの主要プロセス

では、どのように認知拡大を進めていけばいいのでしょうか。一般的な認知拡大への方法といわれているプロセスをご紹介します。

1 会社名は重要でない

認知拡大においては、会社名よりも、会社や商品・サービスがいかに顧客の欲求や問題を解決できるかを理解してもらうことが重要です。

2 ストーリーづくり

その商品やサービスが、顧客の欲求を満たし、問題解決が可能であるでといったストーリーを作成します。以下がステップです。

  • 自社の商品・サービスを望む顧客が多数検索し、かつ彼らに対してインパクトが強いキーワードを10個程度に絞り込む
  • 見込み客のターゲット像を考案し、その潜在顧客が納得するベネフィットを作る
  • 競合他社をリアルとバーチャルで10社程度リストアップする
  • 現時点でのまとめのコンテンツを作る
  • 潜在顧客との接点を50以上リストアップする
  • 接点×コンテンツ×ターゲットという考えでのアクションマップを作る

3 実行する

4 PDCAをまわす

このようなプロセスが一般的な認知拡大への方法と言われています。

参照:
コーポレート・ブランディング・アクティベーター運営会社:株式会社ベレネッツ
SONIDO「認知度を上げるのに効果的な9つのステップを公開」

 

海外で認知拡大をする際の問題点

認知拡大における言語の違い

さて、海外で認知拡大に取り組む際に一番大きな問題となるのが、言語の違いです。例えば、近年オーストラリアで人気が高まっている日本酒は「Nihon-shu」ではなく「Sake」と表記されるのが一般的。

このように現地の言葉に置き換える表現を持っていない場合、日本国内で認知拡大を模索するよりも、その商品やサービスをどのような言葉で特徴づけるかが重要となります。

近年ではインターネットや辞書を駆使することで、流暢に現地の言葉を話せなくてもその内容を伝えることはできます。しかし、現地の言葉に精通していないと発見できないトレンドワードやスラングも存在するのは確かです。その一例に、「Japow」があります。

「Japow」とは、”Japan”と”Powder Snow”を組み合わせた言葉でありInstagramで#Japowと検索すると、外国人が日本のスキー場でとった美しい写真を見ることができます。これは、日本のパウダースノーが外国人に人気であることから生まれたようです。

このような言葉をあらかじめ知っていると、認知拡大のストーリーづくりにおいて有効でしょう。

しかし、辞書に載っていないトレンドワードは、日本国内では目にする機会も乏しく、そのものを知ることが難しいこともあります。つまり、言語の壁を越えられないと顧客について得られる情報が少ないため、認知拡大の重要な肝となるストーリーづくりにおいて膨大な時間がかかってしまうといった多大な労苦の可能性があります。

参照:インバウンドNOW「【インバウンド対策】ニセコにオーストラリア人を集めた方法とは?」

 

認知拡大におけるトレンドや文化の違い

また、当然のことですが、日本とオーストラリアではトレンドや文化が異なります。そのため、日本で成功した認知拡大の方法がオーストラリアで成功するとは限りません。反対に、日本で成功しないアプローチ方法でもオーストラリアでは成功する可能性があります。これらを踏まえて戦略を立てるには、やはり現地の情報を得ることが大切です。

オーストラリア人の基本情報についてはこちら!

 

オーストラリアでの認知拡大とソーシャルメディアの関係

オーストラリアvs日本

オーストラリアでよく利用されているソーシャルメディアの利用者層やその使用方法は、日本のソーシャルメディアのそれらとは異なります。オーストラリアのソーシャルメディアの特徴を知ることで、オーストラリアにおける認知拡大の可能性を広げることができるでしょう。

オーストラリアのSNSとソーシャルメディアについてはこちら!
オーストラリアのSNSとソーシャルメディアマーケティング

Facebook

近年、日本国内においてもFacebookの利用率は高まっていますが、その利用率は全体の約56%。一方、オーストラリアでは全体の約94%がFacebookを利用しています。さらに、30代の利用率は、ほとんど100%に近い割合です。これは日本の同年代の約40%と比べると、2倍以上の数字となります。

参照:Social Media Lab 「【無料でDL】2019年2月更新! 12のソーシャルメディア最新動向データまとめ」

 

linked in

日本ではあまり知られていませんが、linked inはビジネスの繋がりを作るソーシャルメディアとして約18%のオーストラリア人に利用されています(日本は5%以下)。特に利用率が高いのが、30~65歳の現役世代です。

参照:Social Media Lab【無料でDL】2019年2月更新! 12のソーシャルメディア最新動向データまとめ

 

認知拡大への利用

オーストラリア企業のマーケティング担当者を対象にした調査(2017年)では現在Facebookがlinked inを抜き、回答者の中で最もビジネスに利用されているソーシャルメディアであると述べています。そして、ソーシャルメディアへの移行は電子メールに対する姿勢にも反映されており、「コンテンツを配信する際に電子メールが最も効果的である」と答えた回答者は2016年から2017年にかけて約20%減少したそうです。

参照:Mahlab「The state of content marketing in Australia: Key takeaways from the 2018 CMI Report」

そのため、オーストラリアでは、Facebookを利用して認知拡大を成功させた事例が日本よりも数多く存在します。日本では、Facebookを使用した認知拡大の方法が推奨されていない場合も多々ありますが、オーストラリアではその影響力からFacebookを利用して認知拡大を図る企業が増えているのが現状です。

 

海外での認知拡大の事例

オーストラリア企業のソーシャルメディア活用事例

イースターのチョコレートキャンペーン

ソーシャルメディアを活用した認知拡大の事例として、オーストラリアのお菓子メーカー・The Cadbury社のイースターキャンペーン(2018年実施)が挙げられます。これは4月に祝われるイースター(復活祭)に向けて、Facebook内で360°ライブ動画を生配信し、その映像の中からイースター・エッグをユーザーに見つけてもらうという企画でした。

 

卵を見つけたらコメント欄にその旨を書き込み、正解であればイースター仕様のチョコレートが当たるという仕組みになっています。このキャンペーンの結果、累計22万人以上のユーザーが視聴し、70,000を超えるコメントを集めました

参照:MarkeZine「1時間で22万人参加!Facebook 360°ライブ動画を活用した「イースターエッグ探し」ゲーム」

 

日本からオーストラリアに向けた認知拡大の事例

新潟県 妙高高原

新潟県にある「妙高高原」は、オーストラリア人に人気のスキーリゾートです。妙高高原は2006年頃からインバウンドに力を入れ始め、オーストラリアにターゲットを絞り、視察やメディア招聘、現地の旅行会社巡りなどを実施しました。また、オーストラリアで毎年5月に開催されるスノーエキスポにも出展するなど積極的に認知拡大のための活動を行いました。

 

言語選択が可能な妙高市のホームページ:http://www.city.myoko.niigata.jp/

その結果、リピート客や口コミが増え、外国人スキーヤーが着々と増えていきました。また、近年ではSNSの影響もあり、妙高高原の人気をあと押ししているようです。

妙高観光協会によるオーストラリア人受入数

  • 2006年 97人
  • 2010年 1,075人
  • 2015年 3,930人

参照:自治体国際化協会 経済活動 「事例紹介」

 

さぬき麺機

香川県に本社をおく「さぬき麺機」は、海外での出店事業の支援にも力を入れ、毎年、アメリカやオーストラリアの展示会に参加しています。製麺機は店舗用が約300万円、工場用が数千万円と高額ですが、販売先は国内外の7,000社にのぼります。麺のゆで方から教える開店希望者向けの講習会も1976年から続けており受講者は外国人も含めて4万人を超えています。

 

このように、認知拡大の方法はオンラインからオフラインまでさまざま。

海外でこのような活動を展開する場合、チョコレートのように周知の商品であればデジタルマーケティング戦略は効果的でしょう。しかし、商品やサービスを表す言葉が現地の言語にない場合や、麺機のように実演するなど実際に見てもらったほうが効果的である場合は、オフライン戦略をとるのが得策です。

デジタルマーケティングは、オーストラリアだけでなく世界的に流行していますが、インターネット上に情報が多すぎることが難点でもあります。展示会などのオフライン戦略の方が、ターゲットとしている顧客に届きやすい場合があることも事実です。

 

オーストラリア市場開拓に向けた認知拡大まとめ

このように、日本から海外(オーストラリア)へ向けて商品・サービスをプロモーションする際の目的が認知拡大である場合、日本の一般的な認知拡大の方法を知るだけでなく、現地の戦略の傾向を知る必要があります。

認知拡大における近年の最も大きな違いは、オーストラリアではソーシャルメディアを利用した戦略が日本よりも流行している点で、そのツールとしてFacebookの担う役割が大きいことです。そのため、現時点ではソーシャルメディアの利用が有効な戦略案のひとつとなり得ますが、それには言語・文化、また考え方の違いなどの情報を入手することが大事なポイントとなります。

とはいうものの、オーストラリアでの認知拡大において、ソーシャルメディアなどのデジタルマーケティング戦略が、あらゆる場合に効果的であるとは限りません。それらを理解したうえで、自社の商品やサービスの特徴から、展示会やイベントへの参加といったオフライン戦略を検討する必要があります。

 

この記事を書いた人:家田 阿実
東京都出身。大学の交換留学生として来豪し、言語学やアジア文化を専攻している。趣味は海外旅行、読書。オーストラリアではパン屋巡りにはまっている。

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