By SCP編集部 in オーストラリア基本情報
近年、オーストラリアはヨーロッパ、アメリカに続く重要なインバウンドターゲットとして関心を集めています。以下グラフの通りここ5年間、訪日オーストラリア人旅行者数数は伸び続けており、2014年には30万人だった訪日オーストラリア人観光客数は、2019年には約2倍となる62万人を記録しました。
しかし、オーストラリア人の日本への関心は「訪日観光」だけにとどまりません。例えば、オーストラリア国内では、日本をPRできるイベントも少なくありません。
- オーストラリアと日本をマンガ・アニメで繋ぐ、ポップカルチャーの祭典「SMASH!」
- 豪国内最大級の旅行博「WORLD TRAVEL EXPO」が12都市で開催!
- 【オーストラリア】シドニー・メルボルンで開催! 毎年人気のスキー博「Snow Travel Expo」
- オーストラリア最大の日系イベント「祭り」が今年も開催
さまざまなイベントで日本の露出が増えるだけでなく、レシピサイトで健康食として日本食が紹介されるなど、日本食への関心の高まりからも日本に対する興味のレベルが上昇していることがわかります。
それでは、日本好きのオーストラリア人は日本のどのような点を好んでいるのでしょうか。
また、その一方で日本が好きではないオーストラリア人は日本をどのように思っているのでしょうか。両者のメンタリティを理解することは、オーストラリア市場における効果的なターゲット設定の第一歩だと言えるでしょう。
日本好きのオーストラリア人
日本人の性質が好き
BBC(英国放送協会)は、訪日したオーストラリア人が印象に残った日本での出来事を次のように紹介しています。
- 相手を気づかって風邪気味の際はマスクをつける
- 店員がお釣りを渡すときにもう片方の手を添える
- タクシーの自動ドア
- お店に入ると店員が「いらっしゃいませ」と必ず挨拶する
このような礼儀正しさや気遣いは日本にいれば日常的なことですが、オーストラリア人にとっては新鮮に感じるようです。また、マナーやルールをよく守る、親切であるといった姿勢も好まれる日本人の性質として挙げられています。
出典:BBAC travel / news.com.au
日本という場所が好き
日本政府観光局(JNTO)の調査によると、オーストラリア人が日本でやりたいことのトップ3は以下の通りでした。
- 日本食を食べる
- 自然・景勝地観光
- 日本の歴史・伝統文化体験
「自然が豊富」というイメージが強いオーストラリア。週末にはビーチや公園でゆったりとくつろぐ人々をよく見かけます。そんな自然とのふれあいが日常化しているオーストラリア人にとっても、日本の自然や景勝地は非常に魅力的であり、日本文化を感じることができる自然スポットは特に人気があります。
例えば、訪日オーストラリア人に人気のスキー旅行は、日本のスキー場の雪質が素晴らしいことに加え、スキーを楽しんだあとに伝統的な日本の旅館に泊まり、雪景色を見ながら温泉を楽しめるという点で人気を博しています。
伝統文化や自然、そしてスポーツなどのアクティビティがいっしょに満喫できることが、訪日オーストラリア人観光客にとって大きな魅力となり、日本好きが増える要因となっています。
出典:news.com,au
日本食が好き
日本料理が好き
オーストラリアでは以前から日本食は知られていましたが、そのほとんどが寿司やラーメンといったものでした。
しかし、近年ではその関心の幅が広がり、日本料理の多様性と優れた栄養バランスを全面に押し出した日本食レストランがオーストラリアで増えてきています。また、日本料理を作るための調理器具や料理を盛りつける伝統的な陶器までにもその興味が広がりつつあり、そのような部分でもオーストラリア人の日本好きの一端を垣間見ることができます。
出典:sbs.com.au / financial review
日本酒が好き
出典:https://travel.nine.com.au/2017/09/22/09/37/sake-boom-australia
オーストラリアは日本と比べてもアルコール消費量の多い国です。もともと日本のビールはオーストラリアでも人気がありましたが、日本料理への関心が高まるにつれ、日本酒がオーストラリアで大きな注目を集めるようになりました。
ニュースなどでも、日本酒はもはやグローバルな飲み物であると表現され、ここ数年、オーストラリアにある日本酒の醸造所が何度も取り上げられたりもしています。日本人の生活の中で料理と共に親しまれてきた日本酒は、その歴史的な背景からもオーストラリア人にとって日本文化の面白みを感じさせる要素のひとつとなっています。
また、オーストラリアではここ数年、日本酒の専門店が続々とオープンし、店頭やオンラインで豊富な種類の日本酒が購入できます。
さらに「酒ソムリエ」という資格取得に向けた講義を開催している店舗もあり、食を通して日本好きになるケースも増えているようです。日本酒がオーストラリアで日常的に嗜まれているのは、オーストラリア人の日本好きを象徴する一例でもあります。
出典:nine.com.au / bbc news / australia unlimited
健康食が好き
オーストラリアではベジタリアン用のメニューを用意している飲食店も多く、日本よりもベジタリアン料理の需要が大きいことが分かります。こうした背景もあり、健康食と言われている豆腐や野菜を使った日本食の作り方がオーストラリアのレシピサイトで多数掲載されています。
和食は健康食としても多くの関心が寄せられており、日本の学校給食がオーストラリアのニュースサイトで取り上げられるほどです。野菜中心のメニューが豊富な日本食は、オーストラリア人の日常生活に取り入れたい食のスタイルとしても注目されています
出典:SBS
出典:Want to eat healthy? Follow the example of a Japanese child / Japanese people live longer than the rest of us – so what’s their secret?
日本文化が好き
日本語が好き
近年、オーストラリアでは日本語学習者数が増加傾向にあります。2015年度の日本語学習者数と比較してもベトナム、中国に次いで世界で3番目に増加率の高い国です。これは、2014年よりオーストラリアで制定された外国語教育に関するカリキュラムの影響が大きく、日本との経済的な関係と地理的な理由から、日本語を導入した教育機関が多数あったことが主な理由です。
日本語学習者が増加した国・地域の割合
順位 | 国・地域 | 2018年度学習者数(人) | 増減数* (人) |
1 | 中国 | 1,004,625 | 51,342 |
2 | インドネシア | 706,603 | -38,522 |
3 | 韓国 | 531,511 | -24,726 |
4 | オーストラリア | 405,175 | 47,827 |
5 | タイ | 184,962 | 11,145 |
6 | ベトナム | 174,461 | 109,598 |
7 | 台湾 | 170,159 | -49,886 |
8 | 米国 | 166,565 | -4,433 |
9 | フィリピン | 51,892 | 1,854 |
10 | マレーシア | 39,247 | 6,023 |
※2015年度調査結果との比較
そして現在、以下の通り、日本語はフランス後やドイツ語を抜いて、オーストラリアで最も学ばれている外国語にランクインしています。このことからはオーストラリア人の日本への興味関心が高いことのひとつの表れだと思われます
コスプレが好き
マンガ・アニメの普及とともに、オーストラリアでは「コスプレ」(※)の人気が沸騰しています。数年前から「コスプレ」という言葉自体は知られていましたが、ここ1、2年でコスプレを学ぶ場や披露する場が急増ししています。
2016年にはメルボルンにある服飾専門学校に日本の有名なコスプレイヤーが訪れ、コスプレに興味のある学生をターゲットに講義とワークショップを実施しました。同イベントには約150人の学生が集まり、ワークショップチケットは30分で売り切れてしまったほどの人気です。
また、2017年にブリスベンで開催されたアニメとマンガのフェスティバルでは約4,000人がコスプレで来場し、話題を呼びました。
出典:International Business Times
オーストラリアでのコスプレ熱は依然として高く、2020年にはシドニー、ブリズベン、メルボルン、パースと4都市でアニメフェスティバルが開催されるほどの人気ぶりです。
出典:Japanese cosplay artist Goldy touches down in Melbourne、International anime and manga fans flock to Brisbane for weekend Madman festival、Time to Cosplay: Japanese cosplay expert shares skills at RMIT
(※)漫画やアニメ、ゲームなどのキャラクターに扮するコスチュームプレイが語源。
日本のトイレが好き
日本の高機能なトイレは世界的にも有名ですが、オーストラリアもその例外ではありません。
オーストラリア人のなかには、日本へ旅行に行った際にトイレの温水洗浄機能つき便座に感銘を受け、自宅に温水洗浄機能つきトイレの設置を検討する人もいるそうです。
ウォッシュレットについて説明されているサイトや、さらには日本のトイレに設置されているコントロールパネルの6つのイラストが国際標準化機構(ISO)に承認されたこともオーストラリアのニュースサイトで取り上げられるほどの人気です。
日本の芸術が好き
日本芸術の伝統と現代性が好き
オーストラリアでは日本芸術への注目が高まっています。伝統的な古典芸術から現代アートに至るまで幅広く評価されており、ここ数年で特に注目を集めています。
ブラックウェーブス(日本の創作チームによる音、映像、音楽などをターゲットにしたアニメーションアートワーク)が、2017年初めにシドニーのニューサウスウェールズ州立美術館で展示されました。そのフェイスブックページに掲載されたブラックウェーブスの動画は約16万の再生回数を記録し大盛況でした。こうした日本の現代アートの複雑な芸術性と繊細さが人々を惹きつけています。
このほかオーストラリアの美術館では、日本のデジタルイラストレーション作家による「ショーケース」といった現代アートや、日本の小説をアニメ化する際に使用された木版画「くちえ」の展示、さらに「葛飾北斎展」といった歴史的な芸術展など日本関連のアート展がいくつも開催されています。
さらに、2018年のシドニー・ビエンナーレ(シドニーで2年ごとに開催される展覧会)では、芸術監督として森美術館のチーフ・キュレーターである片岡真実氏が就任しました。シドニー・ビエンナーレでの日本人アーティストの起用は、21世紀に入ってから3人目となり、日本の芸術が多くの人に認知され、高く評価されてきている証です。
出典:Japanese art makes waves across Australia
工芸品が好き
オーストラリアにある日本の食品や雑貨を扱うある専門店によると、これまで日本製包丁を購入するのはシェフなどのプロがほとんどだったのが、最近では家庭用に購入していく一般の人たちが増えてきたそうです。これは、日本の工芸品や製品に関する知識が、特定の専門分野の人々だけではなく、一般のオーストラリア人にまで受け入れ始めているということです。
染物もその例のひとつです。
古風で独特の雰囲気を持ち味とした「絞り染め」は日本でも再び注目を集めている伝統工芸ですが、海を越えたオーストラリアでも「絞り染め」専門店が人気を博しています。
出典:https://tabi-labo.com/283417/overseasshibori
ここでの絞り染めは、日本のオリジナルとは少々テイストが異なり、現代風にアレンジされており、壁紙やブックカバーなどインテリアやファッションの一部として取り入れられています。「絞り染め」を体験できるワークショップも開催されており、手軽な「DIY」を楽しみたいオーストラリア人にも人気です。
出典:Australia’s new love affair with Japanese food / 「絞り染め」が、知らないうちに海外で進化をとげていた。
日本好きではないオーストラリア人
日本に対する良くない印象
オーストラリアと日本における文化や習慣の違いは、多くのオーストラリア人の興味・関心を集め評判となっています。
その一方で、習慣や文化の違いがあまりにも大きいため、自分には合わないと感じるオーストラリア人もいます。大らかな人が多いオーストラリア人とは対照的に、必要以上にルールを決めることや、恥ずかしがり屋で勤勉といわれる日本人の気質などが好ましく思われないこともあります。
このような日本に対してプラスのイメージを持っていないオーストラリア人をターゲットにプロモーションする際は、いかにマイナスイメージを払拭するかが鍵となります。
日本に興味のないオーストラリア人
多民族国家として知られるオーストラリアでは、5人に2人がオーストラリア国外の出身であり、アジア人移民は全体の40%にものぼります。
そのため、街中には日本、中国、インド、ベトナム、タイなど、アジアを中心とするさまざまな国の食文化やファッション、雑貨などがあふれています。日本のブランドも多数進出し人気を博していますが、多様な文化ゆえに、の国のブランドかなど気にしないというオーストラリア人も少なくないでしょう。
しかし、日本のブランドに対して品質が良いなどの好印象を持っているオーストラリア人も少なくありません。プロモーションをする時はどのような方法で興味を引きつけることができるかを考慮しなければなりません。
出典:Australian Bureau of Statistics
オーストラリアでのプロモーション
日本がオーストラリア人に向けてプロモーション活動を展開する際に、日本好きなオーストラリア人をターゲットにするとどのような利点があるのでしょうか。
- 日本に対する理解や好ましい印象を持つため、興味を示す度合いが高い
- 積極的に日本に対する知識により、日本の文化や習慣を抵抗なく受け入れられる
- 日本に興味を持ってもらうよう働きかける手間がかからない
以上の観点から、オーストラリアでのプロモーションをする際には、日本好きなオーストラリア人をターゲットにすると効率よくアピールができると考えられます。また、オーストラリア人にとって日本は以前と比較して身近になりつつあるという状況を上手に利用することが得策でしょう。