スキー旅行客に向けた国内最大のスノー旅行博「Snow Travel Expo」が、5月15日にメルボルン、22日にシドニーの2都市で開催された。新型コロナウイルスの影響で、オーストラリアでもイベントが相次いで延期や中止に追い込まれ、2020年の「Snow Travel Expo」は中止、2021年は規模縮小を余儀なくされたが、オーストラリア政府が「ウィズコロナ政策」に転換し、国内もコロナ前の日常を取り戻しつつあることから、今年は3年ぶりに通常規模での開催となった。
州都シドニーをはじめ、ニューサウスウェールズ州では未曾有の雨続きで、雨模様での開催だったが、約4,500人が会場であるICCシドニーに足を運んだ(メルボルンでは約3,200人が来場)。
オーストラリア、ニュージーランド、カナダ、アメリカ、韓国、ヨーロッパや日本など世界を代表する約70ヶ所のスノーリゾートに加え、観光局、DMO、旅行会社やウィンタースポーツ用品販売会社などの団体・企業が一堂に集い、旅行を計画している来場者に向けて、活気に満ちたプロモーションを展開した。その中でも、絶えず人が訪れ一際賑わいを見せていたのが訪日旅行エリア。アジアトップのスキーデスティネーションである日本からは北海道、東北、長野や福島・会津などの自治体や観光関連団体が出展し、スキーリゾートを中心とした温泉や食、各々の冬の魅力を熱弁するスタッフと各地域のパンフレットを吟味しながら、旅行計画の参考にしようと真剣に聞き入る来場者で終始熱気に溢れていた。
場内に設置されたステージでは、ゲストスピーカーによる講演やゲレンデレポートなどが紹介され、中でも日本にまつわるプレゼンテーションでは、最新の日本スノー事情を聞こうと集まった聴衆でステージ席は埋め尽くされ、立ち見の参加者も大勢出るなど、スキーデスティネーションとして不動の地位を築き上げたことを再確認できる光景であった。
来場者限定の特別価格ツアー、6泊7日のオールインクルーシブ・パッケージなどが当たる抽選会やハーフハイプ無料体験会が開催されるなど、場内はさまざまな催し物で溢れ、大盛況のうちに幕を閉じた。
オーストラリアからの訪日スノー客はウィンタースポーツを楽しむだけではなく、全国各地に足を伸ばし、温泉や日本文化体験などをセットにして満喫するパターンが定着しつつある。現在、観光目的での往来は再開されていないが、来場客からは「日本を訪問することを待ち望んでいる」という声も多く聞かれ、訪日意欲の高さがうかがえた。日本政府が観光客の受け入れを再開をすると発表したことから、スキーシーズンまでには旅行需要復活への期待も高まっており、訪日スキーはインバウンドV字回復のカギを握る重要な観光コンテンツであることは間違いないだろう。
JNTOシドニー事務所/田中陽子氏
訪日観光客受け入れ再開にまつわるアナウンスをご存じの方も多くお越しいただき、今年はさらに活気が増したように感じました。日本から本イベントのために来豪した出展者の方もいらっしゃったので、オーストラリア人の訪日に対する関心の高まりを直接見ていただけて良かったです。来場者からは「外国人があまりいない場所や地元の人が行くスノーリゾートを教えてほしい」など日本ならではの体験を求める声を多くいただきました。また、訪問先についてはすでに決定しており、自分たちが希望するアクティビティ以外に何ができるのか、抱き合わせで観光できる良い場所はないかなど、念入りに旅行先についての情報を調べている印象を受けました。現在は日本各地の認知向上に注力していますが、今後は実際の送客につながる取り組みを積極的に展開する予定です。
Pandanus Promotions(主催者)/Phil Osborn
オーストラリアのスキーヤーやスノーボーダーが白馬をはじめ、日本各地のゲレンデにも関心を寄せているため、この10年で旅先の選択肢が一気に広がりました。オーストラリア人はユニークな経験を求めて訪日するのですが、日本は行けば行くほど面白い国だと思います。一般的な旅行だと東京や大阪など王道に留まるケースが多いかもしれませんが、特にスキー旅行客はそこでしか味わうことができない奥深い地方の魅力にはまる傾向にあると思います。
日本が人気の理由のひとつとして、オーストラリアやニュージーランドのスキーシーズンと被らない点が挙げられます。そして、スノーアクティビティだけでなく、日本の文化、温泉、食など日本ならではの体験を楽しむことができることも魅力です。パンデミックが発生してからこの2年間は、日本やその他のスノーリゾートに対する興味・関心を維持するため、バーチャルや規模縮小するなどをして、本イベントを開催してきました。日本ブースの賑わいからも、訪日スキーは今後さらなる盛り上がりが期待できるでしょう。来年も日本から多くの出展があることを楽しみにしています。
文・取材:臼井佑季
写真:千葉征徳
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