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国内最大級の祭典! SAKE MATSURI

By SCP編集部 in イベントレポート

10月19日、シドニー市内のナショナル・アート・スクールにて日本酒の祭典「SAKE MATSURI」が開催された(主催REVEL)。このイベントは現地日本酒卸売業者などで構成される団体『Nihonshu Australia』が日本酒に特化したイベントを催したいとREVELに呼びかけ2016年に発足、これまでにシドニーとメルボルンで開催され、今ではオーストラリア最大規模の日本酒イベントとして知られているもの。

日本政府が、2017年から掲げている「クールジャパン戦略」の一環として日本酒の海外進出を積極的に促進していることもあり、オーストラリアへの輸出額は過去6年で倍増し、今ではローカルのレストラン・バーで普通にリストされている他に大手百貨店やボトルショップの棚に多数の日本酒が陳列されているなど、日本酒の需要は日々増すばかり。近年の「和食ブーム」をはじめ、訪日がきっかけで日本酒を愛飲するようになった人が急増していることなどが追い風となり、今後も日本酒の人気は拡大することが期待されている。

会場では、現地卸売業者や酒造業者計8社が60種類以上もの日本酒を揃え、試飲グラスを片手に人気が高い純米酒、吟醸酒の他に生酒、古酒、スパークリング日本酒などを飲み比べながらお気に入りの銘柄を探す来場者であふれかえった。また、「どの料理と組み合わせるのが良いのか」「熱燗と常温でなぜ味わいが違うのか」などの質問も飛び交うなど、銘柄の特徴を説明するスタッフの話に熱心に耳を傾ける来場者で会場は終始熱気で溢れた。

3年目を迎えた今年は、6月8日に開催されたメルボルンで約600人を、今回のシドニーでも約450人を集客し、オーストラリアにおけるホットな日本酒熱をまざまざと感じさせられた。今後もこのようなイベントを通して日本酒ファンが増え、ビールやワインと同じ頻度で日本酒も楽しんでもらえるようになることを期待したい。

 

SAKE MATSURIに参加した方々のコメント

吉乃川株式会社・営業企画部主任/小野邦浩氏

初めて来ましたが、日本とは違ってこちらの方は銘柄にこだわらず「美味しいものは美味しい」と飲んでくれている印象です。味だけではなく「このボトルのデザインは京都の着物会社さんに頼みました」などの説明も織り交ぜ、ラベルも一緒に楽しんでいただいています。また、新潟県がどこにあるのか知らないという方も多いので、地理的な説明や歴史についてもお話しています。吉乃川も含めた新潟県の日本酒はニュートラルな味わいで、どんな方でも美味しく飲んでいただけるのが特徴です。日本酒が初めての方でも「飲みやすいな」と思ってもらいやすいので、そこをもっとアピールしていきたいです。今後は最低でも毎年1回はこうやって足を運び、自らがオーストラリアの多種多様な食生活を楽しむことで吉乃川との愛称を実感し、その体験もふまえてお客様にお勧めしていきたいです。

白瀧酒造株式会社・代表取締役社長/高橋晋太郎氏

値段に左右されることなく、美味しいと思っていただいたものは値が張るものでもご購入いただいています。また、試飲後にご自身で点数をつけた後に説明をメモされている方も多く、日本国内よりも真剣な方が多い印象ですね。10年前、オーストラリア市場に本格参入しましたが、年々日本酒好きな方が増えていると感じています。今年は杜氏を連れてきて、彼に直接製造過程を話してもらい、紙だけの説明では印象に欠ける「体験」の部分を訴求しています。お酒は他の食品と比べて爆発的に流行って売れる商品ではないので、長い目でコツコツとやっていきたいです。

白瀧酒造株式会社・製造本部長杜氏/松本宣機氏

他の海外市場と比べ、オーストラリアでは「濃醇魚沼純米」という商品がかなり伸びており、数年前から年間で仕込む量がタンク1本分増えました。アジアや東南アジアではすっきりとした味わいの「上善如水」が人気ですが、「濃醇魚沼純米」は比較的穏やかな香りでお米のうまみをたっぷり感じられるので、オーストラリアの食生活にはまっているのかなと思います。社長には常々「蔵に閉じこもってお酒を造るのではなく、外に出てお客様から直接ご意見をちょうだいし、それをふまえて仕事にあたるのが大切だ」と言われていますので、このように現地の方と直接お話しできることはとても貴重です。食文化が豊かなオーストラリアだからこそ、どのような人たちになんの日本酒が好まれているかのイメージをしっかり持ち帰り、明後日からの仕込みの参考にします。

写真左:松本宣機氏 写真右:高橋晋太郎氏

株式会社車多酒造/車多慶一郎氏

今回の訪豪目的はSAKE MATSURI以外に現地の飲食店や小売店へ出向き、スタッフトレーニングにも時間をあてています。直接お客様と接し、説明されるのはレストランや酒類販売業者の方なので管理の仕方だけでなく車多酒造の個性もきちんと伝えるようにしています。じつは現場スタッフの方から教えていただくことも多く、弊社の商品を熱燗にしてカスタードプリンと一緒に飲むと非常に相性が良いということもレストランの方に教えていただきました。お客様からのお声と併せて現場のフィードバックも参考にしこれからもイベントに積極的に参加することで認知度拡大につなげていきたいです。

Deja Vu Sake Co(現地インポーター)/落合雪乃氏

オーストラリア人が恵方巻に慣れ、今ではおやつ感覚で食べられているように、日本に行って日本酒を飲むことが習慣化すればここでも広がります。日本酒をお勧めする際には健康志向の高い人が多いので必ず「無添加」「グルテンフリー」ということを付け加えています。また、日本酒の味にまだ慣れていない方に味の説明をしてもぼやけてしまうので、ワインの説明と同じように産地、気候、歴史やライフスタイルの説明も添えています。例えば九州は甘いお醤油が食卓に並び、お酒もジューシーなうまみがある一方、北陸は塩気がある保存食を食べていたのでドライなお酒が多いというように、日本酒が持つストーリーから説明を始めます。私たちの夢はオーストラリア人の方に日本酒を家飲みしてほしいこと。その一歩として、日常酒として選んでいただける種類を増やしたいと大手ボトルショップの「ダン・マーフィーズ」さんにアプローチしました。お家で飲む際にビールやワインではなく『今日は日本酒にしよう』と気軽に選んでもらえるために今後も活動したいです。

写真中央:落合雪乃氏 写真右:車多慶一郎氏

SAKESHOP by Chef’s Armoury(現地インポーター)/Leigh Hudson氏

出展者の立場ですが、SAKE MATSURIは毎年楽しんで参加させてもらっています。来場者の半分は日本酒についてある程度の知識をお持ちだと思いますが、残りの半分は初心者の方だという印象です。また、日本で飲んだことがあっても代表的な銘柄しか試したことなく、実は日本酒がバリエーション豊富だということをご存知ない方が多いのも現状です。このようなイベントを通じて様々な種類を試飲してもらうことが大切だと考えていますし、その積み重ねでもっと日本酒のファンは増やせると思います。お客様には純米酒以外にもチャレンジしてもらえるようこれからもお声掛けしたいですね。

Marc Van Agten氏(来場者)

今週末のパーティーで日本酒をふるまいたいので、今日は15本ほど購入する予定です。日本酒は本当に知れば知るほど面白いですね。この料理はどの種類と合うかなと模索することが楽しいです。個人的に日本酒が広がるためには、若い層にアプローチしたら良いのではと思います。私の娘もそうですが、若い女性の多くは日本酒は特別なものだと捉え、抵抗を感じています。このような層には、例えばスパークリング日本酒が良いのではないでしょうか。ちょうど良いサイズで見た目も素敵ですし、爽やかな甘みもあるので、チャレンジしやすい日本酒だと思います。あと日本酒には砂糖や人工調味料が入っておらず、クリーンな飲み物だということもアピールするべきですね。若い世代は特にヘルシーな食べ物や飲み物に敏感です。今回のイベントも20代の方がもっと増えるとより盛り上がると思います。

Revel Operation Manager(主催者)/Arron Ollington氏

ワインが私たちの生活の一部であるように、日本では日本酒は生活に溶け込んでいる飲み物なので、SAKE
MATSURIは格式高いものでなく、どんな人でも気軽に参加できるイベントにしたいと企画しました。リラックスした雰囲気の中、自分たちのペースで日本酒のことを知ることができ、酒造業者さんとも沢山会話できる時間を設けたのもそのためです。場所だけを提供するのではなく、酒造業者さんやインポーターさんが来場者の方とつながりを作ることも私たちの役割です。各ブースの売り上げは好調だと聞いているので、交流だけでなくビジネスの面においてもこのSake Matsuriは成功だと言えるでしょう。

文・取材:臼井佑季

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