世界的に新型コロナ感染症に関する規制緩和が進む中、2022年10月11日より日本政府が査証の免除措置や個人旅行の受け入れなどで約2年ぶりに国境を再開した。これを受け日本路線の航空座席供給量も回復傾向にあるが、多くの市場で航空券代の高騰、航空・旅行会社を取り巻く人手不足などの課題が見られる他、欧州地域においてはウクライナ情勢に伴う飛行ルートの変更によるフライト時間増加も訪日旅行の懸念材料となっている。日本では今後、観光立国の復活に向けて観光地・ 観光産業について持続可能な形で「稼ぐ力」を高めるとともに、地方誘客や消費拡大を促進しつつインバウンドのV字回復への取り組みが急務とされている。入国手続きなどの実用情報の的確な発信と併せ、これからの訪日観光の柱となるサステナブルツーリズムなどの情報発信やMICE誘致などの取り組みを強化していくことが求められる。
オーストラリアの現況
オーストラリア全土における新型コロナ新規感染者数は2022年9月に入って10,000人を割り込み、10月以降は5,000人前後で推移していたが、11月に入り再び増加傾向に転じている。連邦政府の主席医務官は11月9日、新型コロナ感染者数が増加しているのはオミクロン株の変異株とされるXBB株が市中感染で拡大していることが原因との見方を示した。クリスマス休暇を前に再び新型コロナの感染の波がオーストラリアを襲う可能性が高いが、国内で再びロックダウンを行う可能性があるかについては言及されていない。NSW州保健局は11月21日に新型コロナの危険度を“緑“から“黄色”に引き上げ、屋内や公共交通機関内でソーシャルディスタンスがむずかしい場合はマスクを着用するよう奨励している。
オーストラリア統計局の最新結果によると、2021年11月の国境解放以来2022年6月がオーストラリア国民にとって最も人気旅行シーズンとなり、前月比の71%増で多くのオーストラリア人が海外旅行を経験している。最も人気の渡航先として1位がニュージーランド、2位がインドネシア、3位が英国、続いてアメリカ、フィジー、インド、シンガポール、タイ、イタリア、ベトナムが上位10位を占めている。直行便で行ける目的地が最も人気があり、オーストラリアの旅行者はここ1年間でアクセスの良さと手軽さを優先するようになったことが要因と見られる。
オーストラリアの国境について
連邦政府は新型コロナ感染者に求めていた5日間の自己隔離について2022年10月14日より撤廃し、新型コロナ感染者の公衆衛生規則を制定・実施を各州・準州政府に任せている。そのため、自国民の日本からの入国についても州や地域によって到着後24時間以内のPCR検査などが推奨されているが、ワクチン接種者に検査義務は課されていない。シドニー・羽田間の増便などもあり、日本への直行便数は前年同月に比べ回復傾向にあるが、需要の本格的な回復に向けてはまだ道半ばといったところだ。
オーストラリアから日本への入国について
日本政府は2022年10月11日以降、すべての帰国者・入国者について入国目的の如何を問わず、原則として入国時検査を実施せず、入国後の自宅または宿泊施設での待機、待機期間中のフォローアップ、公共交通機関不使用などを求めないこととした。ただし、現在もワクチンの接種証明書(3回)または出国前72時間以内に受けた検査の陰性証明書のいずれかの提出をすべての帰国者・入国者に対して求めている。中国を除く東アジア市場で訪日外客数が前月から大きく増加したこと、東南アジア及び欧米豪中東市場においても多くの市場で順調な回復が見られたことが、今月の訪日外客数の大幅な押し上げの要因と見られる。なお、航空便においては増便の傾向が見られるが、新型コロナ感染症拡大以前との比較では回復途上にある。
2022年10月訪日オーストラリア人数
2022年10月の訪日外客数は498,600人と、前月206,500人から倍以上の伸びとなり、訪日オーストラリア人数は11,700人と前月から約3倍近い伸びを見せた(対2019年同月比22.7%)。オーストラリアは依然として帰国時の入国制限の継続などがあるものの、日本の水際規制緩和、日豪間の国際会議開催などが影響し、引き続き日豪双方向の回復に期待が高まる。日本の国際線については日本への入国制限者数の引き上げなどにより日本発着旅客数が業務・観光需要ともに徐々に回復しており、インバウンドを含めた需要の本格的な回復が期待される。ただし、未だ地政学的リスクの高まり、円安の進行、燃油をはじめとする原材料費の上昇、新型コロナの感染再拡大といったリスクが残る。
Airbnbは9月23日の検索データに基づき、日本国内のAirbnb宿泊施設の検索数が多いゲストの居住国・地域の上位一覧を発表した。調査結果から、国別では韓国、アメリカ、香港に居住するゲストによる検索数が最も多く、オーストラリアがシンガポールや台湾を抑えて4位に食い込んでいる。また、世界最大級の宿泊予約サイトBooking.comの日本法人Booking.com Japanが実施した「2023年の旅行に関する調査」の結果と独自データを基にした2023年の6つの旅行トレンド予測では、世界の旅行者の72%が「現下の不安定な世界情勢や混乱の中でも旅をする価値はある」と回答。戦争やインフレ高進、気候変動など世界中で不安定な状況が続いているにも関わらず、人々の旅に対する姿勢は変化しており、2023年には旅行者は混乱した世の中に適応し、今の時代に合った「新たな旅のカタチ」を模索していくと同社は予測している。観光産業におけるデジタル、サステナビリティの重要性が加速し、マイクロツーリズムが浸透しつつある今、インバウンド観光推進のためには身近な地域の可視化と生産性向上に取り組み、魅力の再構築をして地域の観光関連産業を働き甲斐のある場にしていくことが不可欠となりそうだ。
JNTOシドニー事務所田中所長のコメント
2022年10月の訪日外客数では、オーストラリアからの渡航人数は11,700人と、コロナ前と比較すると数はまだまだ少ないですが、順調に推移をしています。航空路線についても、地方路線は減便、休便が続くなど、コロナ前の水準を完全に満たすには時間がかかりそうですが、シドニー・東京間のフライトについては、11月からカンタスが毎日運航に戻すなど明るい兆しも見えています。
日本は依然として、オーストラリア人の人気目的地となっており、12月、1月のスクールホリデー、そして、3月、4月の桜の時期など、需要が高い時期が続くなど、多くのオーストラリア人が訪日されることが期待できます。
JNTOでは、引き続き実際に訪日に結び付くようなキャンペーンを航空会社やOTAと共同で実施するとともに、様々なメディアを通じてた広告を集中的に11月、12月にかけて行うなど、日本各地への誘客に努めています。
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